“予防歯科の先進国”と呼ばれ、歯科衛生士が憧れる国の一つでもあるスウェーデン。
スウェーデンの歯科衛生士資格保持者は約4,000人で、そのほとんどが現役で就業しています。
国としての医療制度が整備されているだけでなく、歯科衛生士が一生働き続けていきたいと思える魅力はどこにあるのでしょうか?
前回に引き続き、今回もスウェーデンの歯科医院についてお伝えしようと思います。
前回は公立のデンタルクリニックについてお伝えしました。
今回は私立のデンタルクリニックについて詳しく説明していきます。
(参照:予防大国、スウェーデンの歯科衛生士事情 第7回)
私が訪れたマルメ市内のクリニックは、現在設立8年目の私立のデンタルクリニックで、歯科医師が6人、歯科衛生士が5人、またデンタルナースという職業の方が12人いました。
デンタルナースとは、専門学校に1年通いトレーニングをして、充填やTeCを扱うことができるプロフェッショナルな存在です。
こちらのクリニックでは、6人の歯科医師それぞれが歯科衛生士1人、デンタルナース2人と組んで自分のグループを持っています。また、歯科医師はチェアを2台、歯科衛生士は1台が与えられているとのことでした。
勤務形態は、朝7時から昼13時までと、昼13時から夜19時までというように2交代制で、1つのグループは1日に6時間ずつ働くという形態をとっているそうです。日本でいう早番と遅番のようなものです。
患者数は1日約100人来院。歯科衛生士1人あたり7~8人の患者さんを診るようです。
チェアタイムは基本50分なので、公立のクリニックよりも1人の患者さんに時間を長くかけられるということが私立のクリニックのメリットとのことでした。(公立は1人当たり30~40分のチェアタイム)
また、スウェーデンならではの習慣で、毎日11時と15時にフィーカというお茶の時間を設けていました。
その時間はスタッフ全員がコーヒーやお菓子を食べて小休憩をとり、リフレッシュしてまた診療に臨むという習慣があるようです。
ストックホルムの私立のデンタルクリニックでは、実際の臨床現場も見学することができ、メインテナンスの一連の流れをみてきました。
こちらのクリニックの場合、メインテナンスを受けると、1回につき約12,000円~13,000円の費用負担が発生します。
前回の記事でお伝えしたように、スウェーデンでは、年間の治療費35,000円までは患者がすべて自己負担します。
メインテナンスの内容としては、プロービング、超音波スケーラーによるスケーリング、歯間ブラシを用いた口腔内清掃、根面のデブライドメント、歯面研磨という流れでした。
実際に臨床現場を見て感じたことは、スウェーデンと日本で行われている衛生士業務の質や歯周治療の方法に、特別大きな違いはないということです。
私たち日本の歯科衛生士が毎日行っている業務は決してレベルの低いものではなく、日本の歯科衛生士の技術力はスウェーデンの歯科衛生士にも決して劣らない!と思います。
向上心があり、技術力の高い歯科衛生士は、日本全国各地にいます。
日本とスウェーデンとでは、国の制度や、歯科衛生士の教育プログラムは大きく異なります。
しかし、“これからも現役で活躍し続けたい”、“一度現場を離れてもまた復職したい”と思う歯科衛生士が1人でも多くなれば、さらに歯科界が魅力的な世界になると思います。
私も1人の歯科衛生士として、今後も勉強することを忘れずに、自分自身の知識と技術を日々アップデートしていけるよう努めていきたいと思います。
8回にわたる連載、最後までお読みいただきありがとうございました。
予防大国、スウェーデンの歯科衛生士事情
第1回 歯科衛生士就業者数の比較
第2回 教育プログラムの違い
第3回 マルメ大学のカリキュラム①
第4回 マルメ大学のカリキュラム②
第5回 スウェーデンの歯科衛生士が読んでいる文献紹介①
第6回 スウェーデンの歯科衛生士が読んでいる文献紹介②
第7回 スウェーデンの歯科医院について①
第8回 スウェーデンの歯科医院について②