歯科食育士の視点から考える、歯にいい食事のポイント PART5 重陽の節句編

こんにちは。歯科衛生士の岡崎と申します。

歯科食育士やホワイトニングコーディネーターなどの資格も有しており、歯科界だけでなく幅広い方と情報共有ができれば幸いです。

口腔の健康は身体の健康のはじまりといわれています。そして、なにを食べるかの選択も等しく大切です。

患者指導においても、食に対する意識が高まれば、身体に対する意識も高まり、それは口腔環境への意識の高まりにもつながります。

この連載では、食品にどんな栄養素があり、どのような調理方法や組み合わせが効果的かなどについて、歯科食育士の視点からお伝えします♪

歯にいい食事のポイント PART5 重陽の節句編

歯にいい食事のポイント、第5回目のテーマは重陽の節句です。

5節句の最後を飾るのが重陽の節句。5節句の中で、もっとも数の大きい奇数(数)が並ぶことから「重陽の節句」と呼ばれたそうです。

  •  1月7日「人日(七草がゆ)」
  •  3月3日「上巳(桃の節句)」
  •  5月5日「端午(菖蒲の節句)」
  •  7月7日「七夕(星祭)」
  •  9月9日「重陽(菊・栗の節句)」

旧暦の9月9日は現在の10月中旬頃にあたり、菊や栗がさかんな頃です。平安時代の宮中では菊を用いた催事が執り行われたことから、「菊の節句」として広まっていきました。

また、江戸時代には庶民の間では、「栗の節句」として親しまれるようになっていったようです。

近年はほかの節句と比べると認知度が低いですが、今でも「お九日(おくんち)」として秋祭りが開催される地域もあります。

重陽の節句は邪気を払ったり、長寿を祈願する素敵な催事です。

今回は歯科衛生士がおすすめする重陽の節句の料理や調理のポイントをご紹介します。

歯科衛生士の視点から考える重陽の節句おすすめメニュー

① 栗ごはん

江戸時代に庶民の間で「栗の節句」として広まってから、重陽の節句の定番になった栗ご飯。栗は栄養価が高く、古くから日本人の食を支えてきました。

栗には加熱されても成分が壊れにくいビタミンCが含まれているため、調理方法の幅も広いです。また、糖の代謝を手助けするビタミンB1、B2などの栄養素や、不足すると味覚障害などを引き起こす亜鉛も豊富に含まれています。

② ナスの煮浸し

“九日(くんち)に秋ナスを食べると中風(ちゅうぶ)にならない”という言い伝えもあるほど、重陽の節句にはナスも定番の食品です。

* 中風:脳出血などによって起こる、半身不随や手足のまひなどの症状

ナスの9割は水分で、体を冷やす効果があるので夏バテ予防の食べ物としても有名です。そのほかにはビタミンB1、B2、カリウム、食物繊維が含まれています。

また、ナスの皮に含まれるアントシアニンの一種のナスニンには抗酸化作用があり、コレステロールを下げ、がんや動脈硬化の予防に役立ちます。

油で軽く炒めることでナスニンの栄養素が壊れにくくなり、色落ちもしにくくなるのでおすすめです。

③ 菊の酢の物

重陽の節句の主役は菊の花。不老長寿を祈願して菊酒を飲んだり、菊の花を浮かべた菊湯に入ったり、邪気を払う菊枕で就寝するなど、出番が盛りだくさんです。

普段、菊の花を身近に感じる機会は少ないと思います。この機会に菊の花いっぱいの重陽の節句を楽しんでみてはいかがですか?

菊の花は少し苦味のある上品な味、香り、そして食卓の彩りを楽しめます。鮮やかな色味と食感を残すために、お酢を加えてからサッとゆで上げるのがポイント

今回はさまざまな食感を楽しめるように、タコときゅうりも加えました。

酢の物以外にも揚げ物、お吸い物など幅広い用途があるのでぜひお試しください。

④ 小菊南瓜のサラダ

小菊南瓜は上から見ると菊の花に見えることから名付けられました。手のひらサイズの小ぶりな南瓜で、能登野菜のひとつでもあります。上品な甘味が特徴の南瓜になります。

南瓜にはビタミンC、ビタミンE、カリウム、食物繊維のほかに、体内に入るとビタミンAに変換されるβ-カロテンが多く含まれています。ビタミンAには、粘膜の強化や口腔乾燥を防ぐ効果もあります。

ビタミンEやA、β-カロテンなどの脂溶性栄養素は油に溶けることで体に吸収しやすくなるため、これらの栄養素を含む野菜を使用するときは、油を一緒に使用できるように工夫しましょう。

今回はマッシュしたかぼちゃにツナ、塩、こしょう、オリーブオイル、粉チーズを加えました。小菊南瓜は小ぶりなので、器としても簡単に使え、見栄えもかわいらしいです。

⑤ 桜とかぶのお吸い物

9月9日は重陽の節句とともに「後の雛」という風習もあります。3月3日の雛祭りに出す雛人形を再び重陽の節句の時に飾り、長寿や健康を祈願するというものです。

雛祭りの半年後にあたる重陽の節句に出すことで、大切な雛人形に虫やカビがつくことを防ぐという知恵も込められています。

桃の節句には愛らしい桃の花を飾り子供の成長を祈願し、菊の節句には可憐な菊を愛で長寿を祈願するということから、重陽の節句は“大人の雛祭り”とも呼ばれています。

春の節句と秋の節句が交わるこの日に合わせて、お吸い物も融合させてみました。

桜の塩漬けと菊花カブのお吸い物です。おだしの味を染みさせ、大人の雛祭りをイメージしました。

かぶの茎葉はβ-カロテンやビタミンC、鉄、カルシウムが豊富で、根には分解酵素のアミラーゼやビタミンCが豊富に含まれています。

茎葉はアクが強いので一度アク抜きが必要ですが、根の部分に含まれるアミラーゼが熱に弱い性質なので、栄養素を残す意味と食感を楽しむために、火にかける時間は少なめにすることがポイントです。

最後に

今回は5節句の中でも、近年あまりなじみのない重陽の節句におすすめのレシピをご紹介いたしました。

重陽の節句は旧暦9月9日ですが、新暦では1ヶ月時期がずれます。2021年の重陽の節句は10月14日です。

重陽の節句は5節句の中でも、もっとも大きい奇数(陽数)が重なり、節句の最後を締めくくる大変縁起の良い日です。

今年の秋は、重陽の節句を通して五感で秋を堪能してみてはいかがでしょうか?

歯科食育士の視点から考える、歯にいい食事のポイント

PART1 クリスマス編
PART2 ひな祭り編
PART3 こどもの日編
PART4 七夕編
PART5 重陽の節句編