診療報酬点数について学ぼう! #4 小児口腔機能管理料・口腔機能管理料とは?

歯科医院の売り上げや業績に直結する、診療報酬点数。

毎年少しずつ内容や点数が改定され、二年に一度、大幅な改定が行われます。

2022年度はその大幅な改定が行われる年で、改定内容についての情報が続々と出はじめています。
(参照:2022年度診療報酬改定の個別改定項目についての答申結果を発表 中医協-WHITE CROSS

算定項目によっては、算定条件や算定できる期間が細かく決まっているため、完璧に内容を覚えることがむずかしい項目も。

この連載では、算定する機会が多い項目や、複雑な条件が必要な項目について詳しく解説していきます♪

今回は、2022年度からの改定内容に沿って、「小児口腔機能管理料」と「口腔機能管理料」について紐解いていきます。

前回までの記事はこちら

#1 診療報酬点数とは?
#2 初診料・再診料とは?
#3 歯科疾患管理料とは?

小児口腔機能管理料・口腔機能管理料

小児口腔機能管理料・口腔機能管理料とは?

歯科疾患管理料または歯科特定疾患療養管理料を算定した患者さんに対し、月1回算定できる項目です。

小児口腔機能管理料・口腔機能管理料と同時に算定できない管理料は、以下の通りです。

  • 周術期等口腔機能管理料(Ⅰ)〜(Ⅲ)
  • 歯科疾患在宅療養管理料
  • 在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料
  • 小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料
  • 歯科矯正管理料

小児口腔機能管理料 100点

18歳未満の口腔機能の発達不全を認める患者さんに対して、正常な口腔機能の獲得を目的として行う医学管理や指導を評価した項目のことを指します。

今年度までは「15歳未満」の患者さんに算定する項目でしたが、2022年度からは対象年齢が3歳引き上げられます。

関係学会の診断基準によって「口腔機能発達不全症」と診断されている患者さんのうち、その評価項目において3項目以上に該当する患者さんに対して、継続的な指導や管理を実施する場合に算定します
(参照:口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方-日本歯科医学会

小児口腔機能管理料を算定する際は、口腔機能の評価や管理計画の作成、患者さんへの説明を行う必要があります。

管理計画については、患者さんに文書で提供し、提供した文書の写しや指導・管理内容に関する記録はすべてカルテに添付します。

また、患者さんの成長や発達に伴う口腔内の状況変化を確認するため、口腔外または口腔内写真の撮影を適宜行います。写真撮影は、小児口腔機能管理料の初回算定日にはかならず実施し、その後少なくとも3ヶ月に1回以上は行うこととされています。

小児口腔機能管理料

口腔機能管理料 100点

50歳以上で、歯の喪失や加齢、全身疾患などにより口腔機能の低下を認める患者さんに対して、口腔機能の回復や維持・向上を目的として行う医学管理を評価した項目のことを指します。

今年度までは65歳以上の患者さんに算定する項目でしたが、2022年度からは対象年齢が大幅に引き下げられます。

関係学会の診断基準によって「口腔機能低下症」と診断されている患者さんのうち、以下の3つのいずれかに該当する患者さんに対して、継続的な指導や管理を実施する場合に算定します。
(参照:口腔機能低下症に関する基本的な考え方-日本歯科医学会

  1. 咬合力低下
  2. 低舌圧
  3. 咀嚼機能低下

口腔機能管理料を算定する際は、口腔機能の評価や管理計画の作成を行い、管理計画については、患者さんに文書で提供する必要があります。

提供した文書の写しや指導・管理内容に関する記録はすべてカルテに添付します。

口腔機能管理料

口腔機能発達不全症・口腔機能低下症について知っておこう!

それでは「口腔機能発達不全症」と「口腔機能低下症」とは、具体的にはどのような症状のことを指すのでしょうか?

歯科医療従事者として、これだけは知っておきたい!という内容についてお伝えします♪

口腔機能発達不全症

「食べる機能」「話す機能」「その他の機能が」十分に発達していない、または正常に機能獲得ができていないため、口腔機能の発達において専門的な関与が必要な状態。

口腔機能発達不全症の診断基準として、「食べる機能」は、咀嚼機能・嚥下機能・食行動の評価、「話す機能」は構音機能の評価、「その他の機能」は栄養と呼吸状態の評価によって決まります。

日本歯科医学会では、出生後〜乳歯列完成までの時期を次の5つに分けた上で、評価方法や指導内容が考えられています。

  • ステージ1:乳児期 出生~生後12ヶ月ごろ
  • ステージ2:幼児期初期 生後12~18ヶ月ごろ(離乳完了期)
  • ステージ3:幼児期中期 生後18ヶ月~3歳ごろ
  • ステージ4:幼児期後期 3~6歳ごろ
  • ステージ5:学童期 6~12歳ごろ

詳しい評価内容や指導内容についてはこちら

また、離乳完了前と完了後では評価項目が異なり、生後18ヶ月以降は離乳完了後のチェックリストを用いるとされています。

口腔機能発達不全症チェックリスト
口腔機能発達不全症チェックリスト(左:離乳完了前、右:離乳完了後)

口腔機能低下症

加齢だけでなく、疾患や障害などのさまざまな要因によって、口腔機能が複合的に低下している状態。

診断基準としては、次の7つの症状のうち3つ以上に該当する場合、口腔機能低下症と診断します

  1. 口腔衛生状態不良
  2. 口腔乾燥
  3. 咬合力低下
  4. 舌口唇運動機能低下
  5. 低舌圧
  6. 咀嚼機能低下
  7. 嚥下機能低下

原則、上記7つの症状すべてについての検査を行いますが、誤飲や誤嚥のリスクを避けるためなど、検査できない項目がある場合、その理由をカルテに記載する必要があります。

口腔機能精密検査記録用紙
口腔機能精密検査記録用紙(引用:日本歯科医学会HP)

繰り返しになりますが、「口腔機能管理料」は、「口腔機能低下症」と診断された患者さんのうち、③ ⑤ ⑥ にあてはまる場合のみに算定することが可能です。

詳しい評価内容や指導内容についてはこちら

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いかがでしたか?

カルテやレセプトは、普段何気なく目に触れるものですが、その内容まで詳しく理解するには時間が必要です。

私たち歯科医療従事者が普段行っている治療について、“この処置は何点なんだろう?”という疑問をもつことや、“患者さんはこれだけの治療費をかけて通ってくれているんだ。”という実感を得ることは大切だと思います。

ぜひこの連載で、普段算定している診療報酬点数についてマスターしましょう♪

次回は、「歯科衛生実地指導料」についてです。お楽しみに!

参考文献:歯科診療報酬点数表-厚生労働省
口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方-日本歯科医学会
口腔機能低下症に関する基本的な考え方-日本歯科医学会
小児の口腔機能発達評価マニュアル-日本歯科医学会

診療報酬点数について学ぼう!

#1 診療報酬点数とは?
#2 初診料・再診料とは?
#3 歯科疾患管理料とは?
#4 小児口腔機能管理料・口腔機能管理料とは?