わたしのDHスタイル #30 角田知里さん『仕事もプライベートも、患者さんとともに挑戦する』

歯科衛生士は社会的価値の高い大切な職業であり、この社会になくてはならない存在です。

dStyleでは、今まさに臨床の現場ではたらいている方々にスポットライトを当て、等身大の歯科衛生士ライフを語っていただきました。

このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。

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今回は、歯科衛生士歴15年の角田知里さんにお話を伺いました。

歯科衛生士学校を卒業後、新卒で入社したあすなろ歯科に、産休育休を経て今も勤務を続けている角田さん。

現在は3人の子育てをしながら、日本ヘルスケア歯科学会の認定資格で得た知識と技術を生かして働いています。

あすなろ歯科 角田知里さん

仕事をする上でこだわっていること

口ではなく人をみること。

この人はどういう人なのか?家族は?子供は?お孫さんは?など、患者さんに興味を持って深く知るようにしており、そうすることで見えてくる背景を大事にしています。

そして、きちんと資料をとること。

まずは患者さんにしっかりご自分の口腔内を把握してもらいたいので、口腔内写真には特にこだわっています。

当たり前のことですが、いつどこに出しても大丈夫な写真を撮ることを意識しています。日本ヘルスケア歯科学会の認定を受けたので、その規格に準じて撮影しています。

また、歯周病をしっかり治すことにもこだわっています。

歯周病は患者さんと一緒に治していく疾患なので、患者さんにも治したい!やってみたい!と思ってもらえるような前向きな声がけをするように心がけています。

たとえば、まずは病気になってしまった原因を理解していただくところからはじめています。

そして、歯周病は歯科医院に通うだけでは治らないこと、プロフェッショナルケアとセルフケアにそれぞれ役割があること、その具体的な方法を細かくお伝えします。

また、院内に位相差顕微鏡があるので、口腔内の細菌を実際に見てもらい、患者さんの視覚にうったえかけることもあります。

指導の際は「こういう風にすると良くなりやすい、治りやすいですよ」という言い方をしていますね。

褒めることを大切にして、「やってください」と強制するような言い方しないようにしています。

位相差顕微鏡の映像を見ながら患者さんに説明する様子

日本ヘルスケア歯科学会認定資格を取ったきっかけ

研修に通いはじめたのは、私が入社して2年目くらいの頃です。

当時から予防歯科を行っていましたが、そこまでクオリティの高い治療を提供できていませんでした。

そんな時に院長から「技術面と知識面のどちらも学べるし、自分の成長にもなるから行ってきてもらえる?」と言われたのが、この研修会でした。

特に口腔内写真は、認定資格を取る際にかなり鍛えていただきました。

当時も写真を撮っていましたが、規格がバラバラだったり、他に撮れるスタッフがいなかったりといった状況で。研修で教えてもらってからは、ひたすら撮って確認、撮って確認の毎日でした。

口腔内写真の実技検定では、3回目でようやく合格。暖かくもあり厳しくもあり…

細かいところまで確認していただけるので、試験に受かるまではすごく大変でしたが、すごく自分の身になったと思います。

ヘルスケア歯科学会の認定では、口腔内写真の他に歯周組織検査の技術テストもあります。

また、SRPやシャープニング、PMTCの技術も教えていただけたので、知識面はもちろん技術面でも自信を持つことができるようになりました。

働く中で経験した、うれしい出来事

産休・育休期間中も、復帰を待っていてくれる患者さんがいたことです。

「角田さんはいつ戻ってくるの?」とか、「よかった~また戻ってきてくれて。またよろしくお願いします」という言葉をいただけた時は、とても嬉しかったです。

「お子さん大きくなったでしょ~?」と、子どものことにも気にかけて声をかけてくれる患者さんもたくさんいます。

また、患者さんに先輩ママがたくさんいるので、私自身の子育てのことで患者さんに相談に乗ってもらったりできるのは、本当にありがたいです。

「角田さん」や、旧姓の「藤井さん」と、名前を呼んでもらえるのも嬉しいです。

また、同じ医院にずっと勤務しているので、小さいころから見ている子たちの成長を見られることも嬉しいです。ママのおなかの中にいた頃から知っている子もいるので、親戚とか従妹をみているような気持ちですね。

