歯科衛生士免許を取得している方の中には、「企業で働く」という道を選んだ方々がいます。
令和2年度衛生行政報告例の概況によると、『事業所』に就業する歯科衛生士は全体の0.2%と、非常に希少な存在です。
(参考:全体の1%未満、企業で働く歯科衛生士について解説します!)
dStyleでは、今までに学んだ知識や経験を活かし、企業で活躍する歯科衛生士の方にインタビューを行いました。
歯科医院とはまた違った環境で働く魅力について、語っていただきます。
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今回は、サンスター株式会社に勤める清水都さんにお話を伺いました。
歯科衛生士歴7年目の清水さんは、広島大学歯学部口腔健康科学科口腔保健学専攻を卒業したのち、サンスター株式会社に就職。
現在は研究開発部に所属し、自社製品の臨床テストや歯科医療従事者への情報発信を行うかたわら、社会人大学院に通学して今年3月に修士学位を取得されました。
入社のきっかけ
学生時代に履修した卒業研究により、研究は大変な一方で、成果となった時の喜びや楽しさを学び、この経験を活かした仕事をしたいと感じていました。
入社のきっかけは、就職活動を開始する時期に、サンスターに勤務している大学の先輩が研究開発職の募集説明会にきてくださったことです。
その説明会で、企業で働く歯科衛生士の仕事に具体的なイメージが湧いたこと、その先輩が活躍されているの見て、とてもかっこいい!と憧れたことがサンスターに入社したいちばんの理由です。
普段の業務内容
主な業務内容は、歯ブラシや液体製剤などオーラルケア商品の臨床的な有効性評価(臨床試験)と、学会や歯科衛生士学校などの教育現場での情報発信です。
得られたデータを臨床現場の歯科医療従事者や商品を購入される方に発信することで、商品の効果をお客様にお伝えする「橋渡し」の役割を担っています。
これまでには、さまざまな歯ブラシのプラーク除去率や、液体製剤をブラッシング・歯間清掃に併用した場合の臨床的効果などの検証をしてきました。
他にも、商品・サービス開発にも関わっています。webサービス「ガムオーラルケアスマートコンシェルジュ」では、プロジェクトチームの一員となり歯科衛生士の視点で開発に携わりました。
「たくさんある歯ブラシの中からどれを選べばよいか分からない」といった方のために、口腔写真から分かる情報とお口の状態に適切な歯ブラシをAIに学習させる理論を開発しました。
仕事をする上でこだわっていること
一般消費者や患者さんなどお客様の目線に立ち、お口の健康に繋がるような商品開発を行っています。
製品の特徴や研究で得た結果を、製品カタログや学会発表などを通じてお伝えするときには、どのようにすれば分かりやすく、また正しくお伝えできるか、表現や図示の方法をよく検討しています。
また、日々の生活においても、自分や他の研究員が担当する研究テーマに何か活かすことができないか、といった視点でアンテナを張り、情報収集を行うよう心がけています。
今までの人生の中で、やっておいてよかったと思うこと
学生時代に球場でアルバイトをしていた際に、チームリーダーを任されたことです。3〜4人のグループで1つの小さなショップを運営するのですが、全体の運営管理をしながら、他メンバーの指揮を執ることの難しさを学びました。
企業では社内外を含め、ひとつの業務を色々な専門分野のメンバーと関わりながら進めますが、中には自分自身が主体となって進める仕事もあります。
自身の役割を認識しながら主体的に引っ張っていくことへの意識や姿勢は、当時失敗してしまった点も含めて、今に活かされているように思います。
おすすめの製品
液体製剤とソフトピックです。液体製剤は、臨床的な有効性評価や実験、文献調査等を通して、殺菌・プラーク付着抑制効果を身をもって実感しました。
海外では、液体製剤はメカニカルプラークコントロールへの併用として、歯間清掃具と同様に使用率が高いアイテムですが、日本では使用率や歯科医療従事者からの推奨はいまだ低い状況です。
私自身も学生時代は意識していなかったアイテムですが、お口の健康をより良好に保つため、普段のオーラルケアの仕上げとして、日本でもさらに取り入れられることを望んでいます。
ソフトピックは、歯間清掃具の使用に慣れていない初心者において、歯間ブラシと同等の臨床効果が示されています。やわらかい使い心地のため、歯間ブラシを初めてお使いいただく方にぴったりの商品です。
仕事に欠かせないアイテム
仕事に欠かせないアイテムは、歯ブラシと顎模型です。いつでも手に取って触れられるように、デスクの上に置いています。
製品の評価方法を検討している時などは、パソコンの前で文献を読んだり頭の中で考えているだけでは、具体的なイメージがわかないことも多いですが、実際に使って磨いてみるとイメージしやすくなり、五感を刺激するアイテムになっています。
また、歯科衛生士以外の他の研究員と話すときにも、歯ブラシと顎模型を使用して説明することで、具体的にイメージしてもらうのに役立っています。
おすすめの情報収集の方法
学会やデンタルショーなどの展示会に参加し、最新の学術動向や幅広い情報収集を行っています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で近年の学会はWeb開催が主流となっていますが、その分業務の合間に色々な学会に参加できるため、手軽に、また効率的に情報収集ができています。得た情報は、他の研究開発メンバーともシェアするようにしています。
勉強をする上では、最初に学習計画を立てることがおすすめです。特に大学院在学中は、試験や論文作成と仕事を両立しながら取り組んでいたこともあり、「いつまでに」「何を」、スケジュールとボリュームの全体像を把握して学習するようにしていました。
企業で働きたい!と思う歯科衛生士へメッセージを
就職するまではハードルが高いように感じることもあるかと思いますが、同じ業界の企業への就職は、かならずこれまでの経験を活かすことができると思います。
また、サンスターでは国際的な学会への参加や海外とのやり取りなど、グローバルな視点でも視野を広げることができます。頑張って下さい!