杉並区の山下スマイル歯科で歯科助手をしている定光祐美です。
2019年11月に株式会社クロスフィールドが企画する北欧研修に参加しました。
当院では、「予防歯科とハイクオリティー歯科で美しい歯と健康を大切にします」という理念のもと、予防治療に力を入れています。
そのため、開業当初より院長をはじめ歯科医師、歯科衛生士が北欧へ行き、世界最先端の治療を学んできました。
今回初めて歯科助手が参加する機会をいただき、歯科衛生士1名、歯科助手3名で参加してきました。
北欧の歯科医院見学
1週間の北欧研修では、フィンランドとスウェーデンの2ヵ国に行きました。マルメ大学の見学やデンタルショー、Tepeの会社見学、そしてどちらの国でも公立・私立の一般的な歯科医院を数軒見学させていただくなど、充実した研修内容でした。
初めて訪れる北欧。
北欧の歯科医院については、以前より院内の勉強会などで聞いていましたが、実際に見学に行くと、日本との違いが大きくあることを知りました。
フィンランドとスウェーデンでは、国として口腔内環境の大切さを掲げています。
そのため、矯正治療の無償化、正しいフッ素やキシリトールの活用法など、どの歯科医院を訪れても、国のルールに基づき同じように指導を受けることができます。
そして、どこの歯科医院も共通して、ウォッシャーディスインフェクター、クラスBの滅菌器が最低2台はあります。
また、診療室はゆとりがあり、プライバシーがしっかり守られる個室です。他にも、消毒滅菌室や在庫室など、独立した部屋がありました。
待合室や診療室には、無駄なインテリアなどはまったくなく、常に清潔な状態がキープできるようにしてありました。
北欧における歯科助手の役割
北欧には、「歯科助手」にあたる職種として「デンタルナース(口腔保健士)」があります。
デンタルナースになるには、1年間専門の学校に行き、資格を取得する必要があります。
そのため、歯科医院で働きはじめる前から基本的な知識があります。縁上の歯石除去も可能で、日本の歯科助手とは少し業務内容が違います。
多くの歯科医院では、デンタルナースが消毒滅菌のスペシャリストとして、医院の器具をしっかりと管理しているそうです。
チェアタイムやリコール期間の違い
北欧の歯科医院では、患者様1人にかける定期健診の時間は、基本的に1時間です。
この時間には担当の歯科医師、歯科衛生士がしっかりとコミュニケーションをとる時間も含まれています。患者様も口腔内に対する意識が高く、セルフケアもきちんとされています。
また、リコール期間についても、日本のようにすべての方に3カ月、と決まった期間を案内するわけではなく、それぞれの患者様に合わせた間隔で定期健診を促しているそうです。
日本でも2016年よりSPTⅡ(安定期歯周治療)の算定が可能になり、今以上に予防治療が必要とされるといわれています。
当院でもかかりつけ歯科医機能強化型歯科医院として、患者様の生活背景や環境を知り、その方に合わせて二人三脚で口腔内を守っていく設備を整えていく必要があるなと実感しました。
高齢社会に向けて
今回の研修では、スウェーデンで訪問医療に携わる大手の会社であるOralCare社にも行きました。
私は北欧を訪れるまで、日本より税金が高い北欧では、高齢になると設備が充実した施設などで過ごすことが一般的だと思っていました。しかし、それは少し前のことだそうです。
スウェーデンでも高齢化が進み、施設が足りなくなってきて、今では自宅にてご家族と一緒に過ごされている方が増えてきています。
そのため、日本と同様、訪問歯科診療がとても大切な役割を担っているそうです。
定期的にプロが口腔内をチェックすることで変化が分かり、病気の早期発見にも繋がります。高齢になっても自分らしく楽しく生活するために、歯がしっかりと残っていることが大切だと改めて実感しました。
歯科医院に勤めていると、歯周病が全身の疾患と大きく関わっていることはよく聞きますが、まだまだ情報が患者様まで届いていないと、日々の診療の中で感じています。
口腔内に意識を向けることは、生涯にわたって全身の健康を維持することに繋がります。その事実を患者様にきちんとお伝えしていくこと。それが今後私にできることだと感じました。
日本の歯科助手だからできること
スウェーデンに滞在中、現地の歯科医師の先生方と夕食をとる機会があり、たくさんお話することができました。その中で印象に残っているエピソードがあります。
「患者様とのコミュニケーションをとても大切にしている」「しっかりと時間をとって患者様の話を聞きたい」。そのために、予約時間は1時間や1時間半とることもあるとのこと。
どこの国でもコミュニケーションをとることを大切にしているのだなと感じました。
一方で、今の日本の保険制度では、術者である歯科医師が、コミュニケーションをとるために一人の患者様に対してこれほどまでに時間をとっていると、赤字になってしまいます。
日本では、その部分こそ、歯科助手が大きな担い手となっていると感じています。
またスウェーデンでは移民を受け入れているため、街を歩いていてもさまざまな国の方がいて、さまざまな国の言葉が飛び交っていました。そのため、一般歯科で働くスタッフもいろんな国の方がいらっしゃるそうで、院内のコミュニケーションが大変です。
「グローバル」と言ってしまえばとても現代的に感じますが、言葉の違いはコミュニケーションをとる時に大きな壁になると思います。
そう考えると、日本ではまだまだ日本語でコミュニケーションをとることが圧倒的に多く、私自身、言葉の違いで困ったりしたことはありません。当院でもまれに外国の方がいらっしゃいますが、かならず付き添いの方が通訳して下さります。
北欧研修に参加し、日本と北欧との差に触れると、足りないところばかりに目がいってしまいがちでしたが、日本らしさや良いところも、改めて知ることができました。
日本語は素晴らしいです。細かな気持ちを伝える言葉がたくさんあります。
この研修を通して、院長やスタッフ、患者さんへの気遣いや相手への敬意を、もっと言葉にして伝えていこうと思いました。
最後に
北欧ではFIKA(フィーカ)というおやつタイムが10時と15時にあります。
オーラルケア社へ訪問した際にも豪華なフルーツやお菓子を用意して下さり、とっても美味しくいただきました。
こうした時間を取ることも、働く人たちにとって、より働きやすい環境にするためだそうです。
今回、素晴らしい学びの機会を与えてくださった、院長をはじめ山下スマイル歯科のメンバー、そしていつも当院へ通って下さる皆様に感謝しております。