「ママには内緒なんだけどね~」と、こっそり恋愛の話をしてくれる子がいたり、進路の相談、学校や生活のことなど、みんなたくさんお話してくれるので、本当に楽しいです。

そして、「これまでは歯のことなんか考えたことなかったけど、あすなろ歯科にきてから本当に考え方が変わりました。」と、歯の大切さやメインテナンスケアの大切さに気付いてくれる人もいます。

こうして、生活習慣や口腔内への意識が高まった方を見ることができるのも、嬉しいことのひとつです。

これまでの人生経験の中で、やっておいてよかったと思うこと

高校生の時に行っていた、焼肉屋さんのアルバイトです。

忙しいお店だったので、「働くってこういうことなのか、お金をいただくってこういうことなのか」と、まず最初に仕事の大変さを感じた経験です。初めてもらったお給料には感動しました。

また、みんなで協力して働く楽しさも経験しました。先を見越して行動すること、効率の良い動き方などもこの時に鍛えられたと思います。

また、衛生士の奥山洋実さんに出会えたことも、私の大きなターニングポイントです。
(参照:わたしのDHスタイル #25 奥山洋実さん『医院を支える歯科衛生士を増やす』

一年ほど前、衛生士が何人か辞め、一気に仕事量が増えて仕事と私生活のバランスを保つことが難しくなってしまった時期がありました。

いろいろありつつもずっとあすなろ歯科で働いてきたけれど、さすがに今の状況だとこのまま続けるのは難しい…と退職が心をよぎることもありました。

ちょうどその時、医院に奥山さんが指導にきて下さることになり、鬱々としていた私を一瞬で見抜き、声をかけてくださいました。

誰にも言えずに悩んでいたことを聞いていただき、心がスッキリ晴れ、今できることをやっていこう、とまた前向きな気持ちになりました。

そして患者さんとの関わり方も変わり、その結果患者さんも良くなる、私もますます衛生士の仕事が楽しくなる、とすべてがいい方向に変わっていきました。

きっと奥山さんと出会っていなければ、今あすなろ歯科に私はいないと思います。

長くメインテナンスケアに通われている患者さんと角田さん

おすすめの器具

錦部製作所から出ているTKチップと、YDMのペリオプローブWHOです。

TKチップは、メインテナンスケアの必須アイテムです。

日吉歯科診療所の熊谷崇先生が考案された超音波スケーラー用チップなのですが、プローブの形をしているため、ポケット内への挿入が容易で、無理なく使うことができます。

錦部製作所 TKチップ

ペリオプローブWHOは、入社2年目の頃に指導にきてくださった衛生士さんにすすめていただいてからずっと使っています。

感覚が繊細に指先に伝わってくるので、根面の状態も把握しやすく、細かな見落としも防げると思います。

また、その衛生士さんからは「SRPで大事なのは、まずはデンタルを撮ってもらうこと。そしてよく切れるキュレットを使うことと、しっかり探知して根面の把握をすること」と教わりました。

そのため、SRPの際はもちろん、メインテナンスケア時にもポケット内の確認に使っています。

YDM ペリオプローブWHO

今後挑戦したいこと

これからも常に成長していくこと。

自分はもちろん、後輩も活躍できる場所をつくること。

私みたいにくすぶっている人って結構多いと思うので、「歯科衛生士の楽しさ」を伝えていきたいなと思っています。

歯科衛生士学校の同級生の中には、出産などでブランクがあり、もう衛生士をしていない子もいます。

ブランクがある方に対しても、衛生士の楽しさはもちろん、技術面も伝えていきたいです。

そして、歯周病学会の認定も取りたいと思っています。

認定資格を取ることで、技術面の確認はもちろん、症例をまとめる際は自分の臨床の振り返りにもなります。

さらに、“客観的にこの人はどういう歯科衛生士なのか”がわかりやすくなり、その専門として医院外にも発信しやすくなると思います。

また、職場で認定取得を目指していると言っていると、担当の患者さんが「頑張るから(症例に)使ってよ!」と応援してくれる方もいるので、とても嬉しいですし、励みにもなります。

長く関わっていると、お互いに家族じゃないけど家族みたいな気持ちになってきますよね。

自分の家族だったらどうするだろうか?と、常に考えながら治療にあたっています。

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