歯科衛生士のみなさんは、日頃どんな方法で勉強していますか?
歯科衛生士向けの月刊誌や本を読む、講演会やセミナー、学会に参加するなど、さまざまな方法があると思います。その中にはたくさんの「参考文献」が記載されているかと思います。
ところで、その「参考文献」について調べたことはありますか?
「文献」や「論文」と聞くと、むずかしそうなイメージがあると思います。
しかしよく調べてみると、私たち歯科衛生士にとって興味深い資料がたくさんあります。
このシリーズでは、歯科衛生士の方に役立つおすすめの論文を紹介していきます!
歯磨剤の使用がプラーク除去に効果的であるかを調べた論文
今回解説するのはこちらの論文です。
歯磨剤の使用はプラーク除去に効果がある?システマティックレビュー
『Journal of Clinical Periodontology』
システマティックレビューとは、さまざまな論文をくまなく調査し、質の高い研究のデータを、できるだけ偏りをなくして分析した論文のことを指します。複数の論文を統合した研究だけに、科学的な根拠は強いとされています。
この研究は、2016年までに発表された、プラーク除去における歯磨剤の効果について調査したデータを大量に集め、信頼性の高いものだけを抽出し、その結果を分析したものです。
どんな方法で調べている?
この論文では、さまざまなデータベースを調査し、その中でも、全身的に健康な18歳以上の被験者を対象とし、信頼性の高い分析を行っている10本の研究結果を選択。
その結果をさらに分析し、歯磨剤の効果について調べています。
歯磨剤は機械的なプラーク除去には効果がない?!
集計結果によると、歯磨剤を使用した場合、平均49.2%のプラークが除去されました。一方で、歯磨剤を使用しない場合でも、平均50.3%のプラークが除去されました。
今回の研究で調べたほとんどの論文では、歯磨剤の使用による付加的な効果は示されなかったようです。
また、ブラッシング後のプラークスコアを分析しても、歯磨剤使用の有無に、有意差はありませんでした。
* 有意という言葉については、こちらの記事で説明しています。
(参照:歯科衛生士向けおすすめ論文 No.1「歯ブラシとフロス、どっちから先に使うべき?」)
この研究に対する考察
今回のレビューでは、歯磨剤使用の有無にかかわらず、プラークの除去量は変わらないという結果が出ました。
しかし、この研究が着目しているのはプラークの除去率のみというところがポイントです。
歯磨剤には、フッ化物やイソプロピルメチルフェノール、グリチルリチン酸など、歯や歯肉にとって良い効果をもたらす成分が豊富に含まれています。また、フッ化物入りの歯磨剤を使用すると、う蝕になりにくくなるといった研究結果もたくさん出ています。
そのため、歯磨剤の使用は、プラーク除去のためだけに行っているわけではないということを、念頭においておく必要があるのではないかと思います。
う蝕や歯周炎といったリスクに応じて、それぞれの患者さんに適切な歯磨剤をおすすめすることができるといいですね♪
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いかがでしたか?
毎日同じ環境で働いていると、「歯科医院での当たり前」が、自分の中の「歯科衛生士としての当たり前」になっていることがあります。
自分が行っている業務に自信を持つため、客観的な視点で、臨床現場に活かせる知識を身につけられるよう、日々学んでいきたいものです!
歯科衛生士向けおすすめ論文
No.1「歯ブラシとフロス、どっちから先に使うべき?」
No.2「ストレートVSアングル どっちの歯間ブラシを使うべき?」
No.3「スケーリングで削られてしまうセメント質はどれくらい?」
No.4「スケーリング前に行うブラッシングの効果は?」
No.5「歯磨剤の使用はプラーク除去に本当に効果的なの?」