歯科衛生士向けおすすめ論文 No.9「ホワイトニング歯磨剤の着色に対する効果は?」

歯科衛生士のみなさんは、日頃どんな方法で勉強していますか?

歯科衛生士向けの月刊誌や本を読む、講演会やセミナー、学会に参加するなど、さまざまな方法があると思います。その中にはたくさんの「参考文献」が記載されているかと思います。

ところで、その「参考文献」について調べたことはありますか?

「文献」や「論文」と聞くと、むずかしそうなイメージがあると思います。
しかしよく調べてみると、私たち歯科衛生士にとって興味深い資料がたくさんあります。

このシリーズでは、歯科衛生士の方に役立つおすすめの論文を紹介していきます!

歯科衛生士向けおすすめ論文

着色に対するホワイトニング歯磨剤の効果を調べた論文

今回解説するのはこちらの論文です。

ホワイトニング歯磨剤の着色に対する効果−2つのシェード測定方法を用いて行った12週間の臨床試験
『International Dental Journal』

この研究では、着色除去効果があるとされるホワイトング歯磨剤の効果の有無について調べています。

どんな方法で調べている?

着色した歯牙がある150人の被験者に対して、3種類の歯磨剤のうち、いずれかひとつの歯磨剤を割り当てました。

歯磨剤の種類は、以下の3つです。

  1. ハイドロキシアパタイト含有歯磨剤
  2. 過酸化カルシウム含有歯磨剤
  3. プラセボ歯磨剤
    * プラセボとは「有効成分を含まない」ことをさします。

そして、被験者それぞれに割り当てた歯磨剤を使用してもらい、その後4週間、8週間、12週間の3回、歯牙のシェードや歯肉、プラークの付着状況について検査しました。

また、シェードの測定には、VITAのシェードガイドと歯科用分光測色器「シェードパイロット」の2つの測定器を使用しました。

VITAのシェードガイド

すべての被験者は「着色が減った」と感じた!

今回の研究結果によると、ハイドロキシアパタイトまたは過酸化カルシウム含有歯磨剤は、プラセボ歯磨剤と比較しても、着色を有意に減少させることはありませんでした

しかし、3グループすべての被験者が、主観的に「歯の色調が明るくなった」「着色が減った」と感じたとのこと。

また、歯肉やプラークの付着状況について、実験前と12週間後を比較したところ、3グループすべてで有意に改善されていました。

* 有意という言葉については、第1回の記事で説明しています。こちらをご覧ください!
(参照:歯科衛生士向けおすすめ論文 No.1「歯ブラシとフロス、どっちから先に使うべき?」

この研究に対する考察

今回の研究では、ホワイトニング効果があるといわれている歯磨剤を使用しても、着色の減少に影響しないということがわかりました。

しかし、すべての被験者がなんらかのシェードの改善を感じたという結果は、大変興味深い結果だと感じます。

「この歯磨剤にはホワイトニング効果がある」と思って使用すると、薬用成分が含まれていないプラセボの歯磨剤であっても、心理的作用によって効果を感じたということです。

また、12週間後には歯肉の状態やプラークの付着状況も改善されたという点については、「歯を白くきれいにする」という目標を持ち、毎日ブラッシングしたことで、普段よりも丁寧にブラッシングを行えたためかもしれません。

患者さんのセルフケア改善には、何かしらのモチベーションが必要だということを、あらためて感じさせられる結果です。

ホワイトニング歯磨剤の効果について

最近では、ハイドロキシアパタイトや過酸化カルシウムだけでなく、ホワイトニング効果が期待されるさまざまな成分が歯磨剤に含有されています。

今回の結果から、歯磨剤だけで、すでに沈着してしまった着色を完全に除去するということはむずかしいことがわかりました。

しかし、歯磨剤の中には、エナメル質にできた細かな傷を補修してくれる効果があり、着色を防ぐことができる成分が含まれている歯磨剤も存在します。

PMTC後のきれいな歯面を長く保つためにも、歯科衛生士として歯磨剤についてどういった説明をするべきか、一度考えてみてはいかがでしょうか?


毎日同じ環境で働いていると、「歯科医院での当たり前」が、自分の中の「歯科衛生士としての当たり前」になっていることがあります。

自分が行っている業務に自信を持つため、客観的な視点で、臨床現場に活かせる知識を身につけられるよう、日々学んでいきたいものです!

参考文献:Raoufi S, Birkhed D.(2010)「Effect of whitening toothpastes on tooth staining using two different colour-measuring devices–a 12-week clinical trial.」『International Dental Journal』2010 Dec;60(6):419-23. FDI

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