診療報酬点数について学ぼう! #7 口腔細菌定量検査とは?

歯科医院の売り上げや業績に直結する、診療報酬点数。

毎年少しずつ内容や点数が改定され、二年に一度、大幅な改定が行われます。

算定項目によっては、算定条件や算定できる期間が細かく決まっているため、完璧に内容を覚えることがむずかしい項目も。

この連載では、算定する機会が多い項目や、複雑な条件が必要な項目について詳しく解説していきます♪

今回は、2022年度の診療報酬改定から新しく保険収載された「口腔細菌定量検査」について紐解いていきます。

前回までの記事はこちら

#1 診療報酬点数とは?
#2 初診料・再診料とは?
#3 歯科疾患管理料とは?
#4 小児口腔機能管理料・口腔機能管理料とは?
#5 歯科衛生実地指導料・歯周病患者画像活用指導料とは?
#6 歯周病検査とは?

口腔細菌定量検査

口腔細菌定量検査とは?

口腔細菌定量検査とは、「口腔バイオフィルム感染症」の診断を目的に、口腔細菌定量分析装置で細菌数を測定する際に算定できる項目です。月2回までの算定が可能で、1回につき130点を算定できます。

ただし、前回検査を実施した日から起算して1ヶ月以内に実施した場合は、所定点数の100分の50に相当する点数で算定する必要があります。

また、歯周病検査または歯周病部分的再評価検査を算定した同月には算定できないため、注意が必要です。

口腔細菌定量検査の算定対象となる患者さんは、以下の通りです。

  1. 在宅などにおいて療養を行っている患者
  2. 脳性麻痺等で身体の不随意運動や緊張が強く、体幹の安定が得られない状態
  3. 知的発達障害等により、開口保持ができない状態や治療の目的が理解できず、治療に協力が得られない状態
  4. 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ、歯科診療に際して家族等の援助を必要とする状態

② 〜 ④ は、初診料で歯科診療特別対応加算を算定している患者さんで、上記に該当する方のみに算定できます。
(参照:診療報酬点数について学ぼう! #2 初診料・再診料とは?

口腔細菌定量検査の内容については、日本歯科医学会が提示している『口腔バイオフィルム感染症に対する口腔細菌定量検査に関する基本的な考え方』をもとに実施することとされています。

歯科診療特別対応加算

口腔バイオフィルム感染症について知っておこう!

口腔バイオフィルム感染症とは、障害者や在宅療養者などの口腔内において、歯や歯周ポケット、義歯などに多量のバイオフィルム、すなわちプラークの付着や舌苔ががみられる状態のことを指します。

2022年度からは、こういった口腔内の汚染状況を客観的かつ迅速に評価するため、細菌量を測定できる技術を用いた「口腔細菌定量検査」の算定項目が追加されました。

口腔バイオフィルム感染症の診断方法

口腔バイオフィルム感染症を診断する検体としては、以下のいずれかを使用します。

  1. 舌下部の唾液
  2. 舌上部の表面

① の場合は、滅菌綿棒を10秒間舌下部に置き、唾液を滅菌綿棒に吸収させることで、② の場合は、滅菌綿棒で舌背中央部を1cmの距離で3往復程度こすることで、検体を採取します。こする際は、20g圧程度の軽い力で行ってください。

診断には、以下のような口腔細菌定量分析装置を用いて行います。

口腔内細菌カウンタ(画像は株式会社ヨシダHPより引用)
口腔内細菌カウンタ(画像は株式会社ヨシダHPより引用)

口腔バイオフィルム感染症の治療の流れ

口腔バイオフィルム感染症の治療の流れは、以下の通りです。

  1. 口腔細菌定量検査を行い、管理計画を立案する
  2. 口腔内の汚染状況とその原因、対処方法を患者さんに説明する
  3. バイオフィルムの除去などの必要な処置や管理を行う
  4. 必要に応じて再度口腔細菌定量検査を行い、再評価する
  5. 細菌数が既定値以下となった場合は、口腔バイオフィルム感染症の治癒と考える
    ※ 再評価でも既定値を超えており、管理計画を変更する場合は再度患者さんに説明する

細菌数は処置後2週間程度で有意に変化するため、③ から ④ までは2週間以上の期間をあける必要があります。

よって、① 〜 ③ は1回目、④・⑤ は2回目以降の訪問または来院時に行うという流れです。

ただし ③ については、管理計画によって回数が変わってくるので、患者さんによって必要な処置を重ねる必要があります。

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いかがでしたか?

カルテやレセプトは、普段何気なく目に触れるものですが、その内容まで詳しく理解するには時間が必要です。

私たち歯科医療従事者が普段行っている治療について、“この処置は何点なんだろう?”という疑問をもつことや、“患者さんはこれだけの治療費をかけて通ってくれているんだ。”という実感を得ることは大切だと思います。

ぜひこの連載で、普段算定している診療報酬点数についてマスターしましょう♪

次回は、歯科衛生士が主体となって行う「スケーリング・ルートプレーニング」についてです。お楽しみに!

参考文献:歯科診療報酬点数表-厚生労働省

診療報酬点数について学ぼう!

#1 診療報酬点数とは?
#2 初診料・再診料とは?
#3 歯科疾患管理料とは?
#4 小児口腔機能管理料・口腔機能管理料とは?
#5 歯科衛生実地指導料・歯周病患者画像活用指導料とは?
#6 歯周病検査とは?
#7 口腔細菌定量検査とは?