ルートプレーニングのテクニック【歯周治療ベーシックセミナー 第4回】

こんにちは。株式会社Tomorrow Link の濱田智恵子です。歯科衛生士として臨床の現場に立つ傍で、歯科衛生士をはじめとしたスタッフ向けの人材育成をしています。

今回はルートプレーニングのハンドスケーラー編です。なかなか自分が正しくできているのか確認しにくい項目ですよね。基本からおさえていきましょう。

[目次]
1.エキスプローラーテクニック
2.インスツルメント
3.インスツルメントの選択
4.ルートプレーニングのテクニック
5.ルートプレーニングを成功させる11のポイント

 

1.エキスプローラーテクニック

ルートプレーニングの成功の秘訣は、歯石がどこについているのかを正確に把握することから始まります。

そして、どのように歯石がついているのかを知ることも大切です。そのためにはスケーラーで触れて確認することもありますが、縁下用エキスプローラーと呼ばれる専用の器具を用いて歯石を探ることもできます。

エキスプローラー(画像提供:Hu-Friedy社)
エキスプローラー(画像提供:Hu-Friedy社)

エキスプローラーの挿入方法

エキスプローラーの挿入方法

チップを短い垂直ストロークで歯肉溝に挿入していきますが、とても細いインスツルメントなので慎重に挿入することがポイントです。

ワーキングエンドの背面(バック)に接合上皮の抵抗感を感じられるまで入れていきます。

インスツルメントの当て方としては、上の右図のバツ印に示すようにインスツルメントの先が出ると歯肉を傷つけてしまうので、必ず左図のようなイメージを持って使用しましょう。

動かし方

ハンドスケーラーの動かし方

ポケット底部まで挿入したら、根面の形態と歯石の状態を確認できるようにゆっくりと引き上げていきます。

垂直方向、斜め方向、水平方向、という3つの動かし方がありますが、水平方向に関してはインスツルメントの先端がポケット底部に向いていますので特に慎重に行わなければなりません。

2.インスツルメント

インスツルメント(Instrument)とは器具・道具自体のことを指し、インスツルメンテーション(Instrumentation)とは器具を使用することを指します。

① 道具の理解

歯周治療の最終目的は歯周治療を成功させることですが、歯周治療の成功とはどういったものでしょうか?

それは、治癒を一時的なものではなく治癒した良好な状態を長期的に維持させることです。その際にインスツメントを理解するということは、歯周治療において歯科衛生士に求められている「診査する能力」「SRPの能力」に大きく関わるといえますね。

そしてそれが「患者の症状に合わせた施述」「患者の長期的な歯周治療の成功」につながるといった効果もあります。ですので、インスツルメントの構造・素材・種類をしっかりと把握しましょう。

② 各部位の名称

名称を知るということはこれから学ぶ上でも非常に重要です。

各部位の名称

ハンドスケーラーの部位としては、おおまかに、ハンドルとシャンクに分けられます。そしてシャンクの中にはブレード・第1シャンク・第2シャンクに分かれています。

この第一シャンクに関してはシャープニングをする際やルートプレーニングをする際にもよく登場する言葉ですので覚えておいてください。

③ ブレードの名称

ブレードの名称(画像提供:株式会社ジーシー)
画像提供:株式会社ジーシー

このうち、超音波スケーラーには存在しないのがカッティングエッジです。グレーシーキュレットは片刃ですので片方のみにカッティングエッジ、ユニバーサルキュレットは両刃なので両方にカッティングエッジが存在します。

このカッティングエッジにおいて特に重要になるのがシャープさです。

ブレードの名称

シャープさがない(シャープニングが出来ていない)スケーラーを使ってしまうと、

右図のように歯石に食い込まないので歯石が取れないだけではなく、歯石の表面を滑沢化し、歯石なのか根面なのかわからない状態にさせてしまう危険性が伴います。

3.インスツルメントの選択

シックルスケーラー(鎌型スケーラーとも言われる)には、直と曲の2種類があります。

インスツルメントの選択

よく使われるのは下の曲のタイプで、大量に付着した縁上歯石を除去するのに適しているに対して、直は断面図が丸いので歯肉ギリギリの部分や前歯部の歯頸部や歯間部の除石に適しています。

キュレットも、ユニバーサルキュレットとグレーシーキュレットの2種類があります。

インスツルメントの選択

日本ではグレーシーキュレットが主流になって使われていますが、大量に強固に付着した歯石に適しているユニバーサルキュレットをもとに、仕上げようとして作られたのがグレーシーキュレットですので、グレーシーキュレットは細かい取り残しのある歯石の除去に向いているといえます。

