新年を迎えて、数ヶ月が過ぎました。2021年もまだまだコロナ禍での診療が続いていきそうですね。
引き続き、社会情勢に注視しながら診療体制を確立しなければならないと考えています。
感染対策については、そろそろ「慣れ」も出てきている頃ではないでしょうか。
1年前は物資不足や情報の錯綜などもあり、何事にも神経質で過敏に反応していました。
しかし現在は、防護衣の着用やフェイスシールドの装着などが当たり前になり、その取扱いが粗雑になっていると感じることがあります。
今一度、スタッフ全員で真剣に取り組んでいかなければいけないですね。
突然ですが、みなさんは今の職場環境に満足されていますか。
迷わずに「満足している」と答えられる方は、どのくらいいらっしゃるのでしょうか。
私を含め歯科衛生士の多くは被雇用者であり、新規開業医院でなければすでに準備され、整った環境に身をおいているのではないでしょうか。
そして、「満足している」とお答えの方は、この環境にただ身を置くだけでなく、自らも職場環境の改革に取り組んでいるのではないでしょうか。
日々の診療で起きる小さな問題を解決し続けていくこと、この積み重ねが職場環境改善の土台となり、もっとも大切なことだと思っています。
私はこれまでにいくつかの医院で職場環境の改善に携わらせていただいています。
今回は、その経験を踏まえてお話しさせていただきます。
問題解決力を身につけよう
私は日ごろからちょっとした「気付き」を大切にしています。
感覚的なものになってしまうのですが、診療中の忙しいときでも気になったことを流さずに記録することを習慣付けています。
具体的には、ユニフォームのポケットに入れているメモ用紙に走り書きで書き留めておき、同日中の心と時間に余裕のあるときに落ち着いて、かならず見返すようにしています。
その後は、その気付きを「問題」と捉え、解決すべき事柄なのかを熟慮し、行動に移します。
その時、「問題」の下記のように分類して、それぞれにあった解決策をとっています。
- 事後解決策
→個人的要因
→組織的要因 - 事前解決策
→個人的要因
→組織的要因
私が行っている、それぞれの解決方法をご紹介させていただきます。
1.起きてしまった問題をスタッフ全員で共有し、解決策を見つける方法
問題の対象が『こと』・『もの』の場合、「事後解決策」を選択します。
たとえば下記のような事例がありました。
- ヒヤリハットが起きてしまったとき
- 物品の故障や破損を繰り返しているとき
- 新しいシステム導入後のトラブル発生時
過去に起きてしまったことや、今現在も継続して起きている問題は、目をそむけずに対応することが大切です。
ただし、過去の事例にとらわれ過ぎて過剰にミスを追求してしまうと、本来の目的である“同じことを繰り返さないための解決策”を見失ってしまうので、注意しなくてはなりません。
また、解決策はなるべく単純明快なものにし、スタッフ全員が十分に理解して日常的に実践できるものでなければなりません。
スタッフ全員の情報共有として、起きた問題の内容とその解決策は、日付を明記して掲示しておくことをおすすめします。
掲示することは問題意識が薄れてしまうのを防ぎ、解決策の目的を忘れないために有効です。
2.問題が起こる前に解決策を見つける方法
問題の対象が『人』の場合は、「事前解決策」を選択します。
私は日頃から、職種に関係なく同じ職場で働くスタッフの変化を心と目で感じ取るように心がけています。
なぜなら、医院の安定した運営のためにもっとも大切なのはスタッフだからです。
これまでの経験を踏まえると、『人=仲間』の変化を見逃してしまい、事後解決策にいたってしまうと傷つくスタッフが存在していたり、スタッフ間の関係性が悪化してしまう危険性があります。
初めは小さな火種でも、放置し続けるといつかは爆発してしまう恐れもあるのです。
このようなことから、私はスタッフとの定期的な面談を継続しています。
面談のポイントとしては、まずはかしこまった形態にとらわれずに、「話す機会」を設けることをおすすめします。
スタッフの人柄や医院の雰囲気に合わせて、心の声にそっと耳を傾け、声なき声を聴き、感じ取ることがもっとも難しくもっとも重要です。
その際に私が実践していることは・・・
