はじめまして。日本小児歯科学会認定歯科衛生士の和田京子と申します。
小児歯科専門の歯科医院で臨床を行うかたわら、小児歯科の分野で自信をもてる歯科衛生士を育成する研修を行っています。
本連載では、「今さら聞けない!」というような小児歯科の基礎知識をお伝えしていきたいと思います。
ぜひ、一緒におさらいしましょう!
さて、初回となる今回は、小児歯科の基礎である、乳歯列・永久歯列の生え変わり時期や注意点について解説していきます。
乳歯と永久歯の違い
最初に、基本となる乳歯と永久歯の違いをおさらいしましょう。
乳歯 | 永久歯 | |
---|---|---|
歯数 | 20本 | 28本(第3大臼歯を含め32本) |
色 | 白色 | 黄色味をおびた白色 |
大きさ | 乳歯よりもふた回りほど大きい | |
表記 | A 乳中切歯 B 乳側切歯 C 乳犬歯 D 第一乳臼歯 E 第二乳臼歯 |
1 中切歯 2 側切歯 3 犬歯 4 第一小臼歯 5 第二小臼歯 6 第一大臼歯(6歳臼歯) 7 第二大臼歯(12歳臼歯) |
このように、乳歯と永久歯とでは、表記や歯数、色、大きさがすべて異なります。
まずは、この違いをしっかりと覚えておきましょう。
歯の色についてお話しすると、乳歯ってとても白いですよね。それに比べ、永久歯の色は黄色味がかっています。
この理由は、生えはじめのエナメル質は透明度が高いため、象牙質の色味が透過するからです。
乳歯の生え変わり
生えはじめる時期
小児の患者さんを診ると、保護者の方から「まだ歯が生えないんですが、いつ生えてきますか?」と質問を受けることがしばしばあると思います。
生えはじめや順番には個人差がありますが、一般的には生後7ヶ月頃に下顎前歯(A)から生えはじめます。
保護者が同じ月齢の子と比べて、不安にならないようにしっかりとお伝えしましょう。
また、生え変わり時期の差については、前後半年間は許容範囲といわれています。
スムーズに答えられると、保護者の安心感に繋がるはずです。
生える時期
一般的に上下顎とも生える順番は以下の通りです。
A → B → D → C → E
アルファベット表記で、「CとDが逆」と覚えると記憶しやすいです。
生えそろう時期も個人差はありますが、2歳6ヶ月頃となります。
抜ける時期
乳歯が抜ける時期は、6~7歳頃(幼稚園年長〜小学校1年生)であり、下顎前歯から抜けはじめます。
また、臨床では乳歯が抜けないまま、第一大臼歯から生えはじめる小児も多く見受けられます。
どちらが先でも問題はありませんが、特に生えはじめの第一大臼歯は、磨きにくいこともあり、歯磨き指導をする上でのポイントとなります。
ちなみに多くの場合、女の子の方が生え変わりが早いといわれています。
永久歯への生え変わり
生え変わる順番
永久歯へ生え変わる順番は、以下の通りです。
上 顎:6 ≒ 1 → 2 → 4 → 3 → 5 → 7
下 顎:1 or 6 → 2 → 3 → 4 → 5 → 7
※ ≒ は、「ほぼ等しい」という意味
永久歯が生えそろうには、約6~7年の期間がかかります。
そして、12~13歳(小学校6年生〜中学校1年生)頃までに第3大臼歯以外の永久歯が生えそろいます。
第3大臼歯
「親知らず」とよばれる第3大臼歯の生えはじめは、17~21歳頃といわれています。
第3大臼歯が生えてこない場合は、横向きで生えてきたり、埋伏していたりするだけでなく、先天欠如の場合もあります。これは、パノラマレントゲン写真で確認することができます。
定期検診で来院される時などに、第3大臼歯にあたる箇所に何か症状がある場合は一度確認してみると良いでしょう。
生え変わる時の注意点
乳歯と同じく個人差があり、乳歯は抜けたものの永久歯が3ヶ月~1年ほど生えてこないこともあります。
この原因としてあげられるのは、「永久歯や歯周組織の元となる歯胚が作られていない」「過剰歯がある」「生える方向に問題がある」など、さまざまな可能性があげられます。
適齢期を過ぎても生える気配のない場合は、視診に加えてレントゲン写真などで状況を確認しましょう。
また、乳歯が抜けないまま、永久歯が生えることもあります。乳歯が抜けないことを、乳歯の「晩期残存」とよびます。
このような場合は、早めに歯科医院へ連絡し、相談することをおすすめしています。
相談にこられた際の説明としては、以下の通りです。
- 乳歯の晩期残存は、日常生活への支障や歯列不正の原因になりうる
- 生えはじめの永久歯は磨きづらく、う蝕の原因になりやすい
上記のようなことをお伝えできると良いでしょう。
歯科医院で行う処置としては、レントゲン写真の撮影や、必要に応じて乳歯の抜歯があげられます。
最後に
何度も言いますが、歯の生え変わりには個人差があります。
だからこそ、私たち歯科衛生士が生え変わりの時期をしっかりと把握し、説明することで、保護者に安心感を感じてもらいましょう。
また、適齢期を過ぎても生えてこない歯や、乳歯が抜けないまま永久歯が生える場合は、早めの対応を促しましょう。
生えはじめた歯は、乳歯、永久歯とともに歯の質が強くありません。だからこそ、早めの予防が大切です。
次回は、「小児におけるう蝕予防処置」についてお伝えします。
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