訪問歯科現場でのヒヤリハット体験談 vol.3 患者さんの自宅は診察室とは違うと痛感したエピソード

みなさん、こんにちは。歯科衛生士歴16年のYota Morisakiです。現在は訪問歯科で働きはじめて7年ほどになり、業務としては、主に有病者や高齢者の方に対する口腔ケアを行っています。

そんな訪問歯科の現場では、一般歯科とは異なるアクシデントやインシデントに見舞われることがあります。

この連載では、訪問歯科現場で働く中で実際に起きた「ヒヤリハット」体験をご紹介します。

前回の記事はこちら

vol.1 無理な口腔ケアは危険だと感じたエピソード
vol.2 コミュニケーションの大切さを痛感したエピソード

生活空間である自宅ならではのヒヤリハット

訪問歯科の歯科衛生士は患者さんの自宅に伺って口腔ケアをするため、生活空間である自宅ならではのヒヤリハットやトラブルに見舞われることがあります。

その度に、人目が多く、チームで管理できる診察室だからこその安全もあるのだなと考えさせられます。

原状復帰に関するヒヤリハット

患者さんの自宅で口腔ケアをする際、患者さんの日用品などを動かした場合は、帰るときに必ず元に戻します。

これを原状復帰といいますが、この原状復帰ができていないと、思わぬヒヤリハットが起こることがあります

私の患者さんには、歩行は可能ですが、手の動きが良くないという方がいます。そのような方の家の中は、通常なら手で操作するものを足で操作できるように工夫されています。

たとえば、ドアに足で開けられる装置がついていたり、水道が足で操作できるようになっていたりします。

このような場合、「足で操作する水道を手で操作し、誤って蛇口を閉めてしまう」などのミスをすると、その後足で水道を操作しても水が出ないということになってしまいます。

そのまま帰宅すると、患者さんは水道が使えず大変なことになりますよね。

気をつけてはいるのですが、患者さんの自宅ならではのルールを忘れそうになったときには、とてもヒヤリとします。

お手洗いに関するヒヤリハット

仕事中にお手洗いに行きたくなったときは、基本的にはコンビニやスーパーでお手洗いを借ります。

しかし、どうしても近くにお手洗いがなく、患者さんの自宅で借りなくてはならないときがあります。

患者さんは、口腔ケアのほかにも複数の訪問サービスを利用している方が多く、こちらの状況をよく理解してくれているため、快くお手洗いを貸してくれる場合が多いです。

しかし、「コロナ禍では別なのだ…」と感じる瞬間がありました

一度、コロナが大流行しているときに、患者さんの自宅のお手洗いを借りたことがあります。

コロナに関しては、「ウイルスを運び込まれたくない」と感じているだけでなく、「訪問に来る人に広げてしまわないように注意しよう」と、細心の注意を払う患者さんが多いです。

実際、患者さんと、その患者さんの自宅に訪問していたサービスの人が要観察となってしまったケースもあります。

そんな状況下で、どうしてもお手洗いを借りたいとお願いしたとき、とても気を使ってお手洗い全体を消毒してから貸してくれた患者さんがいました。

私が帰った後も同じように全体を消毒したに違いない…と思うと、とても申し訳ない気持ちになりました。

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今回ご紹介した「ヒヤリハット」エピソードから学んだポイントは、以下の2つです。

  1. 患者さんの自宅のルールを守り、原状復帰はぬかりなく行う
  2. 訪問時はアルコール消毒やこまめな手洗い・うがいなど、できる感染症対策はすべて行う

診療に特化した診療室と比べ、患者さんの生活空間である自宅では、ヒヤリハットが起こりやすいと感じます。

その方の生活そのものが行われている場所だからこそ、気をつけなくてはならないことがたくさんあります。

しかし、生活に少しだけお邪魔して、患者さんの状態に合わせたケアができるのは楽しいですし、「自宅に来てくれて本当に助かる」と言ってもらえるのも、訪問歯科ならではのやりがいだと感じます。

ご興味をおもちの方は、ぜひ訪問歯科の世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。

訪問歯科現場でのヒヤリハット体験談

vol.1 無理な口腔ケアは危険だと感じたエピソード
vol.2 コミュニケーションの大切さを痛感したエピソード