受付開始45分で満席!第4期 奥山会SRPセミナーレポート

今回は奥山洋実さんによるセミナーのレポートを書かせていただきます。

奥山さんが主催する歯科衛生士スタディグループ奥山会は、毎年1月の定例会の他、SRPセミナーや口腔内写真撮影セミナーなどを開催しています。
(参照:わたしのDHスタイル #25 奥山洋実さん『医院を支える歯科衛生士を増やす』

私が参加したのは、そのうちのSRPセミナー。定員は10名。同一職場からは2名が参加上限でした。

参加費は医院負担がある場合も半分は自己負担すること・普段の臨床で資料取りを行っていることなどの条件がありますが、奥山会LINEグループの申し込み受付開始から45分で満席という人気ぶりでした。

出遅れた私はキャンセル待ち。なかなかキャンセルは出なくて、希望した3期は終了。4期では開催される直前に空きが出たということで、ようやく参加が叶いました。

第4期奥山会の講師を務める奥山洋実先生、谷口威夫先生と筆者(右)
第4期奥山会の講師を務める奥山洋実先生、谷口威夫先生と筆者(右)

奥山会に参加したきっかけ

基礎からしっかり学び直したいと、現職場に移る数年前から考えていました。別の講師の先生の年間コースも申し込みましたが、新型コロナウイルスの影響でセミナー自体がキャンセルとなってしまいました。ついてない…

が、今回ようやくチャンスが巡ってきました。神様が、まだ臨床をしっかりせよと背中を押している気がします。

奥山さんがSNSや歯科衛生士向けの専門誌にて発信されている「口腔内の今だけをみるのではなく、生活背景、環境、全身疾患を含めて聞き出し情報提供を行う」という点に共感していました。

歯科衛生士は情報伝達者であり、やりがいのある職業であると強く話されます。その上で、SRP(手技)の大切さについて我が身を振り返ると思うところがあり、機会があれば奥山さんから直に学びたいと数年単位で考えていました。

奥山さんは自身のセミナーについて、「開催の目的は初期中等度の歯周病を臨床的に治癒させられる力を持つ歯科衛生士の育成。奥山会はしっかり歯科医療に向き合うグループである」と強くおっしゃっています。

私も奥山会については、歯科衛生士の本分であるカリエスと歯周病予防について、確かな技術と知識を高め合うことができる場だと理解していました。

この年齢で、そうしたセミナーに参加するのは少しの勇気を要します。でもそれ以上に、患者さんをもっとよくしたいとの思いが勝り、扉を叩きました。

歯科衛生士のあり方と必要な知識を学ぶ

セミナーは谷口威夫先生の講義からはじまります。谷口先生は、「歯周病のほとんどは基本治療で治る、どの歯科衛生士がやっても同じようにできる」とデータで証明されている歯科医師。
(参照:『6ミリ以上の歯周ポケットも改善できる8つの階段』~谷口歯科医院から学びたい歯周治療の心得~-デンタルダイヤモンド社

歯周病治療の歴史などをお聞きし、実際に歯科衛生士がSRPを行い改善された口腔内写真を見せていただきました。私より上の世代の歯科衛生士さんがかつて行った症例です。

谷口先生は、歯周病のゴールは次の4つだといいます。

  • 4mm以下の歯周ポケット
  • BOPは0に近い
  • 連続した歯槽骨頂線の再生
  • 鍛えられた歯肉

特に、鍛えられた歯肉まで改善できているかどうかについては、自身の臨床の中で大いに反省するところがありました。

また、歯周病治療を進めるにあたっては、以下の3つのポイントが重要だと述べます。

  • 自分の健康は自分で守ると意識づけること
  • 現状の説明
  • 治療の進め方の説明

これを歯科医師と歯科衛生士とで、チームとなり行うわけです。特に、「最初にしっかりとお寺の鐘を鳴らす(衝撃を与える)ことが、患者さんのモチベーションの高揚に繋がる」という言葉が印象的でした。

また、どうしてもモチベーションが上がらない患者さんには、「真剣でない患者さんを今まで通院させていたあなたが悪い!」と、患者さんの前であえて歯科衛生士を叱ることで、医院の真剣さを効果的に伝えられる場合がある、というのもなるほどと思い、仕事でもパートナーである夫に伝えました。

