ホワイトニングの基礎知識 番外編 ホワイトニングは修復物に影響する?!

歯を白くしたい!芸能人みたいにきれいな歯にしたい!

患者さんのこんな要望を叶えるために行われるホワイトニング。

年々、ホワイトニングを行う歯科医院が増えている中、ホワイトニングエキスパートやホワイトニングコーディネーターといった、それに特化した資格を取得する歯科衛生士の方も増えてきているのではないでしょうか?
(参考:ホワイトニングコーディネーターになるには?

この連載では、これからホワイトニングを行いたいと考えているみなさんに知っておいてほしい、ホワイトニングの知識についてお伝えしていきます。

今回は番外編として、ホワイトニングによる修復物への影響について詳しく解説しようと思います♪

これまでの記事はこちら

vol.1 ホワイトニングとは
vol.2 オフィスホワイトニングとは
vol.3 オフィスホワイトニングの種類
vol.4 ホームホワイトニングとは
vol.5 ホームホワイトニングの種類

修復物に対する影響はあるの?

今回は、2011年にカナダのモントリオール大学から発表された、ホワイトニング材の修復物に対する影響についての研究を紹介します。

中でも、日本人の歯科治療でよく使用される「コンポジットレジン」「ポーセレン(セラミック)」「アマルガム」「グラスアイオノマーセメント」への影響についてまとめました。

コンポジットレジン

う蝕治療において必要不可欠な材料である、コンポジットレジン。ホワイトニングを行う前歯部に充填されていることが多く、天然歯の色調と合わせているため、患者さんがコンポジットレジンの存在に気づいていないこともあります。

この研究では、コンポジットレジンの色は、15%過酸化尿素を含むホワイトニング材によって変色し、35%過酸化水素になると、より顕著に変色するおそれがあるといわれています。

表面粗さや硬度については、ホワイトニング後、大幅に増加すると実証されましたが、プラークが停滞しやすくなる粗さの基準値は超えなかったため、臨床的にはとくに影響がないとのこと。

また、Ⅰ・Ⅴ級窩洞を充填したレジンにおいては、ホワイトニングによってマージン部からイオンが漏出することはなく、影響がないとされています。しかし、修復範囲が広いⅡ級窩洞については、さらなる研究が必要であるといいます。

ポーセレン(セラミック)

審美的な治療として、前歯部のクラウンや臼歯部のインレーに多用されているセラミック。レジンや金属よりもプラークが付着しにくいため、審美的な面だけでなく機能的にも魅力的な修復治療と考えられています。

この研究では、10%および35%過酸化尿素に21日間暴露したセラミックは、表面粗さが大幅に増加したという生体外研究の報告があります。しかし、表面の仕上げ方によっては、ホワイトニングの影響を受けない場合もあるようです。

表面粗さが増加すると、プラークが付着しやすくなってしまうことが懸念されます。

臨床現場では、すでに口腔内に装着された修復物の表面の仕上げ方を判別することはむずかしいため、とくに前歯部でセラミック治療が行われている歯牙においては、ホワイトニング材が付着しないよう注意しましょう

アマルガム

現在はほとんど使用されることがなくなったアマルガム。しかし、何十年も前に治療した修復物として、患者さんの口腔内にいまだ存在し続けている材料です。

この研究では、アマルガムについては、10%過酸化尿素によるホワイトニングを長時間行った場合、修復物周囲が緑色に変色するという報告があります。変色に関しては、アマルガムと歯質にステップがあることや、二次う蝕の存在などが関与しているといわれています。

また、表面粗さや硬度についても影響があり、イオン漏出については、ホワイトニングによって「水銀」「銀」「銅」「スズ」の金属イオンが漏出するという報告があります。

そのため、アマルガムの修復物がある患者さんに対してホワイトニングを行う際は、修復物周囲をしっかりと観察し、ステップやう蝕などがみられないか、念入りに確認する必要があります。

グラスアイオノマーセメント

フッ素徐放性があるグラスアイオノマーセメントは、小児う蝕や根面う蝕の修復治療に用いられることがあります。

この研究では、グラスアイオノマーセメントについては、ホワイトニングによって変色が起こるものの、時間の経過とともに色がもどるため、影響がないという報告があります。一方で、ホワイトニング後のグラスアイオノマーは、コーヒーや赤ワインといった外来性の着色物質からの影響を受けやすくなるようです。

また、硬度については、ホワイトニングによって大幅に低下するという報告があります。そのため、グラスアイオノマーセメントにおいては、ホワイトング後再修復が必要になる可能性があります

ホワイトニングによって、知覚過敏や歯肉の炎症が起こることについてはよく知られているかと思います。しかし、このように修復物に影響するということまではあまり知られていないのではないでしょうか。

私たち歯科医療従事者は、「ホワイトニング後は、いくつかの修復物の性質が変化するかもしれない」ということを認識しておく必要があります。そして、ホワイトニング終了時には、修復物の研磨や再製が必要かどうかを確認しなくてはいけません。

自費治療であるホワイトニングを受ける患者さんは、口腔の健康に対する意識が高い方が比較的多いように思います。

そんな患者さんだからこそ、「かならず白くなりたい」という気持ちだけでなく、「歯を白くするにはどうすればいいのか」、「自分の歯は白くなるのか」「健康な歯への影響はないのか」といった、さまざまな疑問をお持ちです。

歯科衛生士として、患者さんのあらゆる疑問に答えられるよう、ホワイトニングの基本となる知識を身につけておきましょう。

参考資料:El-Murr J, Ruel D, St-Georges AJ.(2011)「Effects of external bleaching on restorative materials: a review.」『Journal Canadian Dental Association』2011;77:b59. Canadian Dental Association

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