歯科衛生士が妊娠したらやるべき5つのこととは?産休手当や働き方について詳しく解説!

女性にとって「妊娠」「出産」は、幸せなことである反面、働き続ける上では大きな壁の一つになることでもあるかと思います。

特に歯科衛生士の場合は、「この歯科医院は産休を取らせてもらえるのかな?」「いつまで働けるかな?」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、医療法人と個人の歯科医院で2回の産休を取得し、現在2児の母となった私が、「歯科衛生士が妊娠したらやるべき5つこと」について紹介していきます。

気になる産休手当や働き方についても体験談を交えて解説していきますね。

産休前の悩みが解消できる内容になっているので、現在妊娠している方、もしくは妊娠を考えている歯科衛生士の方はぜひ参考にしてみてください。

歯科衛生士は妊娠したらいつまで働ける?

そもそも女性は、妊娠したらいつまで働けるのでしょうか?

妊娠を機に歯科衛生士を辞める方もいますが、正直なところ、妊娠・出産・育児には相当なお金がかかります。

そのため、産休といわれる期日までしっかり在籍し、手当を受け取っておくのがおすすめです。具体的な理由は、以下の2点です。

  1. 生活水準を落とさず、育児用品などの追加出費にも対応できる
  2. 万が一働きたくなった時でも、保育園などに入りやすい

妊娠してお腹が大きくなってくると、患者さんへの施術がしづらくなったり、お腹が張ったりするなど、困難なこともでてきます。

ですが、「つわりがひどければ有給をとる」「お腹が張ったら休憩室で休む」などの対策をしっかりと行い、体調に気をつけて勤務すれば、歯科衛生士でも産休間近まで働くことができます。

一方で、職場の環境やスタッフの配慮のなさなどが原因で、働きづらさを感じることもあるかと思います。

そういった時に「迷わず退職する」という選択肢を選ぶ方もいるかと思いますが、今後のメリットを考慮した上で「割り切って働く」という選択肢を選ぶのも一つの手です。

産休期間はいつからいつまで?

一般的に産休といわれる期間は「産前6週間~産後8週間」です。出産予定日は40週0日が基本となるため、ほとんどの方は妊娠34週から産休となります。

しかし、早産のリスクが高い多胎妊娠の場合は「産前14週間から産後8週間」の期間が産休期間となるため、妊娠26週から産休を取得することができます。

歯科衛生士が妊娠したらやるべき5つのこと

それでは、歯科衛生士がスムーズに産休を取得するために必要なステップを、以下の5つに分けて解説していきます。

  1. 職場へ妊娠報告をする
  2. 産休について事前に相談する
  3. 後任スタッフへの引き継ぎリストを作成する
  4. 患者さんに後任の歯科衛生士を紹介する
  5. マタニティ白衣の準備

どこの歯科医院で勤務していても共通することなので、すべてチェックしていきましょう!

① 職場へ妊娠報告をする

まずは職場への妊娠報告です。

経験上、妊娠がわかったら早めに伝えることをおすすめします。その理由は二つです。

一つ目は、つわりなどの症状が妊娠初期に現れた場合、「万が一の時はお休みをいただくかも」と事前に一言伝えておくことで、院長先生やスタッフが働きやすい環境を作ってくれる可能性があるからです。

二つ目は、妊娠期の予期せぬトラブルを防ぐため。過去に起きてしまった先輩歯科衛生士のトラブルをご紹介します。

当時私が勤めていた職場は医療法人の歯科医院で、若いスタッフが多かったからか、産休取得の事例がありませんでした。

私の先輩だった歯科衛生士は当時妊娠していましたが、妊娠のことを誰にも報告しておらず、途中で切迫流産になり入院してしまいました。

誰にも報告できなかった理由は、「休みが取れない忙しい環境と責任感から言い出しづらかった」とのことでした。

先輩は、半年間の絶対安静という入院生活を送った末、無事に出産することができました。しかし、早めに報告しておけば少しは早退やお休みが取りやすい環境になり、入院するまでにいたらなかったのかな?と、私は感じてしまいました。

私もそうでしたが、妊娠した側としては「いつ報告しよう…迷惑かけないかな?」と不安になりがちですよね。

ですが、一緒に働いているスタッフからすると「おめでとう!無理しないで休める時は休んでね。」と思ってくれることがほとんどです。

院長先生の場合は、「おめでとう!」と言いつつも「(妊娠か…これからどうするか…)」と思ってしまう方も確かにいるかと思います。

ただ、スタッフの妊娠がわかることで、新しいスタッフの確保や産休に入るまでの新人教育も必要なため、結果として早めの報告は歯科医院側にもメリットとなります。

「妊娠初期はまだ育つか分からないし、安定期に入るまでは言いたくない」と考える方もいるかと思いますが、最低でも、院長先生や労務の方などの限られた人への報告は早めに済ませておきましょう