いつまでも磨けないのは、歯科衛生士の伝え方が良くないから…確かにそのとおりですし、「普段一生懸命やってる人が、自分のせいで怒られちゃった。やっぱりちゃんとやろうかな」と思っていただけたら、それは喜ばしいことです。

そして、FOPとSRPのメリットデメリットについても学びました。谷口先生は、歯周基本治療で歯周病が治せれば、歯肉を退縮させずに済む。長い付着上皮はやがて結合組織付着に置換するといいます。

できるだけ歯肉を退縮させないこと、将来の根面カリエスへのリスクを軽減させること。その上で必要なテクニックと指導について教わります。

大切なのはプラークをコントロールすることではなく、ポケットの中の炎症をなくすこと。これを忘れてはならない。ただ歯石を取ることが目的ではなく、何のために何をどうするかを学び、改めて考えるきっかけになりました。

谷口威夫先生の講義で、歯科衛生士に必要な知識とマインドを学ぶ
谷口威夫先生の講義で、歯科衛生士のあり方とそれに必要な知識を学ぶ

シャープニングからおさらいできるSRPの実技セミナー

続いてはいよいよ、奥山さんによる実技セミナー。忘れられないほど強烈なインパクトがあったのはシャープニングです。

新しめのヒューフレディのマイスケーラーを持参してチェックいただいたのですが、「新しいけど切れない」と言う奥山さん。奥山さんがシュッシュッと研いだ瞬間、パッキンパッキンに切れるスケーラーに変身しました。

一人ひとりの普段使用しているスケーラーを確認して回る奥山洋実さん
一人ひとりの普段使用しているスケーラーを確認して回る奥山洋実さん

切れ味のいいスケーラーは、それだけで上達したと錯覚します。歯石を探知しやすい刃先になりました。奥山さんの発信で飛び出す、時に辛口な内容は、実力が伴っているからこそと裏付けられた瞬間でした。

私はこれまで自己流で積み上げてきたわけですから、把持・姿勢と修正ポイントが山積み。SRPの際になんでこんなに身体中に力が入っているのかを、改めて実感することとなりました。

実技では谷口先生にもチェック・指導いただける
実技では谷口先生にもチェック・指導いただける

力を入れるのはそこじゃない!と突っ込みたくなることの連続。

それでも全国から集まった衛生士さんの中には、私と同年代の方もいましたし、お子様連れという状況で学びにこられた方もいて、非常に励まされました。若い方が親切に教えてくださったり、また同窓と知って母校について盛り上がったりもしました。

自分で受講料を負担して参加されている方の熱意は凄いです。最初から最後まで真剣そのもの。この空気は心地よい…。

熱いメッセージ付き修了証の授与

セミナーの最後に、奥山さんから手書きの修了証をいただきました。

奥山会受講の修了証は手書きのポストカード
奥山会受講の修了証は手書きのポストカード

そこにしたためられた「基本を大切に永く歯科衛生士を続けてください」という言葉は、年齢を理由にあきらめないことに繋がるメッセージだと受け止めました。

裏面には、一人ひとりに手書きのメッセージが書かれている
裏面には、一人ひとりに手書きのメッセージが書かれている

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本来なら、若い時にしっかりと学ぶべきです。自分の時間を自分のために。それが未来の自分を支えますし、本当の意味で患者さんのためです。谷口先生が「(患者さん本人が)自分で守るという気持ちにならなければ、歯周病はよくならない」とおっしゃったことと同じです。

自分で学ぼうとしなければ身にはなりませんし、環境の悪さを言い訳にしがちになります。

歩みはまったく異なりますが、奥山さんとは同世代。歯科衛生士にやりがいを感じ、仕事が好きという点は共通しています。

今回のセミナーは、お子様連れでも学べる環境を整えられており、その点が素晴らしいと感じました。私も働くママさんに、心からのエールを送りたいと思います。その中で学ぼうとする姿勢は尊いです。

来年、第5回 奥山会が開催されるようです。

そのご案内はFacebookであるようなので、興味をお持ちの方は、こちらにご参加ください。

奥山洋実さんのFacebookページはこちら