みなさまこんにちは、歯科衛生士の柏井伸子です。
歯科医師や歯科衛生士のみなさまはチェアサイドで、歯科技工士のみなさんはラボワークにおいて、飛沫や粉塵が飛散する環境での業務となります。
そのため、歯科医院においてエアロゾルおよびバクテリアルエアロゾル(微生物を含んだ飛沫)対策は必須です。
そして、感染予防には個人防護具(Personal Protective Equipment:以下PPE)を適切に使用し、汚染された環境には適切な材料と方法で対処しなければなりません。
前回まではこちら
第1回 使用済み器材の適正管理〜洗浄〜
第2回 使用済み器材の適正管理〜滅菌〜
2:そのタオル、洗濯機で洗うだけで済ませていませんか?
3:汚染域への対応
4:まとめ
1:感染予防のためのPPE適正使用
厚生労働省から出されている「一般歯科診療時の院内感染対策に係る指針」においては、標準予防策の遵守が提唱されており、医療従事者の感染予防にはマスク・ゴーグル・フェイスシールドなどの適切なPPEの使用が推奨されています*。
筆者はこれまで2.5倍のルーペ付きゴーグル・マスク・グローブを使用していました。
しかし、飛沫対策としては不十分であるため、キャップ・ビニール製エプロン・フェイスシールドを追加するようにしました。
*参考文献:
厚生労働省(2019)「一般歯科診療時の院内感染対策に係る指針(第2版)」参照2020-11-14
John A.Molinari 他(2010)『Practical Infection Control In Dentistry』Wolters Kluwer Health.
みなさまの中には5倍以上のルーペをご使用の方もいらっしゃると思います。
高倍率になればレンズが長くなり、フェイスシールドにあたって遮断性が低下することもあります。
その際には、ワイヤーが上下に2本ついているマスクを選択し、ギャザーを大きく開いてオトガイ部まで完全に被覆するようにします。
PPEをさらに効果的に使用するために、ちょっとした工夫を加えます。
まずマスクですが、鼻の部分のワイヤーをフィットさせる際には、片手ではなく必ず両手で均等な圧力で抑えるようにします。これにより、かたよった空隙ができにくくなります。
また、ビニール製エプロンは胸元が開いてしまうものがありますので、その場合は首の後ろで結んで調整しましょう。
2:そのタオル、洗濯機で洗うだけで済ませていませんか?
患者さんの顔面への飛沫対策として、布製タオルをご使用の施設も多くあると思います。
患者さんから「このタオルは、どうやって消毒するのですか?」と質問されたり、言葉にしなくても、そう感じている方がいらっしゃるかもしれません。
筆者は、患者からの意見を取り入れ、布製のタオルから未滅菌の清潔なディスポーサブル覆布に変更しました。
コストを考慮すると、ディスポーザブル覆布の導入は難しいかもしれません。
その場合、せめて洗濯する際に、次亜塩素酸ナトリウムを希釈して使用するなど、塩素系漂白剤を併用することをおすすめします。
3:汚染域への対応
使用後のユニット周囲への対応においてまずやるべきことは、感染性を有する病原性微生物が存在する汚染物の付着範囲の特定です。
患者さんが座っていらした部分やラッピングした箇所を除き、その外周やライトハンドル・コントロールパネル・バキュームやハンドピースのホースが汚染されます。
薬液による消毒は重要ですが、死滅した微生物の死骸がエンドトキシン(内毒素)となり、かえって障害を誘発する危険性があります。
この病原性を有する汚染物を根こそぎ除去し、同時に消毒することができれば非常に効率的です。
そこでおすすめするのが、マイクロファイバークロス(以下MFC)と消毒薬を併用する方法です。
元々メガネ拭きとして使われていたものを医療用に転用した製品が出されており、極細繊維の間に汚れを閉じ込めます。
湿潤させるとさらに拭き取り効果が高まるため、筆者は消毒用アルコールを併用しています。
使用に際しては、一方向に軽く圧接しながらゆっくりと拭きあげるようにします。
4:まとめ
感染対策には、コスト管理を行いながら設備を充実させることも必要で、その代表例が口腔外バキュームでしょう。
しかしながら、身近な飛沫対策としては、術野に近い口腔内でのバキュームを確実に行うべきです。
そのためにはバキュームテクニックを磨き、口腔外への飛散を抑えるように工夫する必要があります。
まずはスタッフ全員で現状を認識し、できることから対処していくことからはじめてみませんか?
歯科医院における感染管理
第1回 使用済み器材の適正管理〜洗浄〜
第2回 使用済み器材の適正管理~滅菌~
第3回 使用済み器材の適正管理〜環境設定〜
第4回 手指衛生