お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」No7.フルーツの“甘さ”は歯や体に良いの?雑学編

こんにちは、お砂糖博士®︎です。おさトーークの時間がやってまいりました。

このコラムでは、皆さんの身近な「お砂糖」について、お砂糖博士®︎が自由に語ります。

お砂糖をとり過ぎ→むし歯は小さな子どもだって知っていますが、もう一歩二歩、深いお砂糖のことをお伝えします。

明日の臨床に直接役に立つか分かりませんが、明日の昼休みの雑談には役に立つでしょう(笑)。

前回までのおさトーークはこちら

No1.あなたは一日に何gの砂糖を食べていますか?
No2.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!菓子類編
No3.清涼飲料編 ①異性化糖について
No4.清涼飲料編 ②炭酸飲料について
No5.パン編
No6.乳製飲料の砂糖量

お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」No7.フルーツの“甘さ”は歯や体に良いの?雑学編

ぶどう、梨、りんご、柿、キウイフルーツ、桃、みかんも、店頭で見かけるようになりましたね。秋は多くの果物が旬を迎えます。

近年では品種改良も進み、どの「フルーツ」も甘くて美味しくなりました。みなさんもお好きなフルーツの一つや二つが、かならずあるのではないでしょうか?

お砂糖博士®︎の元にも、「フルーツの甘さは歯や体にいいのでしょうか?」「フルーツは子どもに与えて良いのでしょうか?」などの質問がよく届きます。

フルーツの糖分については、歯科医療従事者だけでなく、一般市民の方も疑問に思っている方が多いようです。

今回は皆さんのフルーツに関する疑問が解決できるように、お砂糖博士®︎が解説したいと思います。

フルーツ、くだもの、果実類、水菓子?言い方はいろいろ

いわゆるフルーツは食品分類上では「果実類」といいます。現在は一般的に「くだもの」といわれることが多いですが、古くは「水菓子」といわれていた時代もありました。

砂糖が庶民の間にも徐々に広まりはじめる江戸時代には「人が手を加えて甘く作った食べ物」を「菓子」というようになりました。同じ「甘いもの」でも「水菓子」と「菓子」は区別されており、どちらも間食の一つとして親しまれていました。

私たちの「フルーツ好き」は、今にはじまったことではないということですね。

語源を知るのは面白いですね。「水菓子」の歴史的な話の詳細は、こちらを参考にして下さい。

最近気になる放送用語「水菓子」-NHK放送文化研究所

日本人のフルーツの1日摂取量はどのくらい?

フルーツに関して面白いデータがあるので、ここで一つ紹介します。

こちらのグラフは「一人当たりの果実類の摂取量」の推移です。
(参照:農林中金総合研究所「果実の消費と生産の状況 ─ 生産の省力化が課題─」 農中総研 調査と情報,2020,第80号

引用:農林中金総合研究所「果実の消費と生産の状況 ─ 生産の省力化が課題─」 農中総研 調査と情報,2020,第80号
引用:農林中金総合研究所

2018年ではフルーツの摂取量は1日1人当たり96.7gであり、1日にバナナ1本、またはみかん1個というところです。これは、もっとも多かった1975年時の平均193.5gから半減しています。

このグラフから読み取れることは大きく二つあります。一つはこの20年間でフルーツの摂取量が減少していること、もう一つは高齢者ほどフルーツの摂取量が多いことです。

「いまは昔に比べてフルーツを食べなくなっている」ということをもう一歩深く考えると、フルーツを頻繁に食べる年配者の数が年々減る一方で、フルーツをあまり食べない若い世代が増えることにより、フルーツの摂取量が全体的に減っているとも言えます。

これには僕自身も強い実感があり、僕(1979年生まれ)が子供の頃、祖父や祖母(大正生まれ)は毎日フルーツを食べていました。

しかし今の僕は、フルーツは週に数回食べれば多い方で、まったく食べない週もあるほどです。皆さんの記憶や実感はいかがでしょうか?

フルーツの砂糖量の詳細に関しては次回のコラムで詳しく話しますが、フルーツの食べすぎで血糖値が下がらない、またはう蝕や酸蝕症が頻発するのは、年配者ほど可能性が高いことの背景がわかると思います。

僕の臨床経験でも、酸蝕症のお年寄りの話を伺うと「冬は毎年みかんを段ボールで箱買い」なんていう方が結構いると感じています。

皆さんも気になる患者さんがいましたら、こういう視点で年配者のフルーツの摂取量や頻度を聞いてみると何かがわかるかもしれません。

ジュースよりは“マシ”?フルーツの砂糖(糖類)は本当に多いの?

