子どものフロスは不必要!? 山田翔先生「現在入手可能な最良のう蝕学」セミナーレポート

  • むし歯は感染症
  • むし歯は象牙質に達したら削って詰める
  • むし歯になっている部分はすべて削って取り切らなければならない
  • 歯磨きの回数は多い方がいい
  • フロスにむし歯予防効果がある
  • 乳臼歯が生えたらシーラント
  • 赤ちゃんと食具を分けるとむし歯予防になる
  • キシリトールがむし歯を減らす

かつては常識とされていたこれらの歯科情報が、現在の知見ではいずれも不正解。

上記のセミナー案内を目にした時に、驚きと、最新のカリオロジーを学びたい!と思い、こちらのセミナーを受講しました。

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「エビデンスでカリオロジーをジャック!現在入手可能な最良のう蝕学」セミナーレポート

山田先生がカリオロジーを追求するきっかけになったのは、1人目のお子さんが生まれたこと。

どうにかこの子の歯をむし歯から守ってあげたいという親心から、意を決して、イエテボリ大学の研修へ参加されたといいます。

そのため、山田先生の「不要なこと(根拠がないこと)はしない、すべきことは徹底的に」の考えは、イエテボリのフィロソフィーがルーツになっているそうです。

山田先生はまず、う蝕に対する考え方や概念をガラッと覆しました。

みなさんは、う蝕は感染症だと思いますか?私は今回山田先生のお話を聞くまで、そうだと思っていました。

しかし、海外の学術誌を紐解くと、う蝕は感染症でも伝染病でもないことがわかります。

山田先生は、「う蝕はう蝕病原細菌自体が歯からミネラルを奪っているのではなく、細菌たちが歯面の上を暮らしやすい環境(酸性)に整えた結果、歯のミネラルが失われるだけ」と解説しました。

また、う蝕は今や多因子性疾患と呼ばれ、その要因は私たちのよく知っている宿主、細菌、糖質、時間に留まらず、フッ化物の使用状況や生活環境、学歴にまで及びます。

フェジェルスコフ(Fejerskov)とマンジ(Manji)の図を挙げ、う蝕には多数の因子が複雑に絡んでいることを解説
フェジェルスコフ(Fejerskov)とマンジ(Manji)の図を挙げ、う蝕には多数の因子が複雑に絡んでいることを解説

その指導、本当に「むし歯予防」?

臨床の現場では、「むし歯予防のために、離乳食がはじまった赤ちゃんと家族の食具を分けましょう」「食べ物をフーフーと冷ますのはやめましょう」という保健指導を耳にすることがありますよね。

本セミナーでは、それがう蝕予防に貢献していないということを、さまざまな研究データをもとに山田先生が解説しています。

恥ずかしながら、私もそのように指導していたことがあります。

これまでの保健指導が、子育てをするお母さんたちを苦しめていたのかもしれないと反省するとともに、これからの乳児期や幼児期のう蝕予防に対する保健指導についてのヒントを得ることができました。

もっとシンプルに、楽に考えていいのだと気付かされました。

押さえつけてまで歯磨きを行うことは、う蝕予防にあまり貢献しないという
押さえつけてまで歯磨きを行うことは、う蝕予防にあまり貢献しないという

そして、「むし歯予防にはまずフッ素!フロスが必須!」も、私たち歯科医療従事者の固定概念なのです。

どちらもう蝕予防において大切であることは変わりありませんが、誰に何が必要なのかを見極め、考えなければいけません。

その見極めこそ、イエテボリルーツの「不要なことはしない、すべきことは徹底的に」に基づいて行うべきだと山田先生はいいます。

フッ化物を使用しない歯磨きにう蝕効果はない

これは、私の経験談です。

私の患者さんで、コロナ禍で来院ができず治療もメンテナンスも中断してしまった方がいます。その方はナチュラル志向で、食事にも気を使い、治療途中で管理が難しい口腔内も綺麗に保たれていました。

しかし、久しぶりに来院した患者さんの口腔内は、荒れに荒れていました。お話を聞くと、今まであまり摂っていなかった砂糖を食事に取り入れるようになった、間食が増えたといいます。

また、セルフケアではフッ化物無配合のナチュラルな歯磨剤を使用するようになったとのことでした。この期間でこんなにも口腔内が変わってしまうのかと愕然としました。

その患者さんには、まず食生活指導を行い、次にフッ化物配合の歯磨剤の使用を促しました。しかし、フッ素はあまり使用したくないとのことで、ジェルや洗口剤など、あらゆる方法を提案しましたが受け入れてもらえず、頭を悩ませていました。

山田先生は、フッ化物を使用しない歯磨きに、う蝕予防効果がないことに言及。また、木の実などの糖質が多い食生活をしていた縄文人は比較的う蝕が多かったという研究を紹介しました。縄文人でもう蝕があるのですから、現代の食生活でナチュラルにう蝕を防ぐことは難しいということです。

今回のセミナーから、上記のような患者さんに対しても、どのようにアプローチしたらよいのかというヒントを得られました。早くこの患者さんにも伝えたいです。

2+2+2+2methodでは、ペットボトルのふた1杯分の水ですすぐだけで良いとされている
「2+2+2+2method」での洗口は、ペットボトルのふた1杯分の水ですすぐだけで良いとされている

新常識が満載!本当にう蝕予防に効果がある情報をご紹介

宮古島の子どもたちの追跡調査の研究も、とても興味深いお話でした。1980年代に宮古島の無歯科医地区において行われた健診と保健活動です。その調査結果は驚くべきものでした。

山田先生は、当時調査対象であった子どもたちの30年後の口腔内を調べに現地に足を運んだそうです。すると、4歳時点の口腔内の状況が成人した後にも影響していることがわかったといいます。

その他にも、「キシリトールのう蝕予防効果は?」「歯磨きの回数は?」「う蝕になったら削って詰める?」「乳歯が生えたらシーラントをすべき」など、常識とされている歯科情報について、さまざまな論文や科学的根拠に基づいて解説されました。

バーニッシュを塗布して非活動性のう蝕に移行させた例
バーニッシュを塗布して非活動性のう蝕に移行させた例

明日からの臨床で早速活かしたい内容が盛りだくさんです。

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今まで常識とされてきた情報も、常に進化をしています。

本セミナーは自分の常識や概念を覆されるような、そしてハッと気付かされる内容ばかりです。まさに知識をアップデートすることができました。

歯科医療従事者として、自分の大切な患者さんのために知識のアップデートは常に必要であると改めて感じました。

山田先生は3人目のお子さんが生まれた今、お子さんの不正咬合を防ぐべく、調査のためにご長男と各地を飛び回っているそうです。その調査は人類学や縄文時代にまで遡るそうで…いつかそのお話も聴いてみたいと思いました。

山田先生のお子さんを想う気持ちに感動し、心温まるセミナーでした。

皆様もぜひ、大切な誰かのためにカリオロジーのアップデートをしてみませんか?

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