チェアサイドの栄養指導 はじめの一歩 ヘムの構成成分「5-ALA」って?

みなさんこんにちは!歯科衛生士の山本典子です。前回に引き続き、最近話題のサプリメントをご紹介します。

今回は、天然のアミノ酸の一種「5-ALA」について解説したいと思います。

「5-ALA」って何?

ヘムの構成成分

「5-ALA」は「ファイブアラ」と読み、天然のアミノ酸の一種である「アミノレブリン酸」のことをいいます。

一般的にアミノ酸というと、タンパク質を構成している成分を指すことが多いかもしれません。しかし、ALAはタンパク質を構成しているものではなく、植物では「クロロフィル」、私たちの身体の中では「ヘム」の構成成分になります。

クロロフィルは葉緑素ともよばれ、植物の細胞の葉緑体の中にあり、光合成の中心を担っています。植物は光合成により、光と二酸化炭素から酸素と自分自身のエネルギーを生み出していることは、義務教育の理科で習いましたね!

ヘムの重要性

では、「ヘム」とはなんでしょう?

みなさんは「ヘモグロビン」という言葉を聞いたことはありますか?ヘモグロビンは、ヘムとグロビン(タンパク質)で構成されています。

ヘモグロビンは、赤血球の中にあり、身体の中で酸素を運搬する重要な役割を果たしています。健康診断の血液検査にもヘモグロビンの項目がありますから、身体の健康状態を知るために必要なものだということがわかるかと思います。

ALAは、グリシンとスクシニルCoA、ビタミンB6から作られています。ALAが8個繋がると「プロトポルフィリン」となり、さらに鉄がくっつくことでヘムとなるのです。

通常であれば、ALAのような水に溶けやすい物質は細胞に入り込むことができません。しかし、ALAはアミノ酸が二つ繋がったジペプチドと同じくらいの大きさと構造なので、細胞の中に入り込むことができて身体で使われやすいのです。

私たちはエネルギーを主に細胞の中にあるミトコンドリアの中で作り出していて、エネルギーを作り出す際には酸素を運ぶヘムが必要とされます。ヘムが足りないと身体に酸素を運べなくなりエネルギーを作ることができないため、疲れやすくなってしまうのです。

貧血対策のためにヘム鉄のサプリメントが販売されていますが、ただの「鉄」ではなく「ヘム鉄」である理由がわかりますよね。

ALAのサプリメントとしての効果は?

鉄が酸化することはよく知られています。これが体内で起こると、さまざまな病気の原因となる活性酸素が発生します。

ヘム鉄も私たちが呼吸をすることで活性酸素を作り出しますが、過剰なヘムを分解する、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)と呼ばれる酵素があります。ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)はヘムを分解するとビリルビンや一酸化炭素を作り、それらが逆に活性酸素を除去してくれるのです。

活性酸素はさまざまな病気の原因になっています。歯周病もその一つですから、5-ALAを摂取することによって予防が期待できるかもせれません

他にも、抗ウイルス効果が認められており、インフルエンザやHIVなどのウイルスの抗ウイルス効果の調節に関与していることがわかっています。*1*2

少し興味がでてきましたか?

普段の食生活で摂取するには

「サプリメントで摂るのは…」と抵抗がある方は、普段の食生活からも摂取することができます。

具体的には、「黒酢」「イカ」「ほうれん草」を積極的に摂るようにしてみてください。これらは5-ALAが豊富に含まれている食品です。

黒酢はアミノ酸が豊富といわれていますし、ほうれん草は鉄分が摂れることで有名です。イカには銅が豊富に含まれているのですが、銅は血液の合成に必要な栄養素なので、納得できますね。

聞き慣れない名前のサプリメントだと、何か新しく発見された植物や合成されてできたものなのかと思うかもしれません。しかし、実は加齢により合成や活性が落ちているだけで、「もとから身体に存在している」ものを前回と今回で紹介しました。

次回は、私たちの身体では作ることができないけれど、とても大切なビタミンCについて解説します。

参考文献:
*1 Hemin activation ameliorates HIV-1 infection via heme oxygenase-1 induction J Immunol.2006 Apr 1;176(7):4252-7.
*2 DMO-CAP inhibits influenza virus replication by activating heme oxygenase-1-mediated IFN response Virol J. 2019 Feb 20;16(1):21. doi : 10.1186/s12985-019-1125-9.

チェアサイドの栄養指導 はじめの一歩

第1回 歯を守るための栄養指導
第2回 口腔内を診るときのポイント
第3回 口腔内症状と栄養素の関連性
第4回 サプリメントを効果的に使用するには?
第5回 なぜ口腔ケアに乳酸菌?
第6回 意外と知らないコラーゲンの基礎知識
第7回 いま話題のナイアシンの代謝産物「NMN」って?
第8回 ヘムの構成成分「5-ALA」って?