北欧よりもレベルが高い?!オランダの歯科衛生士事情 vol.1 日本の歯科衛生士との違い

こんにちは、合同会社LINK CARE代表で歯科衛生士の瀬戸口祐子です。

私は2019年から約3年、オランダに住んでいました。現地の歯科事情について研究を行う中で、日本の歯科衛生士とのレベルやシステムの違いなどに愕然としました。

この連載では、その中から私がオランダの歯科衛生士事情について学んだことを紹介していきたいと思います。

オランダの歯科衛生士事情

オランダの医療従事者が登録するBig-registerとは?

オランダの医療従事者はすべてが登録制ではありません。

オランダ政府が「BIG-register」として決めている12職種の医療従事者のみ独立した権限が与えられます。

このBIG-registerの医療従事者には医師や歯科医師、看護師、助産師、薬剤師、理学療法士などが含まれますが、これらの職種は日本の国家資格のような「終身免許制度」ではありません

5年ごとに資格の更新が必要であり、職種によっては実技訓練や講習会への出席、さらには1週間または5年間の勤務時間数などが厳しく定められています。

そのため、BIG-registerの医療従事者は、妊娠や出産、育児によって完全に休職してしまうと、免許の更新ができなくなる恐れがあります

このようにオランダでは、特定の医療従事者に対し、とても厳しい登録制のシステムを設けています。しかし国民にとっては、知識と技術をブラッシュアップし続けた医療従事者による、安心・安全な医療を受診できるという大きなメリットがあります。

医療従事者

オランダの歯科衛生士の位置づけ

オランダの歯科衛生士は、国民や他の医療従事者から「歯科予防専門医」として認識されています。

これは予防に関連する口腔医療を専門とする職業のことを指し、仕事内容としては予防的治療やブラッシングに関するアドバイス、ケアを主として行います。

日本とオランダの歯科衛生士における大きな違いは、以下の2点です。

  1. 歯科医師と密接に連携をとった上での独立開業が認められている
  2. 必要に応じて診断書の作成を行える

加えて2006年以降は、歯科医師の指示のもと患者さんの口腔内をチェックし、X線撮影や局所麻酔、初期う蝕治療を行うことが可能になりました。

それ以前から独立開業していた歯科衛生士は、「登録歯科衛生士(NVM)」として専門基準を満たしているとみなされ、上記の治療権限が与えられていました。

さらに2020年から5年間は、試験的に「歯科医師の指示のもと」ではなく、「単独行為」として診療することができるようになったのです。

ただしその場合、歯科衛生士はBIG-registerに登録する必要があるため、法的な規制や罰則は厳しく、責任もより重くなります。

そのため、独立開業できる環境であっても、オランダの多くの歯科衛生士は歯科医師によって雇用され、歯科医師の指示のもとで業務を行う道を選んでいます。

歯科医師に雇用される歯科衛生士

しかし、一部の条件をクリアした歯科衛生士がBIG-registerに登録できることは、オランダの歯科衛生士にとって大きな前進ともいえるでしょう。

そこには今までの歴史的背景や、歯科衛生士による社会的な貢献、勉強を惜しまない努力などがあったからこそ、今回の試験的な導入を行うまでにいたったのだと考えられます。

この施策は2025年、登録歯科衛生士のケアの質が落ちていないか、また良い効果がでているかなどの評価が行われます。その上で、歯科衛生士に独立した権限を付与するべきか、最終決定されるようです。

歯科衛生士にとっては、今後の動きに目が離せない改革です!

最後に

私はオランダに住んだことで、現地の医療システムや歯科衛生士の活躍ぶりにとても感動しました。

しかし私たち日本の歯科衛生士も、法律や制度は違えど、諸国に負けない「歯科衛生士力」をもっています。幅広い視野をもち、たくさんの知識を得て、自分自身がなりたい「歯科衛生士像」に近づけるよう頑張りたいものです。

次回は、オランダの歯科衛生士になるためのステップについてご紹介します。お楽しみに!

***

合同会社LINK CAREでは、歯科衛生士の基礎力をアップさせるさまざまなセミナーを開催しています。こちらもぜひチェックしてみてください!

歯科衛生士向け「接遇・プロービング・探知」基礎セミナー

日程:8月25日(木)10:00〜16:00
会場:大阪産業創造館6F 会議室C
費用:33,000円(7月31日までに申し込んだ方は22,000円
対象:歯科衛生士