栄養指導で解決!患者さんとの“お悩みトーク”をのぞいてみよう 第2回 歯の着色

みなさん、こんにちは!歯科衛生士の山本典子です。

近年、栄養指導の必要性が叫ばれていることから、「自分でも勉強しているけれど、どうやって患者さんへ説明したらよいのかわからない」という声をよく聞きます。

そこでこの連載では、私と患者さんのやり取りを会話形式でお伝えしたいと思います。みなさんが患者さんへ栄養指導をするときのヒントにしてみてくださいね!

お悩み:最近、着色しやすくなった気がします

今回の患者さん:Yさん

・50代の女性
・久しぶりに受診

山本:Yさん、こんにちは!お久しぶりですね。

Yさん:こんにちは、すっかり間があいてしまってすみません。

山本:確かお電話で足を骨折されてしばらく来院できないと仰っていましたよね。もう大丈夫ですか?

Yさん:はい、一応歩けるようになりました。

山本:良かったです!お口の中に変わったことはありませんでしたか?

Yさん:はい、特になかったです。自分なりには一生懸命磨いていたつもりなのですが、歯周病が悪くなっていないか心配です。

山本:そうなのですね。では、歯周基本検査でチェックしていきますね。

山本(歯周基本検査を終えて):Yさん、少し出血はありますけど、このくらいなら歯間ブラシを頑張ってもらえれば、すぐに良くなると思います。

Yさん:良かった~。確かに歯間ブラシをあまり使っていなかったです。ちゃんと使います!

山本:ところで、Yさん、最近お茶やコーヒーを飲む機会が増えていませんか?

Yさん:え?特には…。コーヒーは一日一杯程度です。飲んでも二杯かな?お茶は一日に何度か飲みます。

山本:そうですか。下の前歯の着色が目立つので…。歯磨き粉を替えたりはしていませんか?

Yさん:前歯の着色、気になっていたのですよ!歯ブラシも歯磨き粉もいつもと同じものですけど、少し前から着色していて。取れないかな?って、思っていたんです。以前は全然気にならなかったのに~。

山本:タバコも吸わないって仰っていましたよね。

Yさん:はい!タバコも吸わないです。

山本:今日はきれいに磨いておきますから、一度様子を見ましょう。もしかしたら、メインテナンスにいらっしゃれなかった期間が長かったせいかもしれませんから。

Yさん:はい、お願いします!

着色には体内のミネラルバランスが関係している?

Yさん(一ヶ月後に再来院):こんにちは!

山本:Yさん、こんにちは!歯間ブラシは使えましたか?

Yさん:使っています。でも、また着色がついてしまって…。

山本:あら!本当ですね。う~ん…。

Yさん、そういえば、去年、手首も骨折しましたよね?失礼ですけど、閉経されていますか?

Yさん:あ!そうなんです。数年前に閉経しています。実は骨折が続いたので、病院で骨粗鬆症の検査をして薬をもらいました。

山本:では、骨粗鬆症のお薬を飲みはじめたのですね?

Yさん:はい、…あ!言っていませんでしたね、すみません。

山本:いえいえ、大丈夫ですよ。もしかしたら、歯の着色はこれが関係しているかもしれません。

Yさん:え~!老化現象…。

山本:いやいや、みんな通る道ですから!

コーヒーやお茶に含まれている「ポリフェノール」って、唾液の中のカルシウムや鉄のイオンと反応して歯の表面につきやすくなったり、色が濃くなったりするのです。

閉経すると、どうしてもホルモンの影響で骨からカルシウムが外に出ていきやすくなり、唾液の中にカルシウムが増えることがあるのです。もしかしたら、それも影響しているかもしれません。

それとYさんは、甘いものが大好きですよね?お砂糖を摂ることによって骨や歯も糖化するのですが、それも重なって、着色しやすくなったのかもしれません。ただ、これはあくまで可能性ですけどね。

Yさん:え~…、糖化って?

山本:糖化は、体の中で使われなかった余った糖がタンパク質とくっつき、体温で温められて、体を老化させる物質を作るのですが、骨や歯に含まれているコラーゲンも劣化させてしまうのです。
(参照:チェアサイドの栄養指導 はじめの一歩 第6回 意外と知らないコラーゲンの基礎知識

骨や歯は、カルシウムだけでなくタンパク質も含まれているので、影響を受けてしまうのですよ。

Yさん:そうなんですね。では、どうしたらいいですか?

山本:まず、お菓子を減らしましょう!それとマグネシウムを摂った方が良いと思います。

Yさん:カルシウムではなく、マグネシウム?

山本:カルシウムを骨に留めておくには、マグネシウムが必要になるのです。血液や体液の中にマグネシウムが少なくなると、骨の中に貯めてあったマグネシウムと一緒にカルシウムを外に出してしまうのです。

なので、カルシウムだけでなくマグネシウムもしっかり摂らないといけないのですよ。他にも、ビタミンDはカルシウムを体が吸収するのを助けてくれるのですが、骨粗鬆症治療薬としてビタミンDが処方されている場合もあります。次回は、Yさんのお薬を確認させてくださいね。

Yさん:はい!次回お薬手帳持ってきますね。

山本:お願いします。他にも、ビタミンKというビタミンが処方されていることもあります。ビタミンKには、カルシウムを骨に沈着させてくれる効果があるのですよ。

Yさん:へ~!サプリとか摂った方が良いですかね?

山本:サプリメントで摂るとお薬と重複してしまうかもしれませんから、お薬を確認してからにしましょう。食事でも気を付けられることがありますし

Yさん:あ、そうか!

山本:食事として、カルシウムなら小魚や小松菜、大豆。マグネシウムは、海藻類のあおさや海苔、あとはアーモンドやココアにも多いです。

ビタミンDは、鮭やサンマ、キノコ類。ビタミンKは、納豆、ニラ、ブロッコリーなんかに多いので、意識してもらうと良いですよ。

Yさん:牛乳は飲まなくていいの?

山本:牛乳は確かにカルシウムが多いのですが、マグネシウムがとても少ないです。なので、牛乳を飲む場合はマグネシウムの多い食品をより多く摂ってほしいです。

マグネシウムは雑穀にも多いので、お米を炊くときに一緒に入れたり、おやつのお菓子の代わりにサツマイモを食べたりするのも良いですよ!干し芋とか今はコンビニで売っていますし。

Yさん:そうですよね、お菓子を干し芋に…。牛乳は別に好きじゃないので、他のもので摂ります!

山本:ははは、食べられるものを選んでくれれば大丈夫!それと、運動はされていますか?

Yさん:え!?運動?してないです…。

山本:着色ではなく骨粗鬆症のお話になってしまうのですが、骨に刺激を与えることで、骨を強くする細胞が活発になってくれます。ウォーキングや、階段の上り下りなどをするといいですよ。

Yさん:は~い…。でも、結構ショック~。

山本:着色のお話から、骨粗鬆症のお話になってしまってすみません。

着色のワンポイントアドバイス!

着色しやすい患者さんは多いと思いますが、骨粗鬆症だけでなく、高血圧症や糖尿病などの影響により体のミネラルバランスが崩れていると着色しやすくなる可能性があることを覚えておきましょう。

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第1回 口内炎
第2回 歯の着色