② 産休について事前に相談する

どんな歯科医院でもスタッフに産休を与えることは義務化されているため、働く期間や産後の働き方については明確に相談しておきましょう

先ほどお伝えしたとおり、出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)まで働くことをあらかじめ伝えておくのがおすすめです。

医療法人の歯科医院であれば、労務の方が中心となって手続きを進めてくれますが、個人の歯科医院になると、基本は院長先生がすべての手続きを行う必要があります。

院長先生は日々の診療だけでも大変な身なので、手続きなどを丸投げせずに、「○月○日まで働きたいと思っています」というように、今後のスケジュールを明確にした上で相談しましょう。

また、産後はどのような働き方ができるのかを事前に相談しておくと、復帰後の予定も立てやすく、双方にとってメリットになります。

③ 後任スタッフへの引き継ぎリストを作成する

自分が担当している業務については、産休に入る前にすべてリストアップしましょう。

たとえば、以下のような内容です。

  • 歯科材料の注文先の指示
  • 担当患者さんの引き継ぎリスト
  • その他に担当していた業務(レセプト業務や業者さんとのやりとりなど)

上記のような業務についてはリスト化し、誰にでもわかるような形で後任のスタッフへ引き継ぎましょう。

私の場合は、全顎自費治療をしている患者さんや、すべての矯正患者さんの管理、歯科材料の発注などを担当していたため、複数のスタッフに振り分けて引き継ぎをお願いしました。

主な引き継ぎ内容については、以下のようにリストアップしておくとスムーズです。

  • 患者さんごとの治療進行状況や特徴(神経質・怖がり・お話好きなど)
  • 矯正患者さんの情報(治療期間・メインテナンス時期・模型の保管場所など)
  • 歯科材料ごとの発注先を表で作成

具体的な情報がないまま患者さんを引き継いでしまうと、「いつもの人とやり方が違う」というような、患者さんと後任歯科衛生士の間でトラブルが発生してしまう可能性もあります。

担当していた患者さんが「自分が休職している間にこなくなってしまった」ということにならないために、また後任の歯科衛生士の負担をできるだけ減らせるように、引き継ぎリストは早めに作成しておきましょう。

④ 患者さんに後任の歯科衛生士を紹介する

産休が近くなったら、患者さんに自分が産休でお休みすることを伝え、その場で後任の歯科衛生士を紹介しましょう。事前に顔を合わせて紹介することで、双方の不安が軽減されます。

特に自分が先輩の場合、後輩の歯科衛生士はものすごくプレッシャーに感じますよね。反対に、先輩へ引き継ぐ場合は少し気まずい感情もあるかもしれません。

「いつ戻ってくるの?」「赤ちゃんは女の子?男の子?」など、つい自分の話題になってしまいがちですが、最後の日はなるべく、後任の歯科衛生士と患者さんがコミュニケーションをとれる雰囲気づくりができると良いでしょう。

⑤ マタニティ白衣の準備

妊娠後期になるとお腹が一気にでてきます。

白衣の種類にもよりますが、産休直前は今まで着用していたものが入らなくなる可能性が高いです。

マタニティ用の白衣を購入できるところもありますが、6ヶ月間の無料レンタル品といったものもあります。

少し白衣がきつくなってきたと感じてきた時点で、早めに注文しておいても良いかもしれません。

歯科衛生士の産休期間にもらえるお金は2種類ある!

産休期間にもらえるお金には「産休手当」と「出産育児一時金」の2種類があります。

産休手当とは、出産を理由に働けなくなった女性に対して、家計への負担を軽減するためにもらえる手当のことです。別名「出産手当金」ともよばれます。

産休手当には明確な支給期間や条件があり、手当自体は歯科医院が支払うものではなく、加入している健康保険から支給されるものです。

そのため、「今の職場で本当にもらえるのかな?」と心配する必要はありません!

もらえる期間としては、産前6週間~産後8週間、多胎の場合は産前14週間〜産後8週間の産休期間が対象です。

また、出産育児一時金とは、出産時にもらえるお金のことを指します。産休手当と混同しやすいですが、受給期間や支給される金額が異なります。

これら2種類のお金は、職場の健康保険に加入していれば、基本的にどちらも支給されることになりますが、条件によっては支給されない場合もあります。

まずは、産休手当の条件から確認していきましょう。

産休手当がもらえる条件とは?

