日本歯周病学会指導医から直接学べる!認定歯科衛生士資格を取得するための研修会が開催

8月4日、東京医科歯科大学にて「JIPI DH研修会」が開催されました。

JIPI(Japanese Institute of Periodontology and Implantology)は、歯周病やインプラントを中心に学ぶスタディーグループです。JIPIのDH研修会は、日本歯周病学会認定歯科衛生士取得をみすえた、歯科衛生士業務のスキルアップを行う場でもあり、全国から勉強熱心な歯科衛生士さんが集まります。
(前回の記事はこちら:日本歯周病学会認定歯科衛生士資格の取得をめざす!JIPI 第15回 DH研修会レポート

今回の研修会では、歯科衛生士の方々による症例発表が行われました。

それでは、当日の会場の様子をお伝えします♪

毛細血管の最末梢にみられる「ヘアピンループ」とは?

まずはじめに、牧草先生は、歯科衛生士業務と認定歯科衛生士資格を取得するメリットについて説明しました。歯科衛生士業務については、日本歯科衛生士会のHPに記載されている文章を抜粋し、歯科衛生士は「歯科治療の一部を担当する」ことが業務であることを強調して伝えました。

そして、歯周炎と糖尿病の相関について解説。糖尿病のいちばんの問題は、「血管がもろくなること」といいました。

また、「日本一、歯周組織の血管が好きである」という牧草先生。

身体の最末梢にある毛細血管は、末梢部分でUターンしており、これを「ヘアピンループ」とよぶそうです。

この先端のループ部分にある毛細血管は非常に弱いため、過度なブラシ圧や歯周病原因菌の毒素による刺激があると、末梢から遠ざかろうとします。そうすると、末梢部分の血液循環が悪くなり、組織壊死が起こった結果、「歯肉が下がる」のだといいます。

ヘアピンループの解説

講義では、特殊な顕微鏡でしか見られないという、歯肉頂や付着歯肉部分の毛細血管の様子を動画で見ることがでました。

初めて見る映像に、受講生の方はとても驚いていました。

患者さんのライフステージにあわせた歯科治療

患者さんは、以下の5つの年齢層にわけられるという牧草先生。

  1. 幼少年期(0〜14歳)
  2. 青年期(15〜24歳)
  3. 壮年期(25〜44歳)
  4. 中年期(45〜69歳)
  5. 高年期(70歳以上)

壮年期と中年期をさらに前・後期にわけ、それぞれの年代に対して行うアプローチと、歯科治療のコンセプトについて解説しました。

そして、18年通院している患者さんのエピソードを元に、歯科治療は患者さんの人生に深く関わっていることや、歯科衛生士は、患者さんの人生をともに変えている仲間であることを強調しました。

つづいて、侵襲性歯周炎の患者さん2名の症例を紹介し、歯周炎の病名のつけ方について解説。軽度・中等度・重度歯周炎の分類方法や、侵襲性歯周炎の特徴など、病名をつけるためのポイントをわかりやすく学ぶことができました。

また、歯周治療を行う上で、「ガイドラインを熟知しておくことは必須!」と伝える牧草先生。

実際の臨床現場では、ガイドライン通りに進まない症例はたくさんあり、ガイドラインに沿った治療ができない場合も多々あります。

しかし、「ガイドラインを熟知した上で、ガイドライン外の治療を行う」ことと、「ガイドラインを知らずに、ガイドライン外の治療を行う」ことでは大きく異なることを話しました。

歯科衛生士による症例発表

今回の研修会では、2名の受講生による症例発表がありました。発表後には、牧草先生よりスライドの一枚一枚について、コメントがもらえます。

症例発表中の様子

牧草先生は、修正点や良かった点を伝えるだけでなく、口頭試問のロールプレイングも行いました。その症例を選んだ理由や、治療の介入時期についても言及し、試験当日に活かせるアドバイスをたくさん聞くことができました。

それぞれの症例に対するコメントの中では、患者さんの口腔内をより深く理解するためにできることについて解説し、細かい部分まで手厚くフォローしました。

牧草先生が症例について解説する様子

歯周治療の流れについて復習!

午後からは、歯周治療の流れについて一通り説明がありました。

まずは初診時の医療面接で把握すべき事項について解説。歯周治療を進める上で、患者さんのプロファイリングを行うことはとても大切と強調しました。

患者さんの口腔内に対する意識は、歯周治療が進むにつれて上がっていきます。それにともなって、摂食・発音・審美・清掃についての考えも初診時とは変わるため、最初の状態を記録しておく必要があるとのことでした。

次に、歯周組織検査の目的や、歯周基本治療について詳しく解説しました。

今まで「初期治療」ともよばれていた「歯周基本治療」ですが、初期の歯周病に対して行うといった意味や、治療の流れの中で初期段階にだけ行うといった意味でとらえられることがあるため、「歯周基本治療」というよび方に統一されたといいます。

牧草先生は、「歯周基本治療なしに歯周炎の治療は進まない」といい、歯周基本治療の内容について以下のように述べました。

歯周基本治療の内容とは、

  • 歯周外科
  • 補綴・矯正
  • インプラント
  • メインテナンス・SPT

以外のすべての歯科治療のことを指す。

また、ルートプレーニング時にセメント質はどこまで除去するべき?という疑問については、SRPに対する概念の変化や、超音波スケーラーの有効性について説明。

生体が対応可能な環境を提供し、刃物を用いる術式の限界を理解することが大切といいました。

これまでは、罹患セメント質を完全除去することが大切とされてきたSRPですが、これからは、歯根表面に付着したバイオフィルムを破壊し、セメント質を除去するのではなく健全化することを目的として行う必要があるとのことでした。

また、CTの有用性についても言及し、口腔内所見やX線写真だけでは伝わらない情報が見えるため、埋伏智歯の抜歯などの理由でCTを撮影する場合は、歯周炎の観点からも、画像を確認してみてくださいと伝えました。

その後は各論に入り、すべての歯種の解剖について詳しく説明。上顎中切歯の根面近心がへこんでいる理由や、上顎第一小・大臼歯に介在結節がある理由など、興味深い内容がたくさん盛り込まれていました。

何度聞いても新しい学びが得られる牧草先生の講義に、受講生の方々からの、うなずきやあいづちが絶えない研修会でした。

休憩時間中も牧草先生のお話を聴きに集まる受講生

今後も、東京では年に3回ほどのペースで開催される予定のJIPI DH研修会。

日本歯周病学会の指導医である牧草先生から、認定歯科衛生士資格を取得するための知識を学ぶことができる貴重な研修会です。費用も5,000円と、お財布にやさしいところも大きな魅力のひとつです!

また、会場では、認定資格をすでに取得している歯科衛生士さんの提出資料を実際に見ることもできます。

提出書類を確認する受講生

認定資格を目指す方は、ぜひ何度でも受けてみてください♪

牧草先生と受講生のみなさん