インスツルメントの選択

日本でよく使われているグレーシーキュレットのシャンクは1番から18番まで販売されていますが、1番から14番までは術者が立位の際に作られたインスツルメントといわれています。

私たちは普段座ってスケーリングを行いますから、15.16.17.18番が座位用に適しているスケーラーだということも知っておくといいですね。

インスツルメントの選択

キュレットの番号と適応部位です。赤色はオススメの番号ですよ。

5/6は前歯部にも小臼歯部にも使われるのでよく使われています。また、先述のとおり、座位用に作られたのが15/16、17/18ですので、臼歯部の近心面・遠心面にはそちらを使うことをオススメします。

実際に座位用のインスツルメントが手に入らないようであれば11/12、13/14を使いましょう。

立位用と座位用の違い

立位用と座位用の違い

第一シャンクを歯根面に対して平行にして使うというのがグレーシーキュレットの一般的な使い方ですが、それを立位用と座位用で比べてみると座位用の方が固定点が起きやすい位置にハンドルがあるのがわかります。

この図のように立位用で6番の遠心を正しく当てるためにはハンドルが立ちすぎているので、患者さんの開口量を考えるとやや難しいのがわかると思います。

4.ルートプレーニングのテクニック

多くの衛生士さんを見てきましたが、みなさんSRPをしている際に歯石をとることに夢中になりすぎたり、歯石をとっていることが楽しくなって必要以上のストローク(オーバーインスツルメント)をする方がたくさんいらっしゃいました。

作業に夢中にならず、「患者さんが痛みを感じていないのか」「とろうとした歯石がきちんととれているのか」を注意して行うようにしましょう。

SRP施述当日の事前審査

SRPを行う前に必ず歯周組織検査(プロービング)を行いますが、検査日と実際の施述をするまでの日にちに大きく間が空いてしまうケースがありますよね。その場合は、最初に検査をしたデータだけに頼るのではなく、直前に検査する癖をつけましょう。

グレーシーキュレットの操作角度

グレーシーキュレットの操作角度

 

第一シャンクが根面に平行になっている状態の角度の図です。Cのように当てるのがいいですね。

グレーシーキュレットの操作方法

操作方法は以下の2つです。

① 手首前腕運動

スケーリングをする際、適切な側方圧がかかりやすい

② 手指屈伸運動

ストロークの長さや方向を正確にコントロールする際に効果的。かなり狭いポケットの深い歯石をとるのに適している

5.ルートプレーニングを成功させる11のポイント

  1.  正しいスケーラーを選ぶ
  2. キュレットを執筆法変法で持つ
  3. 安定したフィンガーレストを置く:側方圧をかけるので、鉄則ですね
  4. 刃部を軽く歯に適合させる
  5. 刃部を接合上皮まで、第一シャンクを根面に平行にして注意深く挿入する
  6. 操作角度を45度以上、90度以下に設定する:第一シャンクを歯軸と平行にできれば70度で最も望ましいのですが、中々難しい部位もありますので基本的には45度から90度となっています
  7. 歯石にふれるまで歯面に軽く側方圧を加えるする
  8. 歯石や粗造面に触れるまで探知ストロークで作業する
  9. 歯石に触れたら、すべての歯石を除去するまで、短いコントロールされた連続ストロークで側方圧を強くかけ、スケーリングストロークを行う
  10. 根面を最終処置する場合、長いオーバーラップした削るような連続ストロークで側方圧を軽くかけ、ルートプレーニングストロークを行う。:硬い歯石をしっかりとる場合は短くコントロールされたストロークで側方圧を強くかけて行い、最後に仕上げとしてオーバーラップしたストロークで側方圧を強くかけずに仕上げます。歯石のつき方によっても使い方を選択する必要があります。
  11. 隅角や凸面、陥凹部の周囲をストロークするときは、指で把持部を回転させながら、たえず刃部の適合が持続するよう維持する:根の形態は複雑なのでそれに合わせて施述するには把持部を回転させながら行うのが重要になります。

歯周治療ベーシックセミナー

第1回 歯科衛生士とは
第2回 プロービング編  
第3回 超音波スケーラー編
第4回 ルートプレーニング編
第5回 PCR編
第6回 PMTC編
第7回 ミラーテクニック編