おなじみのスケーラーを大解剖!YDM工場見学レポート

麻布東京デンタルクリニックの歯科衛生士 吉山桜です。

10月16日、株式会社YDMさんの工場見学に行ってきました。

私たちが毎日使用しているスケーラーやミラーなどの器材の開発から、製造に関する実際の現場を見学しました。

株式会社YDM 埼玉事業部
株式会社YDM 埼玉事業部

当日は、株式会社YDM 開発部長の櫻井さんとデンタル事業部の佐野さんに、工場内を案内していただきました。

今回の工場見学は、私たちが毎日使用しているものがどのように作られているのかを知れるということで、とても楽しみに伺いました。

しかし、何よりもYDMさんのものづくりに対する熱意を感じ、その思いに想像以上に感動しました。

作られている工程をただ見学するというだけでなく、歯科衛生士としても色々なことを思い考えることができ、とても貴重な経験になりました。

この記事では、当日の様子をレポートしたいと思います。

株式会社YDM開発部長 櫻井さん
株式会社YDM開発部長 櫻井さん
株式会社YDMデンタル事業部 佐野さん
株式会社YDMデンタル事業部 佐野さん

おなじみのスケーラーができるまでの製造工程

YDMの器具器材には、それぞれの特性に適した金属が使用されています。

適切な金属を使用することは、精度の高い器具器材を安定的に供給するために必要不可欠です。

たくさんの研究を重ね、オリジナルの金属を開発することができるのは、大きな規模で製造を行っているYDMさんだからこそなのだそうです。

それぞれの器具器材に適した金属が、それぞれの形に加工されている
それぞれの器具器材に適した金属が、それぞれの形に加工されている

みなさんは、スケーラーの把持部の内部がどのようになっているかご存じですか。

実はこのように、中が空洞になっています。より軽くなるように加工されているのだそうです。

スケーラーの把持部の内部構造
スケーラーの把持部の内部構造

毎日使用しているスケーラーにもかかわらず、把持部の内部が空洞になっていることだけでなく、どのように作られているのかについて、今まで疑問に思ってこなかった自分にも驚きました。

スケーラーは、私たち歯科衛生士が、実際に患者さんの口腔内で使用するものです。

プロフェッショナルとして、自分が使用する道具にまで責任と誇りを持つべきだと感じました。

測定投影機
投影機

こちらは、投影機という機械です。

できあがった器具の先端を20倍で写して、設計図通りの形状になっているかどうかを確認しています。

研究を繰り返し、丁寧に大切に作られた器具たちは、たったの髪の毛3分の1程度の誤差しかないそうです。

今回の見学の中で、櫻井さんや佐野さんが繰り返しおっしゃっていたのが「安定的」、「精度」という言葉でした。

安定的に精度の高いものを届けられるように、たくさんの研究が繰り返され、いくつもある中からその器具に最適な材料や加工方法などが選ばれていました。

こうした技術者さんたちのさまざまな技術や熱意が、私たちの日々の診療の「精度」に繋がっているのですね。

仕上げは手作業!精度の高い刃付け工程

つづいての工程は、2020年10月発売の「デブライドメント用インスツルメント #11-12 チタン製」の作業部先端に刃付けを行っている様子です。

作業部先端の幅は、なんとたったの0.4mmだそうです。非常に細かな作業ですが、職人さんの手でひとつひとつ丁寧に仕上げられていました。

このたった0.4mmの、細くしなやかな刃の存在によって、私たちはインプラントや補綴装置を傷つけることなくデブライトメントを行うことが可能となります。

実際に使用してみると、インプラント上部構造の頬舌側中央部の基底面など、フロスのみではアプローチしづらかったところにまで、安心して挿入することができます。

そのため、インプラントや補綴装置のメンテナンスには必要不可欠だと感じています。

ルーペで確認しながらの切削作業
ルーペで確認しながら切削作業を行う

クオリティを守るための品質管理工程

そして、工場で作られたものは、より長期的に、そして安全に使用してもらうための試験や研究が繰り返されています。

耐久性などをみる試験では、口腔内と同じような環境を再現した試験機を使用したり、実際の診療室の消毒室を再現した研究室にて、試験が行われていました。

また、櫻井さんや佐野さんは、器具の正しい消毒や滅菌の方法を啓発するために、滅菌技士の資格を取得されたそうです。

ここでも、「器具器材を大切に使用してもらいたい」というYDMのみなさんの熱意を感じました。

摩擦摩耗試験機
摩擦摩耗試験機

摩擦摩耗試験機には、唾液に見立てた体温と同じくらいの温度の生理食塩水の中にエナメル質に見立てたガラスを入れることで、口腔内の環境が再現されていました。

ガラスにスケーラーの刃部を当て、摩擦や摩耗の具合をみています。この試験方法はYDMさんの開発部のオリジナルだといいます。

消毒室を再現した研究室
消毒室を再現した研究室

研究室には、オートクレーブや超音波洗浄機、ジェットウォッシャーなどがあり、器具を診療室で使用した際の状況を再現していました。

できるだけ実際に使用される状況と同じ環境を作り出し、耐久性や、破損などのリスクを事前に検証しています。

また、正しく長く使用してもらうために、器具器材の洗浄・滅菌に関するマニュアル冊子まで作製しているとのことでした。

YDMさんが発行している『インスツルメントの洗浄・滅菌ガイドブック』
YDMさんが発行している『インスツルメントの洗浄・滅菌ガイドブック』

まとめ

私たちが毎日何気なく手に取って使用しているスケーラーにも、技術者さんたちの多くの技術や思いがたくさん詰まっているのです。

ひとつひとつ丁寧に考えられ、工夫を凝らし、大切に作られていました。

キュレットスケーラーひとつをとっても、刃部の硬さやしなりなどはメーカーや用途によって種類はさまざまです。

勤務先のクリニックにはじめから置いてあるからという理由で、何となくそのスケーラーを使用しているという方も多いのではないでしょうか。

今回、YDMさんの工場見学を通して、私たち歯科衛生士は、口腔管理のプロフェッショナルとして、それぞれの口腔環境に合うスケーラーの選択ができなければならないと感じました。

また道具を適切に選択できるだけでなく、丁寧に作られているものを、より丁寧に大切に使用しなければならないと強く感じました。

日々の診療の中で、1人の患者さんにかけられる時間は限られています。それでも自分のできる精一杯のことを、丁寧に大切に行わなければなりません。

適切なスケーラーを選択し、大切に扱うことが日々の診療の丁寧さや、患者さんの口腔内を大切に管理することに繋がります。

改めてこのようなことを考えることができ、今後も歯科衛生士として働いていくうえで、本当に貴重な経験になりました。

今回工場を見学させていただきました、YDMの皆様に心から感謝いたします。