小児期の夜型の生活習慣が、カリエスリスクを高める

4月18日、北海道大学は「就寝時刻や夕食時刻が遅い子ども、夕食を決まった時刻に食べていない子どもはう蝕が多いことを明らかにした」と発表しました。

この研究は、同大学院歯学研究院の八若保孝教授と北海道医療大学リハビリテーション科学部の西出真也講師らの研究グループによるもの。

夜型の生活習慣とう蝕との関係は科学的に証明されていなかった

近年、社会の24時間化が進み、深夜であっても買物や外食をしたり、テレビやインターネットなどの娯楽を一日中利用したりすることができるようになりました。

このことは、多様な生活スタイルの選択を可能にした一方で、生活リズムのみだれを引き起こし、不眠症など健康障害の原因となっています。

夜型の生活習慣は、肥満や生活習慣病などにつながるといった研究から、「う蝕発生のリスクも高めるのでは」と予想されていましたが、これまで科学的に示した研究はありませんでした。

そこで研究グループは、北海道大学病院歯科診療センター小児・障害者歯科外来を受診した、16歳以下の全身疾患のない患者230名を被験者とし、生活習慣を記録する用紙を配布。

彼らに「就寝時刻」「起床時刻」「食事時刻」「間食時刻とその内容」「歯磨きの時刻と要した時間」を8日間、家庭で記録するよう依頼しました。口腔内のう蝕の本数は、患者の担当医の診断により算出しています。

夜型の生活習慣そのものがう蝕のリスクに

調査の結果、140名(1~16歳)の被験者から有効な回答を得ることができました。

被験者の内訳は、年齢7.2±3.5歳(平均値±標準偏差)、男児77名、女児63名。すべての回答項目において、年齢・性別・回答時期による差は認められませんでした。

しかし、年齢と睡眠時間帯(就寝時刻と起床時刻の中央の時刻により算出)および睡眠時間の間に相関が認められ、高年齢になるにつれて夜型になり、睡眠時間が短くなる傾向がありました。

乳歯列期の被験者38名(2~7歳)の生活習慣とう蝕の本数の関係を解析したところ、「就寝時刻」「夕食時刻」「夕食時刻のばらつき(標準偏差)」「間食回数」はう蝕の本数と統計的に有意な相関があることが判明。

また、重回帰分析により「就寝時刻・夕食時刻」と「間食回数」はたがいに独立した因子であることがわかり、夜型の生活習慣そのものがう蝕のリスクであることが明らかになりました。

つづいて、永久歯列期の小児33名(11~16歳)について同様の解析を行ったところ「夕食時刻のばらつき」のみ、う蝕の本数と相関があることがわかりました。

う蝕リスクと生活習慣の関係(画像はプレスリリースより)

これらの結果から、就寝時刻や夕食時刻が遅い子ども、夕食を決まった時刻に食べていない子どもは、う蝕が多いことがわかりました。

また、今回の調査では、夕食時刻と就寝時刻の間にも関係があり、夕食を遅く食べる子どもは就寝時刻も遅いという結果でした。

さらに、夜型の生活習慣がう蝕発生におよぼす影響は、永久歯列をもつ小児より乳歯列をもつ小児の方が大きいとのこと。

これは、年少児ほど、睡眠や食事などの生活習慣のみだれが、身体のサーカディアンリズム(※1)におよぼす影響が大きいことが原因と考えられています。
※1 血圧や体温など体の機能にみられる約24時間周期のリズムのこと。

永久歯におけるう蝕の初発は、多くの場合が小児期です。

夜型の生活習慣をもつ子どもは、夜遅くに食事や間食をすることが多いです。夜間は唾液が減少し、防御機構が弱まるため、細菌が増え、う蝕発生・進行のリスクが高まると考えられています。

研究グループは「従来から経験的には夜更かしをすることや、夜遅くに食べることが健康を害することは言われてきたが、本研究により科学的に実証することができた。今後は、家庭や学校、歯科医院などの場で、う蝕予防の観点からも早寝早起きが推奨されることが期待される」と述べています。

* 本研究は、2019年4月4日、学術誌「Journal of Dental Sciences」にオンライン掲載されました。

出典:
小児期の夜型の生活習慣は虫歯のリスクを高める~「夜遅くに食べると虫歯になる」を証明~(歯学研究院 教授 八若保孝)