もうすぐ新年度ですね!4月からはじまる2022年度は、診療報酬点数の大幅な改定がある年です。
例年に引き続き、今回の改定でも「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準が変更」「メタルコアが廃止」「CAD/CAMインレーが保険収載」など、歯科医療従事者が驚くような内容が発表されました。
(参照:2022年度診療報酬改定の個別改定項目についての答申結果を発表 中医協-WHITE CROSS)
中でも、歯科衛生士業務が大きく関わる「SPT」については、2022年度からSPT(Ⅰ)と(Ⅱ)が統合されることになり、算定方法も変わることになります。
今回は、4月からSPTを算定する際のポイントについて解説します♪
そもそもSPTとは?
SPTは「サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー」の略で、保険用語では「歯周病安定期治療」と表します。
内容としては、一連の歯周治療が終わった後、一時的に病状が安定した状態にある患者さんに対し、歯周組織の状態を維持するため、プラークコントロールやスケーリング、SRP、咬合調整、機械的歯面清掃などの治療を継続的に行うことを指します。
また、一時的に症状が安定した状態とは、歯周基本治療が終了した後の再評価において、口腔内のほとんどが健康であるものの、部分的に4mm以上の歯周ポケットを認め、歯周病の再発が危ぶまれるような状態のことをいいます。
したがって、「全顎のSRPを終えてもなお、4mm以上の歯周ポケットが残っている患者さん」を継続してメインテナンスする際に、保険治療として算定できる項目といえるでしょう。
これまでのSPTの点数と算定方法について
これまで、SPTには(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類がありました。
SPT(Ⅱ)は、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、か強診)しか算定できないため、か強診を取得していない歯科医院においては、SPT(Ⅰ)を算定することになります。
算定できる点数は、患者さんの口腔内の残存歯数によって、以下のように変わります。
残存歯数/算定項目 | SPT(Ⅰ) | SPT(Ⅱ) |
---|---|---|
1歯以上10歯未満 | 200点 | 380点 |
10歯以上20歯未満 | 250点 | 550点 |
20歯以上 | 350点 | 830点 |
また、SPT(Ⅰ)と(Ⅱ)とでは、包括されている治療内容が異なるため、算定方法が違います。
それぞれの項目に包括されている治療内容は、以下の通りです。
治療内容/算定項目 | SPT(Ⅰ) | SPT(Ⅱ) |
---|---|---|
スケーリング | ○ | ○ |
機械的歯面清掃 | ○ | ○ |
歯周病検査 | × | ○ |
口腔内カラー写真撮影 | × | ○ |
上記の通り、SPT(Ⅰ)には歯周病検査や口腔内カラー写真撮影が含まれないため、別に算定することが可能です。
そのため、患者さんにSPT(Ⅰ)を算定する場合は、歯周基本検査または精密検査の点数と、口腔内カラー写真を行った場合は歯周病患者画像活用指導料として最大50点を加算することができます。
たとえば、20歯以上の歯がある患者さんに、歯周精密検査と口腔内カラー写真撮影、スケーリング、機械的歯面清掃をSPTとして行う場合、SPT(Ⅰ)を算定すると最大で800点、(Ⅱ)においては830点のみを算定できるということになります。
350点 + 400点(歯周精密検査)+ 10×5点(歯周病患者画像活用指導料)= 800点
SPT(Ⅱ)の場合:830点のみ
ただし、SPT(Ⅰ)は基本的に3ヶ月に1回、(Ⅱ)は1ヶ月に1回の算定が可能であることと、か強診を取得していれば「エナメル質初期う蝕管理加算(260点)」という点数も毎月加算できるため、年間で算定できる点数は大きく違ってきます。
2022年度の改定ではSPT(Ⅱ)が廃止に!
それでは、今回の診療報酬改定によってどのようにSPTの算定方法が変わるのでしょうか?
先ほどお伝えした通り、SPT(Ⅰ)と(Ⅱ)とでは、包括されている治療内容が異なります。この部分が複雑でわかりにくいという指摘を受け、2022年度からはSPT(Ⅱ)を廃止し、SPT(Ⅰ)と統合する運びとなったのです。
今までSPT(Ⅱ)を算定していた歯科医院は、新たに「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所加算」として120点を、SPTの所定点数に毎月加算できるようになります。
また、SPT(Ⅰ)と(Ⅱ)が統合されたことで、包括されている治療内容も共通し、スケーリングと機械的歯面清掃のみになりました。
したがって、SPT時に歯周病検査や口腔内カラー写真撮影を行った場合は、SPTとは別にそれらの点数を算定することになります。
先ほどと同じ条件で考えてみると、20歯以上の歯がある患者さんに、歯周精密検査と口腔内カラー写真撮影、スケーリング、機械的歯面清掃をSPTとして行う場合、か強診を取得している歯科医院であれば、最大で920点を算定することができます。
350点 + 400点(歯周精密検査)+ 10×5点(歯周病患者画像活用指導料)+ 120点(かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所加算)= 920点
つまり、今までSPT(Ⅱ)を算定していた歯科医院は、最大で90点も多く点数を算定できるようになるということになります。
ただし、歯周精密検査や口腔内カラー写真撮影を行わない場合は、算定できる点数が350点 + 120点 = 470点と、今までよりも低くなります。
そのため、今までSPT(Ⅱ)を算定していた歯科医院においては、歯周病検査の有無に関わらず毎月830点という点数を取れていましたが、今後は実際に行った治療内容によって算定項目や点数が変わります。
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今回の改定によって、歯科衛生士としては「来月は検査を行う予定なので、費用がいつもより高くなります。」や、「今月はクリーニングのみ行うので、先月より早く終われると思います。」という話ができるようになるため、患者さんが納得するメインテナンスを提供しやすくなるのではないかと思います。
一方で、年間を通すとSPTとして算定できる点数は下がるため、歯科医院の経営としてはチェアタイムやアポイントの調整が必要になってくるかもしれません。
今回のSPTに関する改定は、実際に行った治療内容と算定内容との整合性を高めるための一つの施策であるとも考えられます。
いずれにしても、患者さんの口腔内環境を整え、できるだけ良い状態をキープできるようなメインテナンスを提供することに尽力していきたいものです。