- 寄り添う
- 公平性を期す
- 無言の間を怖がらない
相手を思いやる気持ちがあれば、どなたにでもできることと思います。
準備するものは時間以外何もありません。今日、明日からでもすぐにはじめられます。
その問題の原因を追求する
次に、「事後解決策」または「事前解決策」をとる原因となったものが、個人的要因なのか組織的要因なのかを、精査することを忘れてはいけません。
個人的要因の場合、多くはそのスタッフの成長や、それをサポートすることが問題解決への一番の近道ではないでしょうか。
私は新人の頃に、自分の周り360度全方向に渡って壁に囲まれているように感じたときがありました。
何をやっても上手くいかないと勝手に思い込み、他のスタッフからの声も遮断し、完全に殻に閉じこもっている状態でした。(今となっては笑いは話です☺同僚は誰も信じてくれません。)
こんな私に光が見えたきっかけは、自分のことを見守り続けてくれている仲間の存在に気付いたこと、そして自分のできること、できないことを明確にし、受け入れたことでした。
個人的要因の場合は、本人の成長により視野が広がり、心の整理を行えるようになることも、問題解決の一役を担うと考えています。
一方、組織的要因の場合は、職場環境や医院の運営を見直すことからはじめてみてはいかがでしょうか。
職種や立場は違えども、スタッフ全員にとって公平的に働きやすい職場かどうかを見つめ直すチャンスです。
たとえば、医院の取り決めなどを行うときに人数や時間の関係でスタッフ全員で話し合えないこともあるかと思います。
そのようなとき、私はヒヤリングを行うかアンケートとることにしています。
スタッフ個々の考えや意見を聞くことは、いつも私自身の学びになっています。
そして、たとえ新人のスタッフであっても医院の決めごとに参加することで、どのようなことにも他人事ではなく自分事として捉えるきっかけになるかと思います。
この繰り返しが、意識改革に繋がっていくのではないでしょうか。
入社当初からすべてに満足し、何の問題もない職場は稀有だと思います。
しかし、冒頭でもお話しさせていただきましたように、職場環境は改革することが可能だと思います。
『改革』などというと、とても大それたことと驚き、後ずさりしてしまうかもしれませんが、その基礎となるのは日々の小さな問題を見過ごさずに一つひとつ丁寧に解決していくことです。
医院内で起きた問題の多くは、スタッフ全員の問題です。
まずは大切な仲間を思いやり、自分以外の周囲の『人』・『こと』・『もの』に目を向けることからはじめてみてはいかがでしょうか。
それが、問題解決力へと変貌を遂げていくのだと思います。
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まだまだ続くコロナ禍の中、オンラインでのセミナー受講にもだいぶ慣れてきました。
みなさんはいかがですか。
今後もこのような受講スタイルが、日常的なものになっていくのでしょうか。
スタッフみんなでセミナーを受講し、その後はお茶をしながら一服&ディスカッションしていた頃が懐かしいです。
こちらは、一昨年のスウェーデン研修での写真です。肌で感じる異文化や学びの場は、私にとっての宝です。また、このように受講できる日がくると信じています。
そしてこちらは、オンラインでセミナー受講中の私のデスクです。
歯科衛生士とは思えないくらいチョコレートだらけです。手前のキーボードのようなものは、長さ30センチの板チョコ。
デスクトップのドラえもんが、いつも私を励ましてくれます。
「だいじょうぶ。未来は元気だよ。」
チーフ歯科衛生士の流儀
series1.医院のルールづくり
part1.働きやすい職場環境について考える
part2.あったら良いな、こんなルール
part3.ルールの活用方法
series2.スタッフ育成のポイント
part1.新たな仲間を受け入れる準備はできていますか?
part2.こんな質問にどう答える?「教育システムはありますか」
part3.相手に伝わる褒め方・叱り方
series3.転職しないコツ〜長く勤められる医院とは〜
part1.職場環境に求めること
part2.仕事でしか得られないこの気持ち
part3.問題解決力を身につけよう