わたしのDHスタイル Special #02 長谷ますみさん『臨床で活躍する歯科衛生士に喜んでもらいたい』

歯科衛生士は社会的価値の高い大切な職業であり、その仕事の幅はますます拡がっています。

dStyleでは、歯科衛生士として全国各地で活躍している方に、これまでのキャリアや仕事にかける想いを語っていただきました。

このインタビューが、歯科業界で輝くヒントになれば嬉しいです。

***

今回は、歯科衛生士歴38年目の長谷ますみさんにお話を伺いました。

1985年に大阪府立公衆衛生専門学校歯科衛生学科を卒業した長谷さん。卒後10年でフリーランスに転身してからは、「みんとの会」や「mint-seminar事業」を立ち上げ、歯科衛生士向けのSRPセミナーや講演活動を数多く行ってきました。

そんなたくさんの歯科衛生士を育成してきた長谷さんに、今までの歯科衛生士人生について語っていただきました。

長谷ますみさん
長谷ますみさん

歯科衛生士を目指したきっかけ

きっかけは母からの助言です。実は、私の姉も歯科衛生士なんですよね。

私自身、歯科衛生士という仕事に特段憧れをもっていたわけではないのですが、母から「女性もこれから働く時代になるから、手に職つけた方が良いんじゃないか」というアドバイスをもらい、歯科衛生士をめざすことを決めました。

また、幼少期から歯科治療を受ける機会が多かったので、患者として歯科医院に対する不安や不満をもつ経験もしました。

患者であれば誰もが「いちばん良い治療を受けたい!」という気持ちをもつと思います。歯科業界に入れば、質の高い治療についての情報が得られるだろうと思ったことも、歯科衛生士をめざしたきっかけの一つですね。

学校を選んだポイントは、「公立であること」です。大阪にはいくつか歯科衛生士学校があるのですが、親への金銭的負担をできるだけおさえたいという気持ちがあり、公立一本で受験しました。

歯科衛生士学校卒業式の写真 中段右から4人目が長谷さん
歯科衛生士学校卒業式の写真(中段右から4人目が長谷さん)

岡歯科医院への就職からフリーランスとして独立するまで

新卒で就職した歯科医院は、当時から歯周治療に熱心に取り組まれていた岡賢二先生が院長を務める医院でした。

歯科衛生士学校にきていた岡歯科医院の求人票に、「勉強熱心な人を望む」と一言書いてあったんですよ。他の医院は給与面や待遇面について記載しているところばかりで、「こういう人にきてほしい」と明記していたのは岡歯科医院だけでした。

当時は岡歯科医院が開業してまだ2〜3年目の頃で、岡先生の名も今ほどは知られてない時代。学生時代の私はあまり自分に自信がなかったため、逆に「勉強熱心であれば働けるんだ!」と考えて、応募を決めました。

その後岡歯科医院には常勤で10年、歯科衛生士のチーフとして勤務しました。常に院長や患者さんの「期待に応えたい」「期待以上の結果をだしたい」と考えながら働いていたので、当時は「岡歯科医院を辞める時は、歯科衛生士を辞める時」とまで考えていましたね。

ただチーフとして長く働いていると、歯科医院のマネジメント業務といった幹部的な役割を求められるようになって、患者さんを診る時間がどんどん少なくなっていくんですよ。

私には「もっと多くの患者さんを治したい!」「歯周治療にもっと専念したい」という想いがあったことから、これも人生の転換期だと考え、大変なことは覚悟の上でフリーランスとして独立することを決めました。

岡歯科医院勤務時代にスタッフと撮影した1枚
岡歯科医院勤務時代にスタッフと撮影した一枚(上段右から3人目が長谷さん)

SRPのスキルに自信がつくようになるまで

最初は独学で勉強していたのですが、歯肉のヒーリングが悪いケースや思うようにいかないケースもまだまだあったため、いろいろな著名な歯科衛生士の方のセミナーや勉強会に参加して質問していました。

中でも歯科衛生士歴4年目の時に受けた、アメリカのギャント先生という歯科衛生士のセミナーでは、今までのSRPに対する概念が大きく変わりました。

姿勢やポジションから力の入れ方、根面にあたる音まで、当時の自分とはまったく違うキュレットワークに、「こんな風に疲れないSRPができるんだ!」と感銘を受けましたね。

ユニバーサルキュレットについて知ったのも、その時が初めてでした。

それからは「どうすればあんなSRPができるのか」と考えて、自分なりに試行錯誤しながら、ユニバーサルキュレットの使い方を研究しはじめました。

そしてユニバーサルキュレットを使いこなせてきたと感じるようになってからは、患者さんの歯肉の引き締まりがグンと良くなったんですよね。フリーランスとして独立する少し前、8〜9年目の頃だったと思います。

最初は奇跡かな?と思っていた良い結果が、どんどんケースの数として増えていくようになったことで、「これが私の求めていたSRPだ!」と感じられましたね。

SRPに対する概念を大きく変えてくれたギャント先生
SRPに対する概念を大きく変えてくれたギャント先生

ミントスケーラーの製作秘話

私はキュレットを把持する部分「エッジの裏」にこだわりがあって、長年SRPを行って慣れてくると、自然とその場所に指がいくんです。でも、SRP初心者の方だとなかなかそこに指がいかないんですよね。それで不必要に力が入ったり、動きがぶれたりするので、どう指導すべきかを悩んでいました。

ミントキュレットにはエッジの裏にロゴマークが印字されている
ミントキュレットにはエッジの裏にロゴマークが印字されている

でもある時から“指をここ(エッジの裏)に置けば良いよ”と指導するようになって、すごく教えやすくなったんです!それをきっかけに、「エッジの裏に印を入れたい」と考えるようになりました。

その後はいろいろなご縁が繋がって、サンデンタル株式会社さんに「エッジの裏にミントロゴのマークが入った」ミントキュレットを作っていただけることになりました。

私のこだわりを実現できた、思い入れのあるキュレットです!

