歯科衛生士の役割にスポットをあてた、子ども向けマンガ『出た出た!デッター号 〜歯抜けのナゾを追え〜』レビュー

みなさんは、子ども向けの歯科書籍といえばコレ!というものはありますか?

きっと多くの方は、“むし歯”に焦点をあてた本が思い浮かんだのではないでしょうか。

このように、世の中の歯科にまつわる書籍は、主にむし歯予防について書かれたものが多く、ある程度は情報が行きわたっています。

しかし、歯周病予防についての情報はどうでしょうか。

そこで今回は、歯周病をテーマにした子ども向け歯科書籍出た出た!デッター号 〜歯抜けのナゾを追え〜』をご紹介します。

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著者は、もともとNHKの科学情報バラエティ『ためしてガッテン』の演出を担当していた北折一氏

番組の取材を通して、口腔と全身の健康との関係性には強い関心があったそうです。

NHKを退職後、医療関係者向けに健康情報の伝え方についての研修活動を行う中で、多くの歯科医療関係者の「もっと口腔ケアの重要性を広めていきたい」という熱い思いに触れます。

そこで、自分に何か手伝えることはないかと考えたときに、注目したのが歯周病でした。

むし歯予防と比較して、歯周病予防の情報は、届いている人と届いていない人の落差が激しく、なす術もなく歯を失ってしまったり、それをきっかけにどんどん健康状態が悪化する方があとをたたない状況であることを知る北折氏

それを解決するために考えたどり着いたのが、“子どもが楽しめる本をつくること”だったといいます。

我が子の言うことは聞き入れたくなくても、孫の言うことなら聞いてしまうという高齢者が多いからこそ、たくさんの子どもたちに、自分の大切な祖父母の歯を守ってほしい。それと同時に、お子さんのご両親世代にも、“すぐ先の自分のこと”として届いてほしいという願いから制作にいたったのだそう。

今回は、そんな本書の見どころをお伝えできればと思います♪

出た出た!デッター号 〜歯抜けのナゾを追え〜

見どころ①どんどん読み進めたくなる物語

この本は主人公ショウタが、歯周病に侵された祖父(以下、作中に合わせじーちゃん)の歯を救うため、デッター号に乗ってじーちゃんのお口の中へ侵入し、歯周病のナゾをあきらかにしていく物語の漫画になっています。

出た出た!デッター号 〜歯抜けのナゾを追え〜

ショウタはある日、じーちゃんの家にトウモロコシを届けに遊びにいきます。

そこで出会ったのが、じーちゃんのお友達のケンさん。ケンさんはほとんど歯がありません。もちろんトウモロコシを食べることはできず、代わりにやわらかいおまんじゅうを食べます。

そんな中、トウモロコシを食べることのできたじーちゃんですが、歯が2本抜けてしまうのです。

「最近ぐらぐらすると思ったら…だんだんケンさんに近づいてきているなぁ」と笑うじーちゃんに、衝撃を受けるショウタ。

いつの間にか眠ってしまったショウタは、じーちゃんがトウモロコシをかじって、すべての歯が抜けてしまう夢をみて驚き、目を覚まします。

するといきなり、“デッター号”という乗り物が登場し、「ショウタ!じーちゃんの歯を救うんだ!」と呼びかけられ、デッター号に乗ってじーちゃんのお口の中に突入することに。

歯周病に侵されたじーちゃんのお口の中を守るための冒険がはじまります。

出た出た!デッター号 〜歯抜けのナゾを追え〜
突然あらわれたデッター号に乗ってじーちゃんのお口の中へ

見どころ②歯周病の仕組みについて理解しやすい

このマンガでは、お口の中に存在する細胞や細菌、免疫などがキャラクター化して登場。

たとえば、破骨細胞は“ホネトカシ”。骨芽細胞は“ホネツクリンちゃん”。歯周病菌であるスピロヘータは、“スピロスネーク”。ジンジバリス菌は“ジンジャーバリバリ”。

出た出た!デッター号 〜歯抜けのナゾを追え〜
歯周病菌のスピロヘータとジンジバリス菌のキャラクター

ほかにも、免疫細胞は“カラダ防衛軍”といったように、難しい内容をキャラクター化することによって、子どもでも入り込みやすいように再現されています。

また、章ごとに歯周病についての詳しい解説ページが設けられており、より理解を深めることができます。

出た出た!デッター号 〜歯抜けのナゾを追え〜
章ごとに詳しい解説が入り正しい知識が身に付く

見どころ③歯科衛生士の重要性についてもアピール

本のあとがきには、北折氏の歯科衛生士への想いが次のように綴られています。

この本には、歯科衛生士さんの仕事にスポットが当たってほしいという願いも、こっそりこめました。「医者でもないし、ただの助手の人?」と思われちゃうこともあるようですが、じつは歯を守るためにいちばん大事なことを、地道に頑張っている人たちですから。(あとがきより引用)

マンガの中でも、“スピロスネーク”や“ジンジャーバリバリ”のすみかとなっている「歯石城」を壊していく、歯科衛生士の活躍が描かれています。

北折氏は、このような歯科衛生士の重要性を、作品を通して伝えたいという願いも込めて制作に励んだといいます。

出た出た!デッター号 〜歯抜けのナゾを追え〜

最後に

この書籍は、小学4年生からが対象となっていますが、大人が読んでも面白く、とても勉強になります。

現に北折氏は、歯科医院に来院したお子さんがこの本を読み、お子さんの診療中にご両親も読みはじめ、止まらなくなり「これは、じーちゃんばーちゃんに読ませなければ!」と、敬老の日に孫からのプレゼントとして送る、という妄想を繰り広げながら制作されたそう。

どの世代が読んでも、楽しく歯周病について学べる一冊です。

届けたい情報を、届けたい相手に直接アプローチするのではなく、“お孫さん”という届けたい相手の大切な存在から伝えていく。

そんな、今までにない、新しい子ども向け歯科書籍です。

ぜひ、手にとってみてくださいね!

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