一般歯科と病院歯科のDHがともに学ぶ「縁richment project」が開催!

12月12日、東京都大田区の荏原病院にて「第8回 縁richment project(歯科衛生士地域連携会)」が開催されました。

こちらは、地域連携に力を入れている荏原病院に勤務する歯科衛生士と、周辺の歯科医院に勤務する歯科衛生士とが一緒になって勉強するという、とっても貴重な勉強会。

同じ地域で活動する歯科衛生士が連携し、継続的な口腔機能管理を行うことで、地域住民の口腔の健康維持と向上をめざすことを目的に立ち上げられました。

当日の参加者は50名以上。勉強会では講演だけでなく、参加者同士のディスカッションタイムも設けられ、終始和気あいあいとした空気に包まれていました。

それでは早速、当日の会場の様子をお伝えします♪

会場の様子
会場の様子

インプラントの基礎知識

講師の喜田さゆりさんは、おおはし歯科医院(東京都)に勤めるかたわら、神奈川歯科大学大学院に通い、歯周病学の研究を行っている歯科衛生士です。

あらゆる分野に精通し、さまざまな認定資格を取得している喜田さん。今回の講演ではインプラントのメインテナンスについて詳しく解説しました。

はじめにインプラントの基礎知識として、天然歯とインプラントの周囲組織の違いやそれぞれの共通点、相違点などを説明。ほかにも、インプラントの固定方式やアバットメントの連結様式について解説し、インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎の違いについては、それぞれの特徴についてしっかりと把握しておくべきと伝えました。

講師の喜田さゆりさん
講師の喜田さゆりさん

もう悩まない!インプラントのメインテナンス

つづいて喜田さんは、初診からメインテナンスまでのあらゆる場面における、歯科衛生士の関わり方について説明しました。

上部構造の補綴物については、清掃性の良い形態を提案するためにも、歯科医師と歯科技工士だけでなく、歯科衛生士も積極的に関与していく必要があると話しました。

また、インプラント治療が終われば、歯科医院に通う必要がないと考えている患者さんはまだまだ多いと喜田さんは言います。メインテナンスの必要性については、メインテナンス直前だけでなく、初回のコンサルテーション時から何度も伝えてほしいと強調しました。

そして、他院でインプラント治療を行った患者さんについては、手術を行った歯科医院にしかわからない情報がたくさんあります。そのためインプラント部にトラブルが起きた際は、手術を行った歯科医院で対応してもらうのがベストと言います。

それでも前院に行きたくないという患者さんには、できるだけ多くの情報を集め、患者さんがわからないことは電話で前院に問い合わせてもらい確認するそうです。

他院でインプラント手術を行った患者さんの症例
他院でインプラント手術を行った患者さんの症例

つぎに、喜田さんは、日本口腔インプラント学会と日本歯周病学会による、「インプラントのメインテナンスに関する学会見解」の内容を紹介。

メインテナンスとは、「健康な状態を長期にわたって維持すること」と言い、SPTとの違いについて述べました。

インプラントメインテナンスの実際

つづいて、喜田さんが普段行っているインプラントメインテナンスについて詳しく解説しました。

実際の問診内容や、口腔内診査でチェックする項目について説明し、インプラント部のセルフケアについては、さまざまなセルフケア用品を紹介。患者さん自身が扱いやすいものをおすすめし、道具を増やしすぎないことを意識していると話しました。

さまざまなセルフケア用品
さまざまなセルフケア用品

また、プロービングは、挿入圧や方向に注意しながら行い、プラークを歯肉縁下に押し込まないように気をつけているとのこと。そのため、プラークの付着量が多い場合は、先に除去してから行うべきと話しました。

プロフェッショナルケアについては、歯肉縁上および縁下のバイオフィルムを除去する方法を多数紹介。パウダーメインテナンスの有用性を示した論文をもとに、エアフローを用いたプロフェッショナルケアについても詳しく説明しました。

プロフェッショナルケアで使用する器具
プロフェッショナルケアで使用する器具

そして、インプラントのメインテナンスを行う上で歯科衛生士に必要なポイントとして、以下の2点を挙げました。

  • 良好な口腔状態を維持していくためにメインテナンスを行うという目的の理解
  • インプラントに対して「行ってはいけないこと」の理解

超高齢社会におけるメインテナンス

最後に喜田さんは、高齢者に対するインプラント治療や歯周治療に対する見解を述べました。

メインテナンスの経過が良好な場合は、高齢になっても口腔機能は健全に保たれる」と言い、90歳代でインプラント手術を行った女性の症例を紹介。かかりつけの内科の先生にも承諾を得られ、術後の経過も良好とのこと。

また、訪問歯科のメインテナンスは、インプラントであっても天然歯であっても大変であるという喜田さん。

高齢者だからといって、「インプラント治療を行うことは危険」「ブリッジや義歯の方がいい」とは一概に言えないのではないかと話しました。

さらに、喜田さんは高齢者の低栄養を防ぐさまざまな食材を紹介。これからは、それぞれの年代に応じた食生活指導を行うことができる歯科衛生士が必要とされると伝えました。

地域の歯科衛生士が集まってディスカッション!

喜田さんによる講演の後は、今回参加した歯科衛生士のみなさんによるディスカッションタイムです。

ディスカッションでは、参加者を6つのグループに分け、それぞれのグループでひとつのテーマについて話し合います。

今回のテーマは、「最近、仕事上で悩んでいることや気になっていること」。

はじめに一人ずつ自己紹介を行った後、グループの中でさまざまな悩みを共有しました。

ディスカッションのテーマ
ディスカッションのテーマ

私が参加したグループでは、以下のような悩みが挙げられました。

  • 同じ法人内に医科があるが、なかなかうまく連携がとれない
  • はじめて歯科衛生士学校の実習生を受け入れ、どのように指導すればいいかわからない
  • メインテナンス時のチェアタイムが短い

歯科衛生士として共感できる悩みが多いため、ほかの歯科医院で働く方の意見を聞くことで、解決するためのヒントを得られる、とても貴重なディスカッションでした!

ディスカッション中の様子
ディスカッション中の様子

同じ地域で活躍する歯科衛生士が集まる「縁richment project」。

歯科衛生士としての知識を深めながら、横のつながりを持つことができる、素晴らしい勉強会です。

ご興味のある方は、ぜひご参加ください!