みなさんこんにちは。歯科医師の内山茂です。
私はこれまで、地域の「かかりつけ歯科医」として35年以上、患者さんの口腔の健康を守ることに努めてきました。
メインテナンスが「すべての患者さんに必要である」ということは周知の事実ですが、患者さんが口腔内に問題点を抱えたままメインテナンスに移行するケースも少なくありません。
そういった患者さんを歯科医院で継続して診ていくことを「SPT(サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー)」とよびます。
SPTの目的は、歯周病の二大要因である炎症と力を継続してコントロールしながら「病状の安定」を図ることにあります。
SPTを行う上で必要な基本知識として、前回は歯肉縁上縁下のプラークコントロールについて解説しました。
前回の記事はこちら
今回は、SRP後に行う「歯面・歯周ポケット内洗浄」と「フッ化物塗布」についてお話しします。
1.歯面・歯周ポケット内洗浄
PMTCやデブライドメント、SRPを行った後、口腔内に残留したプラーク・歯石・研磨剤などを洗い流す目的で、歯面・歯周ポケット内を洗浄します。
これにより、組織の消炎効果と術後の爽快感を同時に期待します。
今回は、私がおすすめする洗浄液と洗浄器、また洗浄針についてご紹介したいと思います。
洗浄液
洗浄液には超酸性水を用います。
これにコンクールFやバトラーCHX洗口液、ネオステリングリーンなどの香りや味の良い洗口液を少量混ぜて使うと、酸味が中和されて清涼感が得られます。
洗浄器
洗浄器には、水圧の調整がしやすく簡便で、使用する洗浄液の制約を受けないという理由から、ガラス製の5ml水銃注射筒を用います。
全顎にわたる歯周ポケット内の多量なプラークをすばやく落とす場合には、超音波スケーラーのピエゾンマスターやスプラソンP-Maxを用います。いずれも付属のボトルに前述の洗浄液を入れて使用します。
洗浄針
5mlの水銃注射筒を使う場合、その先端にパイロゾン針を装着します。
しかし、患者さんが金属性の針に対して恐怖心をもつ場合などには、ディスポーザブルのプラスチック製チップ(ペリオクリン用など)を改造して使用します。
2.フッ化物塗布
PMTCやデブライドメント後には、新たなう蝕予防や歯周治療後の知覚過敏、根面カリエスを予防するため、フッ化物を塗布します。
数ヶ月おきのメインテナンス時には、原則として2%フッ化ナトリウム溶液含有ゲルまたはフォームを用いますが、短い間隔でメインテナンスを行っている場合や、患者さん自身のホームケアにおいては、950ppmまたは0.1%のフッ化ナトリウムジェルを使用します。
また、当院で測定したところによると、同じフッ化物でもその酸性度=pHには大きな差があることがわかりました。
そのため、エナメル質表層の状態や、う蝕が初期う蝕か根面う蝕かなどによって、酸性度の高い製品と低い製品を使い分けるといった工夫が必要ではないかと考えています。
なお、隣接面う蝕の予防には、歯間部にフッ化物を注入し、デンタルフロスで数回フロッシングすることによって、フッ化物が隣接面に到達しやすくなります。
また、根面カリエスと歯肉縁下カリエスの予防には、補助ブラシを用いて歯肉縁付近に丹念に塗布します。
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SPTについてもっと詳しく学びたい方は、こちらのセミナーがおすすめ!
Dr.内山茂に聞く!SPTのキホン
第1回 歯肉縁上縁下のコントロール
第2回 ポケット内洗浄・フッ化物塗布