皆さんこんにちは!歯科衛生士の山本典子です。
前回は、歯科でも患者さんへの栄養指導は大切だというお話をしました。
今回は、どこを診て栄養不足などを判断していけばよいのか、栄養指導で診るべきポイントを解説していきます。
栄養指導における口腔内のチェックポイント
皆さんは、メンテナンスなどで患者さんの口腔内を診るとき、どこをみていますか?
プラークがどこについているか、出血はあるか、歯肉は腫れていないかなど診ていくと思いますが、実は、栄養指導をするときもまったく同じです!
そう言うと「え?じゃあ、ブラッシング指導をすればよいのでは?」と思うかもしれませんが、ではなぜ毎回ブラッシング指導をしても改善しない点があるのでしょうか?
しかも、患者さんから「いつも同じことを注意される」「気を付けて磨いているつもりなのに」と言われたことはありませんか?
そこで視点を変えてみましょう。
通常のブラッシング指導は、プラークを取り除く指導が主になっていますが、栄養指導を取り入れる場合は、「磨けていない」だけでなく、なぜ「現在の口腔内になってしまったのか」に目を向けます。
たとえば、通常プラークが付着していたら磨き残しを注意しますが、前回の来院から数日しか経過していないのに、プラークが厚く付着していたとします。
どうしてこの人のプラークは厚く付着しているのかな?
→糖質の多い食べ物・飲み物をたくさん食べているから?
→糖質ばかり食べたくなるのはなぜだろう?
→もしかしたらタンパク質や鉄が不足しているのかな?
…と、推理ゲームのように考えていきます。
次に、口内炎の場合、「頬粘膜を噛んでしまった」としましょう。
歯列不正が原因の場合もあれば、急いで食事をしたためかもしれません。それに、「患者さんの体重が増えた(体重増加にともない頬粘膜に贅肉がつきます)」可能性もあります。
その場合は、薬剤の塗布だけでは一時的に改善しても、繰り返す可能性が高くなります。
つまり、「いつも噛んでしまう」「最近、噛んでしまうようになった」という訴えがあった場合、患者さん自身は、原因を「歯並びや補綴治療をしたせい」と考えていたり、「たまにはそんなこともあるかな」程度に考えていたりしているかもしれません。しかし、実は生活習慣病に足を踏み入れている可能性があるということです。
他にも、
- プラークコントロールは悪くないが出血が目立つ
- 短期間で歯石になってしまう
- 知覚過敏が治らない
- 舌苔がいつも付着している
- プローブで少し歯肉に触れただけで痛みを訴える
- あまり咬合力が強くないと思われるのに骨隆起ができている
- 嘔吐反射がひどい
などは、日常的に対応している症状だと思いますが、実は栄養の過不足が原因となっている場合があります。併せてチェックしてみてください。
栄養指導の効果的なタイミング
歯科医院は、「歯を治すもの」と考えている患者さんが多いので、栄養の話をしても受け入れられないのでは?と不安になるかもしれません。
栄養指導は、患者さんから「いつも」「なかなか」「治らない」「困っている」などの言葉が出たときのタイミングが効果的です。
何度かブラッシング指導をしても改善がみられないとき、患者さんは「頑張って磨いているのに」と感じているでしょう。
そんな時に「磨いているのと磨けているのは違います!」と言っても、「責められている」と感じてしまいます。
そこで
と、患者さんを誉めながら別の可能性を伝えてみましょう。
これまでのブラッシング指導により口腔内は改善傾向のはずです。そして患者さん自身もそれに気が付いてくれていれば、信頼関係もある程度築けていると思いますから、「聞く耳」をもってくれるでしょう。
通常、ブラッシング指導時には、患者の既往歴、服用中の薬のチェックをして、その影響をお話していると思います。ぜひここで、栄養の過不足も多くの影響があることを伝えてみましょう。
はじめは自分の体調や食生活まで質問されたり指導されたりすることに、患者さんは驚くかもしれません。
しかし次第に、「自分を担当してくれている歯科衛生士さんは、しっかりした健康に関する知識を持っているのだな」と、信頼がアップすると思います。
次回は、具体的にいくつか例をあげて、なかなか治らない口腔疾患と栄養素の関係をお話しします。
チェアサイドの栄養指導 はじめの一歩
第1回 歯を守るための栄養指導
第2回 口腔内を診るときのポイント