各果物の糖質量を比較した表をご覧ください。
(参照:病気にならない体をつくる糖質制限食の実践法-DIAMOND online

※フルーツにはデンプン(糖質)はほとんど含まれませんので、表のタイトル「果物の糖質量」の「糖質」は「糖類」を表していると考えて下さい。

果物の糖質量(引用:DIAMOND online)
果物の糖質量(引用:DIAMOND online)

比較のために…「○カ・コーラ」には100mlあたり11.3gの糖類が含まれています。

表の下から9番目のパイナップル(100g当たり糖質11.9g)より下のフルーツ、リンゴ、キウイ、柿、ブドウなどは軒並み「○カ・コーラ」よりも糖分濃度が高いということです。

フルーツには砂糖を含む「糖類」が大量に含まれていることがわかると思います。

とある糖尿病専門医主催のセミナーで「フルーツは砂糖漬けの野菜」、「フルーツ好きの高齢者の血糖値がなかなか下がらない」と聞きました。

フルーツに含まれる食物繊維やビタミンCなどの栄養素に期待して、甘くて美味しいフルーツを食べている方も多いですが、それなら「野菜を食べていれば充分」だそうです。

日本人がよく食べているフルーツのBEST3は?

さて、次にお砂糖博士®︎が気になって調べたのは、国内でどんなフルーツが消費されているのか?つまり「フルーツの消費量ランキング」です。
(参照:家計調査 / 家計収支編 二人以上の世帯 年報-総務省統計局

もし「フルーツ食べすぎに気をつけて下さい」と指導しないといけない場合、患者さんたちがどんなフルーツをよく食べているのか?を知っておく必要があるでしょう。

国内のフルーツ消費量の堂々の第一位はいったい何だと思いますか?

正解は「バナナ」です。

総務省統計局HP「家計調査年報(家計収支編)二人以上の世帯 」より、お砂糖博士®︎がグラフ化
総務省統計局「家計調査 / 家計収支編 二人以上の世帯 年報」より、お砂糖博士®︎がグラフ化

スーパーマーケットの「フルーツ売り場」を思い出してみると、多種多様なバナナが並ぶバナナコーナーはたしかに目立っていますね。「リンゴかミカンだろう」と思っていたお砂糖博士®︎としては意外な結果に驚きました。

一家庭あたりの消費量は、バナナは年間19.2kg、リンゴは10.2kg、柑橘類は17.2kg。パーセントで表すと、バナナは28%、リンゴは15%、柑橘類は24%と、三つの合計は実に67%を占めます。

この3種が「日本の消費三大フルーツ」といえるでしょう。

いちご、ぶどう、梨、メロン、桃なども甘くて糖類の量は多いのですが、幸いなことに?これらのフルーツは季節限定でやや高級なため、食べすぎは起きにくいといえます。

患者さんの「フルーツ食べすぎ」を指導するとしたら、まずバナナ、リンゴ、柑橘類の「消費三大フルーツ」に注意が必要ということですね。

さらにここでちょっと考えていただきたいのですが、バナナはほぼ100%輸入品です。

リンゴやみかんは国産品の流通が多いはずなのに、消費量ではバナナが一番多い。野菜は当然国産の消費量が多いのは分かると思いますが、フルーツはそうではないのです。

ゴリラを見習え!?我々「人類」はフルーツ摂りすぎ?

バナナ、リンゴ、みかんで年間36.4kgも食べているなんて、「動物園のゴリラじゃないんだから」って思ったそこのあなた(笑)。

実は、動物園のゴリラの餌は野菜中心であり、フルーツはほんの少ししか与えられません。

上野動物園のゴリラの餌の一例の写真を見てください。キャベツ、キュウリ、味噌、リンゴ、落花生、レーズン、煮干し、プルーン、サツマイモ、ポップコーン、ヨーグルト、プチトマトと、野菜中心のとてもヘルシーな食事です。
(参照:祝ゴリラの赤ちゃん誕生!体験メニュー「モモコのヘルシーランチ」販売中-東京ズーネット

上野動物園のゴリラの餌(引用:東京ズーネット)
上野動物園のゴリラの餌(引用:東京ズーネット)

考えてみれば、自然界の中でフルーツに出会う機会は滅多にないでしょう。かつては貴重で高級品だったフルーツは、20世紀の資本主義にのっとり大量生産大量消費時代を迎えました。

数ある生き物の中で、これほどたくさんのフルーツを摂取しているのは、歴史的みても私たち「現代の人類だけ」といっていいかもしれません。

教えて!お砂糖博士®︎Questionコーナー

野菜を食べてくれない子どもにビタミンを摂らせるには、フルーツかストレートの野菜ジュース、どちらの方が良いのでしょうか?