産休手当がもらえる条件は加入保険や雇用形態によって異なります。

勤務先の健康保険に加入している正社員・パートの場合

勤務先の健康保険に加入している場合、正社員やパートなどの雇用形態に関わらず、産休手当は支給されます。

具体的な条件は、以下の4つです。

  1. 社会保険に加入している
  2. 扶養ではなく、自分で社会保険料を支払っている
  3. 産休期間中に給与が支払われていない、もしくは給与が産休手当よりも少ない
  4. 妊娠4ヶ月(85日)以降で出産している(早産・死産・流産・人工中絶も含まれる)

重要なポイントは、「勤務先の社会保険に加入し、自分で保険料を支払っている」ということです。条件を満たしていれば、アルバイトであっても産休手当が支給される対象になります。

歯科医師国保に加入している場合

歯科医師国保の場合は、加入してから継続して1年経った日の翌日からが支給対象となります。
(参照:出産手当金-全国歯科医師国民健康保険組合

つまり、社会保険のように「加入していればもらえる」というわけではなく、1年以上加入していないと産休手当が支給されません

また、支給額については、地域によって異なるものの、産休期間中に働いていない加入者に対し「1日1,500円」と上限が決まっています。

通常の国民健康保険の場合は、産休手当がもらえない=対象外となるため注意しましょう。

産休手当の計算方法

全国健康保険協会によると、産休手当の支給額の計算方法は、以下の通りです。
(参照:出産で会社を休んだとき-全国健康保険協会協会けんぽ

標準報酬月額 ÷ 30日 × 2/3 = 支給日額

「標準報酬月額」というのは、基本給の他に、役職手当や賞与なども含まれます。

このように雇用形態や歯科医院の給与によって支給日額が変わってくるので、正確な金額は院長先生や労務の方に事前確認しておくのが良いでしょう。

申請した産休手当はいつもらえるの?

申請した産休手当は、約2〜4週間後に支給されます。

これは基本的に勤務先の歯科医院が申請してくれますが、申請する本人が行わなければいけない場合もあります。

申請についても、どちらが行うのかを事前に相談し、明確にしておきましょう。

出産育児一時金は基本的に一律42万円!

出産育児一時金は社保・国保・歯科医師国保など、どの健康保険に加入していても支給されます。

しかし、「妊娠4ヶ月以上で出産」という条件があります。

これは考えたくないことかもしれませんが、妊娠4ヶ月以降の出産であれば、流産や死産、人工中絶を行った場合も受け取れます。

もちろん予定通りの出産で、帝王切開になった場合もOKです!

支給額は、赤ちゃん1人につき42万円もらうことが可能です。多胎の場合は2倍、三つ子なら3倍の金額になります。

出産育児一時金は直接支払制度が便利!

出産育児一時金は出産した日から申請が可能なため、産後に手続きするのが一般的でしたが、最近では多くの医療機関で「直接支払制度」という手続き方法が導入されています。

直接支払制度は、出産する医療機関で申請が可能です。

出産前に申請しておくことで、医療機関が出産育児一時金の42万円を健康保険に直接請求してくれるため、本人は退院時にその差額分を支払うだけで済みます。

私も出産前に医療機関から「直接支払制度にしますか?」と聞かれ、事前に申請したことで、手続きの手間なく差額分のみを支払うだけで済みました。

一方で、出産費用をクレジットカード払いにするとポイントが貯まるため、全額支払える費用があれば、「産後に自分で申請する」と選択する方もいるようです。出産費用は、正常分娩で30〜70万くらいが一般的なので、クレジットカード払いができればかなりポイントが貯まりますよね。

また、出産費用が出産育児一時金を下回った場合は、差額分を健康保険に請求することができます。

仮に出産費用が30万円だった場合は、差額分の12万を追加で請求できるので、忘れずに請求しておきましょう。

直接支払制度ができない場合はどうする?

直接支払制度が便利ではあるものの、その制度自体を設けていない医療機関もあります。

その場合は、出産から2年以内に手続きすることで、出産育児一時金を受け取ることができます。出産時に加入していた健康保険に申請しましょう。

産休中に歯科医院を退職・転職しても産休手当は受け取れる?

「産休までは働いたけれど、産後も復帰するかは悩むところ」「旦那さんの仕事の都合で転居が必要かも」など、今後の予定によって退職や転職をすることもあるかと思います。

結論から言うと、産休手当も出産育児一時金も、復職を約束して支給されるお金ではないため、返還する必要はありません

出産後はさまざまな環境が変化するため、退職や転職を考える歯科衛生士も少なくありません。

まずは、今回お伝えした「妊娠したらやるべき5つのこと」を責任もって行い、円満に産休を迎えられる働き方を心がけましょう。

歯科衛生士でも産休期間まで働ける!今回のまとめ

妊娠期は、体調面においても産後の生活面においても、心配ごとがたくさんでてくる時期です。

しかし自分一人の体ではないということを自覚し、無理をせず、周りのスタッフの協力に甘えることも大切です。

どんな歯科医院でもスタッフに産休を与えることは義務化されているため、将来の子どものためにも、ぜひ産休制度を活用しましょう!