みなさん、こんにちは!歯科衛生士の山本典子です。
近年、栄養指導の必要性が叫ばれていることから、「自分でも勉強しているけれど、どうやって患者さんへ説明したらよいのかわからない」という声をよく聞きます。
そこでこの連載では、私と患者さんのやり取りを会話形式でお伝えしたいと思います。みなさんが患者さんへ栄養指導をするときのヒントにしてみてくださいね!
前回までの記事はこちら
お悩み:最近、変な味がします!
・30代後半の男性
・久しぶりに受診
山本:Kさん、こんにちは!前回から変ったことはありませんか?
Kさん:こんにちは!実は、一週間ほど前から変な味がするんです。
山本:変な味?具体的にどんな感じですか?たとえば、何か食べたときに苦く感じるとか、味がしないとか…。
Kさん:味はするのですが、何か人工的な甘い味がするのです。いつも食べているものなのに、違う感じなのです。
山本:舌が痛くなったりヒリヒリしたりしていませんか?
Kさん:それはないです。
山本:そうですか。一週間くらい前からなのですね。その前は気にならなかったのですよね?
Kさん:はい、その前はとくに気になりませんでした。
山本:Kさんは普段お薬を飲んでいませんよね?
Kさん:はい、飲んでいません。
山本:体調はどうですか?風邪をひいたり、疲れがたまっていたりしませんでしたか?
Kさん:う~ん、いつもよりは忙しかったというか、寝不足でした。
山本:お仕事で寝不足だったのですか?
Kさん:いえ、実は結婚が決まって、みんながお祝いしてくれて飲み会の回数が多くなってしまったのです。
山本:わぁ!おめでとうございます!!では、お酒の量も多くなっていましたか?
Kさん:はい、結構飲んでしまっていました。
山本:そうなのですね。Kさんのお話しを伺うと、亜鉛不足が原因かもしれません。
Kさん:亜鉛?
山本:はい、亜鉛が不足することによって味覚障害が起こることがあるのです。
Kさん:そういえば聞いたことがあるかも…。でも、お酒と関係があるのですか?
山本:とっても関係がありますよ~!
山本:お酒って、体にとっては毒なんです。なので、肝臓がお酒を分解して無害なものにかえてくれるのですが、その時に亜鉛を大量に使うのですよ。
Kさんはお酒が多い日が続いていたために肝臓が一生懸命働いて、亜鉛をたくさん使って足りなくなってしまったのかもしれません。
Kさん、普段のお食事はどなたが作っていらっしゃいますか?
Kさん:一人暮らしなので、コンビニばっかりです。
山本:もしかすると、お酒だけでなく、コンビニ食も原因になっているかもしれません。
Kさん:なんかまずいことばかりですね…。
山本:あはは。コンビニのお弁当やお惣菜などは、食中毒の予防などのために、どうしても添加物が多くなるのです。その添加物の一種が私たちの体の中のミネラルとくっついてしまって、排泄されてしまうのですよ。
Kさん:あ~、亜鉛もミネラルだから…。でも、どうして亜鉛が足りなくなると変な味がするのですか?
山本:舌には味を感じる細胞があるのですが、その細胞はだいたい10日間くらいで作り変えられています。その作り変えに亜鉛が必要になるのです。
アルコールは体にとって毒だから、体はアルコールを分解することを優先してしまいます。なので、亜鉛がそちらに使われてしまって、舌の細胞の作り変えに足りなくなった可能性があります。
普段からコンビニなどのご飯や加工食品が多いとのことですから、添加物の影響を受けて、Kさんの体の中は、もともと亜鉛が少なかったのかもしれません。
Kさん:あ~、だから味が変に感じたのかもしれないのですね。
山本:その可能性が高いと思います。一応亜鉛のサプリメントを飲むという方法もあるのですが、今後は飲み会が続かないようなら様子をみてみますか?
Kさん:様子をみてみます。普段からあまりお酒は飲まないのすが、たまたま続いてしまって…。お祝いをしてくれているので、飲まないわけにもいかず無理していただけですから。
山本:そうですね。しばらくしても治らなければ、また教えてください。
それと、普段のお食事や飲み会でのおつまみの内容に気を付けてもらうと良いですね。
Kさん:どんなものを食べれば良いですか?
山本:たとえば、有名なのが牡蠣ですね。他にもホタテもいいですよ。あと、牛肉やレバー、納豆なんかも良いです。
Kさん:あ~、全然食べてないものだ…。
山本:よく中華屋さんとか定食屋さんでレバニラ炒めがありますよね、ほかにも、牛肉の炒め物とか…。そういったものを選んでもらうようにすると良いです。
山本:また、卵にも亜鉛は豊富ですから、コンビニでもゆで卵なら添加物が心配ないので良いですよ。煮卵になると添加物が増えてしまうので、普通のゆで卵が良いです。コンビニで買うときは裏側を見て、添加物の少ない食べものを選んでください。
Kさん:そうか、ゆで卵ならすぐに取り入れられますね。選ぶときに気をつけます。
山本:しばらくしても治らなかったら、また教えてくださいね!
***
その後、1ヶ月が経過したタイミングで来院され、Kさんは無事に味覚が戻ったとのことでした。
味覚異常のワンポイントアドバイス!
味覚異常の原因は、飲酒や添加物以外に、ドライマウスや鼻炎(花粉症)などの可能性もあります。また、鉄欠乏性貧血や、ビタミンB12の欠乏による舌の萎縮などでも起こります。
今回の症例は30代の男性でしたが、高齢者では、薬剤性の味覚障害が多く、原因の35%を占めています。特に血圧降下剤、高脂血症用剤、消化性潰瘍剤、糖尿病薬、抗うつ剤などの副作用で起こりますから、患者さんの服用薬をチェックしておきましょう。
そして、人口唾液や口内用軟膏、口腔乾燥症状改善薬など歯科で用いる薬剤で味覚障害が生じる可能性もあるため、覚えておきましょう。
![](https://career.whitecross.co.jp/dstyle/wp-content/uploads/2019/11/pop_right.png)
食生活では、亜鉛の豊富な食材だけでなく、ミネラルを排出してしまうものを避けることや、ミネラルの吸収を助けるビタミンCやクエン酸が含まれるもの(酢のものなど)をおすすめすると良いでしょう。
病気との関連もありますから、安易にサプリメントをおすすめするのではなく、患者さんによくヒアリンしてお話ししてみてくださいね!
栄養指導についてもっと知りたい方はこちら!〜山本典子先生のセミナー開催中〜
![[Live]患者に寄り添うライフステージに沿った栄養指導](https://career.whitecross.co.jp/dstyle/wp-content/uploads/2024/03/20240430_0614_0716_山本典子先生_1280x720.jpg)