栄養指導で解決!患者さんとの“お悩みトーク”をのぞいてみよう 第1回  口内炎

みなさん、こんにちは!歯科衛生士の山本典子です。

近年、栄養指導の必要性が叫ばれていることから、「自分でも勉強しているけれど、どうやって患者さんへ説明したらよいのかわからない」という声をよく聞きます。

そこでこの連載では、私と患者さんのやり取りを会話形式でお伝えしたいと思います。みなさんが患者さんへ栄養指導をするときのヒントにしてみてくださいね!

お悩み:口内炎ができやすいんです!

今回の患者さん:Aさん

・20代の女性
・定期的に受診中
・口腔内の清掃状態は良好
・疾患はとくになし

山本:Aさん、こんにちは!3ヶ月ぶりですね。変わったことはありませんでしたか?

Aさん:こんにちは!実は、3日くらい前から口内炎ができてしまって痛いです。

山本:口内炎ですか。痛いですよね…。

あれ?Aさん、この前いらっしゃったときも「口内炎ができた」と言っていませんでしたか?

Aさん:そうなんです、私、口内炎ができやすいみたいです

山本:もしかして、昔からですか?

Aさん:はい、10代の頃から…。1〜2週間で治るのですが、すぐに違うところにできてしまって。

山本:それはつらいですよね。頬や舌を咬んでしまったということはありませんでしたか?

Aさん:う~ん、咬んだ記憶はないです。気が付くといつの間にかできていることが多くて。

山本:そうなのですね。Aさんはブラッシングも良くできていて口腔内はきれいですから、先生に咬み合わせなどを確認してもらって問題ないようなら、栄養不足があるかもしれません。先生に確認してもらいましょう!

もしかして、栄養不足が原因?

院長(口腔内をチェックして):とくに口の中で歯がとがっているところがあったり、咬み合わせに問題があったりということはないようですね。

やっぱり、栄養不足が関係しているのではないかと思います。山本が今から説明しますね!

Aさん:え~!私、何の栄養不足なのでしょう?ちゃんと野菜は食べているのに~。

山本:野菜はどんなものを食べていますか?

Aさん:レタスとかキャベツとか…。サラダをよく食べますよ。

山本:葉っぱ系が多いのですね。サラダが悪いわけではないのですが、口内炎は舌や歯肉や頬っぺたの裏側の粘膜にできますよね?

なので、粘膜を強くしてくれる効果がある食べものを積極的に食べるようにすると良いですよ。粘膜はタンパク質でできていますから、基本はタンパク質を摂りましょう!

ちなみに、お肉やお魚は食べていますか?

Aさん:あ…。お肉を食べると胃もたれしちゃうので、あまり食べられなくて。魚も、骨を取るのが面倒なので、あまり食べないです…。

山本:わかります~。鯖や秋刀魚(さんま)などは、骨が多いですもんね。笑

では、卵は食べられますか?

Aさん:卵なら大丈夫!

山本:それなら、まずは卵を1日1個食べることからはじめてみてください。できれば1日2個。ゆで卵だと胃もたれするかもしれないので、スクランブルエッグにしたり、お味噌汁に入れたりして、半熟くらいで食べると胃もたれしにくいですよ。

Aさん:それならできそう。タンパク質だけを摂っていればいいのですか?

山本:他にも、ビタミンAビタミンB群ビタミンCを摂ってほしいです。それと、これはとても大切なのですが、鉄分が不足しないようにしてほしいです!

Aさん:え~、そんなにたくさんあるのですね!何を食べればいいのかなぁ。

山本:Aさん、お肉が苦手だと言っていましたが、レバーは食べられますか?ビタミンAと鉄が豊富なのですが。

Aさん:レバーは苦手で…。

山本:じゃあ、ビタミンAの摂取には、とりあえずカボチャや人参を積極的に食べてみてください。油で炒めると吸収率が上がります。

お魚は用意するのが面倒かもしれないけれど、鮭は骨が取りやすいし、ビタミンB6が多いからおすすめですよ。サラダをよく食べるなら、ブロッコリーを付け足すと良さそうですね。ブロッコリーはビタミンCが豊富ですし、タンパク質も摂れます。

あとは、ほかにも納豆とか…。

Aさん:あ!納豆好きです!

山本:よかった!笑 納豆もおすすめですよ~!

Aさん:そうやって聞くと、最近野菜ばかり摂るようになっていたような気がします。

山本:ウサギみたいになっていましたね。笑

野菜に含まれているビタミンは体がタンパク質を作るときに必要になるのですが、そもそもタンパク質を食べていないと粘膜を作る材料が足りなくなってしまって粘膜が弱くなってしまうのです。

「お肉で胃もたれする」って言っていましたよね?

お肉を消化する消化酵素はタンパク質でできているから、少しずつ食べられるタンパク質を増やしていくとお肉が食べられるようになると思いますよ。

Aさん:へ~、プロテインでもいいの?

山本:もちろん、飲めるのならプロテインでもいいですよ。コンビニですぐに飲めるようになっているのが売っているから、一度試してみるのも良いかもしれないですね。

Aさん:ああ、あれ気になっていたのですよ。おいしいのかな?

山本:こればっかりは、好みだから…。笑 ただ、チョコ味は飲みやすいと思いますよ。

もし、味が苦手だったり、胃もたれしちゃったりするようであれば、無理はしないでくださいね。アミノ酸のサプリメントの方が良いかもしれないですし、他にも方法がありますから。

Aさん:帰りに買ってみます!

女性はとくに気を付けたい“鉄分不足”

山本:あとね、これはとっても大事なことなのですが…。鉄です!

Aさんは、生理はちゃんとありますか?

Aさん:え?はい、生理はありますが…?

山本粘膜を作るときに、鉄が必要になるのです。生理って、かならず月に1回きて、そのたびにたくさん出血して鉄が体の外に出て行っちゃうでしょ。そのせいで粘膜がちゃんと作れなくて、口内炎ができやすくなってしまうことがあるので、女性はとくに気を付けてほしいんです。

Aさん:ええ~、そうなんですか!実は生理のとき、とくに口内炎ができやすいんです。

もしかして、鉄分が足りなかったのかな?

山本:鉄分はAさんが苦手だと言っていたレバーやお肉に多いから、足りなくなっていたのかもしれないですね。

Aさん:でも、レバーは嫌いなんですよね~。

山本:食べられるものからで大丈夫ですよ。ほうれん草やプルーンからでもいいです。タンパク質やアミノ酸を摂りながら少しずつ消化酵素が作れるようになれば、お肉が食べられるようになると思いますし。

Aさん:サプリメントでもいいですか?

山本:ビタミン系はサプリメントでも大丈夫ですけど、鉄は体に炎症があると、細菌が鉄を餌にしてかえって炎症が大きくなってしまうことがあります
(参照:チェアサイドの栄養指導 はじめの一歩 第10回 知っておきたい「鉄」の働き

Aさんは、口の中の清掃状態も良いですし、とくに病気を患っていないので使っても大丈夫かとは思いますが、一度病院で貧血の検査を受けてからのほうが良いと思います。

Aさん:そうなんですね。今度会社の健康診断があるので、確認してみます!

山本:そうですね。まずはお食事で気を付けてみて、口内炎ができなくなればそれでOKですから。試してみてくださいね!

Aさん:はい!まずはプロテインを買って帰ってみます。笑

口内炎のワンポイントアドバイス!

口内炎というと、ビタミンB群が不足しているイメージが強いかもしれません。しかし、生理のある女性は鉄不足の可能性も忘れないようにしましょう!