歯科のお仕事完全マニュアル 第9章 C3の治療 STEP10 TeCの作製

歯科治療では、クラウンやブリッジを作製する際に、補綴物ができあがるまでの間、仮歯を用意することがあります。

仮歯とは、最終的な補綴物を装着するまでに入れておく、レジンでできた仮の歯のことで、テンポラリークラウンTeC(テック、TeK、TEKとも書く)などといいます。

TeCのセットには、技工所で作られたものを使用する方法と、歯科医院で作ったものを使用する方法の2通りがあります。

STEP10では、TeCを作製する際に準備する器具や、治療の流れについて説明します。

1.TeCの印象をとる

歯科技工所で作られたTeCを使用する場合、まずはTeCを作製する予定の部位の印象をとります。

1.TeCの印象をとる

① 印象をとる

TeCを作製する予定の部位の印象をとります。

  • 必要に応じて、本印象のみでなく対合印象もとる
  • 技工指示書や技工物ノートへの記入を行い、印象用の名札を作っておく(技工所に発注する場合)
技工指示書 記入例
技工指示書の記入例

2.TeCのセット

歯科技工所などで作製されたTeCや、既製のポリクラウンをセットする場合、患者さんの歯に合うように調節する必要があります。

TeCのセット

3.TeCのセットの準備

基本的に準備するもの

作製されたTeC あるいは 既製のポリクラウン
作製されたTeC あるいは 既製のポリクラウン
即時重合レジン + 即重合レジン用小筆
即時重合レジン + 即重合レジン用小筆
ワセリン + 鉛筆
ストレート + バー(技工用カーバイド・ビックポイントなど)
レジンポリッシャー
レジンポリッシャー
仮着用セメント
セメント練板(れんばん)あるいは 練和紙(れんわし)
セメント練板(れんばん)あるいは 練和紙(れんわし)

必要に応じて準備するもの

表面麻酔 + 浸潤麻酔
リムーバー
リムーバー
デンタルフロス
デンタルフロス
ガーゼ
技工物用ゴミ袋 + 口腔外バキューム
技工指示書 + 技工物ノート

① 表面麻酔・浸潤麻酔は、生活歯を削ってTeCを作る際に使用します。

4.TeCのセットの流れとアシスタント

TeCのセットのアシスタントについては、準備がメインとなります。

① 支台歯を形成する

前回の治療時に形成していない場合、支台歯形成を行います。

  • TeCセットの準備に加えて、タービン用バーなどを準備する
  • 生活歯形成の場合、表面麻酔や浸潤麻酔などを準備する
  • バキューム操作・ライトの調整

② TeCの修正

術者が、チェアーでTeCを修正します。アシスタントはどの色のレジンの粉(ポリマー)が必要かを術者に確認し、準備します。

③ 仮歯を仮着する

  • 仮着用セメントを練和する
  • 仮着用セメントは、仮歯の辺縁に少量を塗布する
  • 患者さんが咬むガーゼを手渡し、タイマーをセットする
  • 技工所で作製したTeCの場合、仮歯の指示書や技工物ノートに記入する
  • セメントが固まった後に、術者が探針などで除去したセメントをアルコールガーゼで拭きとる(術者による)
仮歯の辺縁に少量を塗布する様子
仮歯の辺縁に少量を塗布する様子

5.TeCをその場でゼロから作る

練和したレジンを歯に押しあてて固め、歯の形に削り出し、咬み合わせなどを調整し、仮歯を作りあげる治療。削り出し自作などともいいます。

基本的には、基本的に準備するものは、作製されたTeC・既製のポリクラウン以外、「3.TeCのセットの準備」と同様です。

TeCをその場でゼロから作る

TeCをその場でゼロから作る場合の流れは、基本的に「4.TeCのセットの流れとアシスタント」と同じですが、術者がチェアーでTeCを作りあげていく手順が異なります。

① 練和したレジンの形成

レジンを練和してできた塊を支台歯に押しあてます。押しあてた状態で放置するとはずれなくなることがあるので、押しあてたりはずしたりを固まるまで繰り返します。

練和したレジンの形成
練和したレジンを形成する手順

② レジンの削り出し

固まってできたレジンのかたまりを歯の形に削り出します。

レジンの削り出し
レジンを削り出す手順

③ TeCの調整・研磨

咬み合わせなどの調整、研磨を行います。

TeCの調整・研磨の手順
TeCの調整・研磨の手順

④ TeCを仮着する

できあがったTeCを仮着します。

TeCを仮着する
仮着されたTeC

6.印象を利用してTeCを作る

支台歯の二次カリエスなどによって、補綴物の除去や作り直しが必要な場合、除去する前に補綴物の印象をとり、レジンを流しこむことで、補綴物と同じ形のTeCを作ることができます。

基本的に準備するものは、作製されたTeC・既製のポリクラウン以外、「3.TeCのセットの準備」と同様です。

印象を利用してTeCを作る

印象を利用してTeCを作る場合の流れは、基本的に「4.TeCのセットの流れとアシスタント」と同じですが、術者がチェアーでTeCを作りあげていく手順が異なります。

① 印象をとる

TeCを作製したい部位の印象をとります。シリコンパテアルジネート印象材を使用して行います。

印象をとる
TeCを作製したい部位の印象をとる手順

② 支台歯を形成する

支台歯を形成し、ワセリンを塗布します。

支台歯を形成する

③ 印象にレジンを盛る

①で採取した印象にレジンを盛り、印象を口腔内の正確な位置に戻します。場合によっては、印象の端をカットし、印象を口腔内の正確な位置に戻しやすくすることもあります。

印象の端をカットし、レジンを盛る手順
印象の端をカットし、レジンを盛る手順

④ レジンを固める

レジンが固まるのを待ち、取りはずします。

レジンを固める

⑤ TeCの調整・研磨

マージン、咬み合わせなどの調整や研磨を行います。

TeCの調整・研磨

⑥ TeCを仮着する

できあがったTeCを仮着します。

TeCを仮着する

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第9章 C3の治療

STEP1 抜髄と麻抜①基本的な知識
STEP2 抜髄と麻抜②準備・アシスト
STEP3 根管治療
STEP4 根管充填(側方加圧法)
STEP5 除去
STEP6 感染根管治療
STEP7 支台築造の間接法①コア形成・印象
STEP8 支台築造の間接法②コアセット・形成
STEP9 支台築造の直接法
STEP10 TeCの作製