用途に合わせて8種類を揃えたミントキュレット
用途に合わせて8種類を揃えたミントキュレット

「みんとの会」立ち上げから法人化までの変遷

私がフリーランスの歯科衛生士として勤務していた歯科医院に、やる気のある歯科衛生士の方が何名かいらっしゃったんです。

そのメンバーの勤務先がバラバラだったことから、勉強熱心で臨床熱心な歯科衛生士を集めて、お互いに刺激し合えるような勉強会を行いたいと思い、「みんとの会」を立ち上げました。

当時の私は企業でセミナー講師を務めていたんですが、だんだんと自分の中で「もっとこんなセミナーをしたい」「もっと臨床で活躍する歯科衛生士の方々に喜んでもらいたい」という想いをもつようになっていました。

そのため、みんとの会を立ち上げた時からそのメンバーには、「将来の指導者になってもらいたい」と考えていました。

会の発足から2年後には、みんとの会メンバーでセミナーを開催することができ、そこからセミナーへの参加者がどんどん増えていったんですよ。

私自身は根っからの職人なので、事業を大きくしたい!というような野望はもっていなかったんですが、セミナー事業が拡大していく中でもっと人手が必要、事務局も必要…となり、法人化することになりました。

セミナーでデモンストレーションを行う長谷さん
セミナーでSRPのデモンストレーションを行う長谷さん

歯科衛生士になっていちばん嬉しかったこと

フリーランスになってからは山あり谷ありでつらいことも多々ありましたが、やっぱり臨床で患者さんが喜んでくれた時や変わってくれた時はすごく嬉しかったです。

いちばん嬉しかった言葉は、昔から通院している患者さんから、「私はここでいろんな歯科衛生士さんに担当してもらったけど、初めてこんなに良い歯科衛生士に出会えたと思ってるの。だから本当に辞めないで、長く診てくださいね。」と言ってもらえたことです。

当時私がフリーランスで勤務していた歯科医院でのことなんですが、その患者さんを私が担当するようになってまだ2回目くらいだったんですよね。

もともとポケットが浅い患者さんだったので、何か特別なことをしたつもりはなかったんです。でも、私が患者さんのメインテナンスに専念していたり、集中したりしていることがちゃんと伝わったんだなと感じて、すごく嬉しかったです。

長谷ますみさん

今後の歯科衛生士に求められること

時代がどんどん変わって、日本でも高齢化とともに歯科における予防が進んできましたよね。

歯周病自体はなくならないと思うんですが、これまでよりも明らかに歯科衛生士の活躍できる分野が広がり、存在意義が大きくなったと感じます。

SPTやP重防といった予防に関する保険点数の項目が増えたことも大きいですよね。歯科衛生士がそれだけ活躍できるようになったことで、歯科衛生士の学びに投資したい!と考える歯科医師の先生もグッと増えたように感じます。

その延長線上として、しっかりと知識や技術を身につけた歯科衛生士においては、「自費のSRP」を提供できるような環境がもっと整えば良いなと思っています。

歯科衛生士も長く仕事をする時代になっているじゃないですか。

私は自分の報酬を上げるためにできることとして、たまたまセミナー事業に関われましたが、歯科衛生士のみんながみんなできることではないと思うんです。

でもずっと歯科衛生士の仕事を続けてきて、価値のあるものを医院や患者さんに還元できるようになった方には、自分にも対価として還元されるようなシステムが必要だと思っていて。その一つが自費なんじゃないかなと思います。

やっぱり夢やめざすものがないと、頑張れないじゃないですか。だからそういった目標をもって働ける歯科衛生士が増えてほしいですし、それに向かって頑張れる環境やモデルケースを作れないかなと私自身も考えています。

歯科衛生士だけの力でも歯肉やポケットを改善できるケースってたくさんあります。そしていつも言っていることなんですが、「私ができることは誰だってできるよ」って思うんですよね。

なんでも基本が大事ですが、基本がしっかりできていると応用もききます。いまSRPができない人は「できない」のではなく、やり方を「知らない」だけなんです。

今までの自分の中にあった常識や理論を、ちょっとだけ変えるだけで良いんです。ぜひ、一歩踏み出してみてください。

セミナーでは受講生一人ひとりにキュレット操作を指導する
セミナーでは受講生一人ひとりにキュレット操作を指導する

長谷先生からSRPが学べる!11月21日(月)まで何度でも視聴可能なセミナーはこちら

姉妹サイトWHITE CROSSでは、長谷ますみ先生のLiveセミナーを配信中。いま申し込めば、11月21日まで何度でも視聴が可能です!

SRPを基礎から学べる、とっておきのセミナーです。お見逃しなく!

DHのここが知りたい!SRPのコツとツボ〜臨床現場で役に立つホントの話〜
11月21日(月)まで何度でも視聴可能!お申し込みはこちら