診療報酬点数について学ぼう! #3 歯科疾患管理料とは?

歯科医院の売り上げや業績に直結する、診療報酬点数。

毎年少しずつ内容や点数が改定され、二年に一度、大幅な改定が行われます。

算定項目によっては、算定条件や算定できる期間が細かく決まっているため、完璧に内容を覚えることがむずかしい項目も。

この連載では、算定する機会が多い項目や、複雑な条件が必要な項目について詳しく解説していきますよ♪

今回は、算定する機会が多い「歯科疾患管理料」について紐解いていきます。

前回までの記事はこちら

#1 診療報酬点数とは?
#2 初診料・再診料とは?

歯科疾患管理料とは?

歯科疾患管理料とは?

歯科疾患管理料とは、継続的な管理を必要とする歯科疾患をもつ患者さんに対して、月に1回、管理料として100点を算定することができる項目です。

内容としては、患者さんの協力のもと行う口腔管理や、病状が改善した歯科疾患等の再発防止、または重症化の予防について評価します。

歯科疾患管理料を初めて算定する場合は、歯科疾患の管理が必要な患者さんまたはその家族などの同意を得て管理計画を作成し、その内容について説明を行います。

管理計画には、患者さんの全身疾患の既往歴や喫煙歴、服薬状況といった情報や、口腔内の状況、検査結果の内容、治療方針の概要といった、歯科疾患の継続的管理を行う上で必要となる情報を記載します。

歯科疾患管理料に係る管理計画書(厚生労働省HPより引用)
歯科疾患管理料に係る管理計画書(厚生労働省HPより引用)

なお、初診日と同月に算定する場合は、所定点数の100分の80に相当する80点しか算定できないので、注意が必要です。

また、歯科疾患管理料と一緒に算定できない管理料は、以下の通りです。

  • 周術期等口腔機能管理料(Ⅰ)〜(Ⅲ)
  • 歯科特定疾患療養管理料
  • 歯科疾患在宅療養管理料
  • 在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料
  • 小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料
  • 歯科矯正管理料

知っておきたい!歯科疾患管理料に加算できる点数

歯科疾患管理料には、条件を満たすことで加算できる点数がたくさんあります。

  1. フッ化物洗口指導加算 40点
  2. 文書提供加算 10点
  3. エナメル質初期う蝕管理加算 260点
  4. 総合医療管理加算 50点
  5. 長期管理加算
    ● かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の場合 120点
    ● それ以外の保険医療機関の場合 100点

① フッ化物洗口指導加算 40点

主治医または主治医の指示を受けた歯科衛生士が、13歳未満のう蝕多発傾向者やその家族などに対して、フッ化物洗口に使用する薬液の取り扱いや、洗口方法に関する指導を行った場合に加算できる点数のことを指します。

フッ化物洗口指導加算は、歯科疾患管理の実施期間中、患者さん1人につき1回限り算定が可能。ただし、訪問歯科衛生指導料を算定している患者さんについては加算できません。

なお、う蝕多発傾向者とは、「う蝕に対する歯冠修復終了後においても、う蝕活動性が高く、継続的な指導管理が必要な者」と定義されています。

年齢と歯冠修復終了歯の本数に応じたう蝕多発傾向者の判定基準は、以下の通りです。

  • 0~4歳:乳歯1歯以上
  • 5~7歳:乳歯3歯以上または永久歯1歯以上
  • 8~10歳 :永久歯2歯以上
  • 11~12歳:永久歯3歯以上

歯冠修復終了歯には、未処置のう蝕歯にサホライド®︎などのフッ化ジアンミン銀を塗布した歯や、初期う蝕早期充填処置を行った歯も含まれます。

② 文書提供加算 10点

患者さんに管理計画の内容を文書で提供した場合に加算できる点数のことを指します。

文書提供加算を算定する場合は、患者さんに提供した文書の写しをカルテに添付します

また、記載している内容以外に療養上必要な管理事項がある場合は、その要点もカルテに記載する必要があります。

ただし、患者さんに提供する文書の様式については、初回は「別紙様式1」、2回目以降は「別紙様式2」、もしくはこれに準じたものである必要があります。
(参照:歯科疾患管理料に係る管理計画書-厚生労働省

歯科疾患管理料に係る管理計画書(左:別紙様式1、右:別紙様式2)
歯科疾患管理料に係る管理計画書(左:別紙様式1、右:別紙様式2)

③ エナメル質初期う蝕管理加算 260点

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、か強診)の歯科医師が行う、エナメル質に限局した脱灰病変の治癒または重症化予防を目的として実施する指導管理等を評価した点数です。

この加算は、患者さんの同意を得た上で管理内容について説明を行い、エナメル質初期う蝕にフッ化物歯面塗布と口腔内カラー写真の撮影を行った場合に算定します

また、必要に応じて、プラークコントロールや機械的歯面清掃、フッ化物洗口の指導を行うことも。

撮影した口腔内カラー写真はカルテに添付、またはデジタル撮影した画像を電子媒体に保存して管理する必要があります。

なお、2回目以降の算定においては、口腔内カラー写真撮影に代えて光学式う蝕検出装置を用いてエナメル質初期う蝕の部位の測定を行った上で算定してもOKとのこと。

その場合、使用した「光学式う蝕検出装置の名称」と「エナメル質初期う蝕部位の測定値」をカルテに忘れず記載しておきましょう。

ただし、エナメル質初期う蝕管理加算を算定した月は、フッ化物洗口指導加算や在宅等療養患者専門的口腔衛生処置、機械的歯面清掃処置、非経口摂取患者口腔粘膜処置、フッ化物歯面塗布処置は算定できないので、注意が必要です。

エナメル質初期う蝕管理加算

④ 総合医療管理加算 50点

歯科治療を行うにあたり、医科の担当医から患者さんの全身状態や服薬状況等についての必要な診療情報の文書提供を受け、適切な総合医療管理を実施した場合に加算できる点数のことを指します。

総合医療管理加算を算定できる患者さんは、以下の全身疾患や治療を受けている場合に限ります。

  • 糖尿病
  • 骨吸収抑制薬を投与している
  • 感染性心内膜炎のハイリスクをもっている
  • 関節リウマチ
  • 血液凝固阻止剤を投与している

なお、算定にあたっては、担当医からの情報提供に関する内容や、担当医の保険医療機関名等についてカルテに記載する、または提供文書の写しをカルテに添付する必要があります。

⑤ 長期管理加算

歯科疾患の重症化を予防するため、長期にわたる継続的な口腔管理などを評価した点数です。

歯科疾患の管理や指導を初診月から6ヶ月以上行った場合、長期管理加算として、か強診は120点、それ以外の歯科医院は100点を加算することができます。

長期管理加算を初めて算定する場合は、今後の口腔管理にあたって特に留意すべきポイントを患者さんに説明し、カルテには説明した内容の要点を記載する必要があります。

***

いかがでしたか?

カルテやレセプトは、普段何気なく目に触れるものですが、その内容まで詳しく理解するには時間が必要です。

私たち歯科医療従事者が普段行っている治療について、“この処置は何点なんだろう?”という疑問をもつことや、“患者さんはこれだけの治療費をかけて通ってくれているんだ。”という実感を得ることは大切だと思います。

ぜひこの連載で、普段算定している診療報酬点数についてマスターしましょう♪

次回は、「小児口腔機能管理料・口腔機能管理料」についてです。お楽しみに!

参考文献:歯科診療報酬点数表-厚生労働省

診療報酬点数について学ぼう!

#1 診療報酬点数とは?
#2 初診料・再診料とは?
#3 歯科疾患管理料とは?