「子どもの野菜食べない問題」について、親御さんは常に心配されていると思います。

しかし、まず考えていただきたいのは、不足していると心配されているビタミンや食物繊維などの栄養素を多く含むと考えられている「その野菜」が、その子にとって今本当に必要なのか?ということです。

2022年に調査された「子どもの好きな/嫌いな野菜ランキングトップ10」をご覧下さい。
(参照:8月31日は【野菜の日】! 「2022年度 野菜と家庭菜園に関する調査」-タキイ種苗株式会社

子どもが好きな野菜トップ10と嫌いな野菜トップ10(引用:タキイ種苗株式会社)
子どもが好きな野菜トップ10と嫌いな野菜トップ10(引用:タキイ種苗株式会社)

唐辛子はさておき(なぜこれがランキングに…?)、色が青くて苦味や臭みの強いゴーヤ、セロリ、春菊、ピーマンが子どもの成長に不可欠なものなのか?大人の私たちだってだって毎日これらの野菜を食べろ!と言われたらゲンナリして健康を害するかもしれません(笑)。

重要なのは、どのような野菜も親が「美味しい」と思って食べる姿を自然に子どもに見せること。そうすることできっと子どもたちも将来さまざまな野菜を食べられるようになるでしょう。

一方で「子どもの好きな野菜ランキング」で、じゃがいも、さつまいも、トマト、とうもろこし、枝豆が上位にランクインしている通り、子どもは栄養豊富なでんぷん質や自然な甘さが大好きです。これらの喜んで食べられる野菜を日頃しっかり食べさせることの方が、栄養的にもよっぽど重要なのではないかと思います。

前置きが長くなりましたが、現在健康で元気なお子さんであれば、フルーツと野菜ジュースのどちらも本物の「野菜」の代わりに与える必要はないと考えて差し支えありません。

離乳食のレシピでバナナやりんごを使ったものがよくでてきます。乳児に与えない方がいいのでしょうか?

バナナやリンゴの砂糖(糖類)の多さは次回詳しくお伝えしますが、大人ですら警戒したいレベルの糖分量です。そのため、乳児の離乳食としては甘すぎるので推奨できません。

強い甘さに慣れてしまうと、甘いものを好むようになるなど、その後の味覚形成に影響を与えかねません。

やはり米などの「穀物」や芋類その他の野菜などの自然な甘さのする離乳食をおすすめします。

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「フルーツの甘さは歯や体にいいのでしょうか?」「フルーツは子どもに与えて良いのでしょうか?」という疑問に関して言えば…。

糖類の多い「フルーツはあくまでも嗜好品の一つ」という位置づけが妥当だと思います。

そのフルーツの旬の時期に、誰かからいただいた時に、それらを家族で分けて食べる分には歯にも体にも悪い影響はないと思います。けして、毎日食べる必要はない訳ですね。

ただし、フルーツには植物の実ですので、清涼飲料や菓子などと違って食物繊維やビタミンなどその他の栄養成分が豊富に含まれています。

食物繊維は糖類の吸収を抑え、血糖値の上昇を抑える働きもあり、また物理的に歯をこするため、歯垢除去の効果も多少期待できます。また、フルーツはよく噛んで食べることにより、満腹感や満足感も感じられます。

お菓子やジュースなどの「加工食品」をガブ飲みやドカ食いすることと比べると、適度にフルーツを食べることはずいぶんマシです。「加工食品の代用品として、時にはフルーツを上手に利用する」くらいのつもりで付き合うのが良いのではないでしょうか。

次回はフルーツについての各論にあたり、バナナ、リンゴ、みかんなどの身近なフルーツ含まれる糖類の内訳などもう少し具体的な話をします。さらに、「フルーツ100%ジュースは体に良いのか?」という疑問についても解説したいと思います。

それでは次回もお楽しみに!

お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」

No1.あなたは一日に何gの砂糖を食べていますか?
No2.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!菓子類編
No3.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!清涼飲料編 ①異性化糖について
No4.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!清涼飲料編 ②炭酸飲料について
No5.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!パン編
No6.ヤクルトは健康?乳製飲料の砂糖量
No7.フルーツの“甘さ”は歯や体に良いの?雑学編