今回は、院内ルールの活用方法についてお話します。
前回の連載では、当医院におけるルールをご紹介させていただきました。
前回まではこちら
part1.働きやすい職場環境について考える
part2.あったら良いな、こんなルール
現在、当医院には多岐にわたるルールが存在します。ルールの存在において最も重要、かつ困難なのは、その活用方法ではないでしょうか。
どんなに素晴らしいルールが存在しても、活用されていなければ意味がありません。名目だけではなく、血の通った本来のルールとはどのようなものなのでしょうか。
私自身、これまでにさまざまなルールに携わってきましたが、実際に活用されているルールにはいくつかの共通点があるかと思います。と、申しますか、働いている姿が素敵なスタッフの下にある「活きた」ルールには、共通点があるのです。
みなさんのクリニックにおけるルールの在り方と対比し、活用方法のひとつとしてご参考になればと思います。
② 定期的な話し合い&見直し
③ 継続した実践
共通点① 必要に応じた変化
そもそも、ルールをつくった時からまったく変わらずに存在させるのは、難しいのではないでしょうか。なぜなら、ルールの対象はスタッフだからです。人や環境は変化し続けます。
『理念』のように、あまり時代背景には影響されず変わってはいけないものとは違い、ルールは対象に合わせ、必要に応じて変化し続けなければなりません。
そうでないと、ルールを守ることが苦しくなってしまい、気が付けば名目だけが存在し、生きた化石のようになってしまいます。
では、どのようにして変化すればよいのでしょうか。
共通点② 定期的な話し合い&見直し
ルールをつくったら、定期的な見直しをかならず行い、継続して問題定義を行うことをおすすめします。
当医院では前回ご紹介させていただいた担務を、1年に1回見直す機会を設けています。
見直しの際は、事前に用意した各担務に関する評価表へ記入をしてもらい、それを用いて活動の1年間を振り返り評価する時間を職務時間中にとっています。
ここで大切なのは、「できなかったこと」「できたこと」を明確化させることです。これは言葉では表現しにくい問題定義をしやすくするためです。そして、その評価表には、来期への継続希望の有無を確認する項目があります。
担当期間中の一年という長い期間の中では、診療などの医療従事以外にも、係の仕事に対して時間を費やさなければならない時もあるかと思います。そのため、自身のやる気や希望を明確にしておく必要があります。
問題定義や話し合い&見直しの習慣が身につけば、自然と話し合う機会を設けるようになります。これを繰り返すことにより、問題を定義するのではなく問題を未然に防ぐことへと繋がります。
以下の表は、実際に大岡歯科医院で使用しているものです。各係の業務内容はそれぞれのリーダーが記入し、メンバーに配布しています。係のメンバー全員が仕事内容を把握するためと、リーダーを自覚するために必要だと思います。
また、係分担表はラミネートして掲示しています。誰がどの係に所属しているのか、この業務内容は誰に依頼すればよいのかを分かりやすくするためです。
共通点③ 継続した実践
私はルールの活用において最も困難なのが「継続」だと実感しています。
正直に申しまして、私は何をするにも大概は三日坊主です。恥ずかしながら、自分でも飽きっぽい性格だと自負しています。
しかし、仕事においては少し違います。自分の性格を十分に理解したうえで、抱えているタスクを常に意識する習慣を、長い時間をかけて身につけました。
ですが、これはすべての人に当てはまるものではありません。ルールを継続するためには前述の① ②が必要なのですが、これらはあくまでも戦略に当たる項目です。
私が最も大切にしているのは「やる気=モチベーション」です。中断してしまう多くの理由は、その業務を行う目的意識を見失ってしまうからではないでしょうか。
そのため、継続実践することで得られる「やりがい→楽しみ→未来のイメージ」を忘れないようにするためのサポート業務を遂行するスタッフの存在は必須であり重要です。そのためにも人財、スタッフの成長が大切です。
また、ルールに迷い、問題が起きたときには決して中断するのではなく、少し立ち止まって考えることも必要なことかもしれません。
そのときは、ルールとは何のためにあるのか、目的を再考するチャンスです。仕事においては感情を横におき、ものごとを俯瞰して見ることも重要ですよね。
これまで3回に渡り、『医院のルールづくり』についてお話させていただきました。
院内運営は、ただただ診療をしていればまかなえるものでもありません。
クリニックの人財であるスタッフ、そのスタッフを守る職場環境やルール。私は、ルールとは同じ職場で働く仲間を、そして自分を守るためにあるのだと思っています。
この連載によって、スタッフ各人が、勤務されているクリニックの運営について主軸になって考えるきっかけになればと思います。
次のシリーズからは、『スタッフ育成のポイント』についてお話させていただきます。
チーフ歯科衛生士の流儀
series1.医院のルールづくり
part1.働きやすい職場環境について考える
part2.あったら良いな、こんなルール
part3.ルールの活用方法