3月14日、歯周炎が慢性閉塞性肺疾患(COPD)発症の引き金になるとの研究成果が発表されました。
この研究結果は九州大学大学院の医学研究院と、同大学歯学研究院の共同研究によるもので、国際科学誌「Journal of Dental Research」にも掲載されたようです。
この研究では、福岡県久山町の60歳以上の成人、900名の追跡調査データを分析し、歯周炎とCOPD発症との関連について調べています。
その結果、喫煙などの影響を考えたとしても、歯肉が健康な人や軽度歯周炎の人に比べ、重度歯周炎の人は5年以内にCOPDを発症する割合が3.5倍も高かったそうです。
また、COPD患者の約4人に1人は中等度以上の歯周炎が原因である可能性が示されました。
また、発表の中では、以下に取り組むことでCOPD発症のリスクが下がる可能性も示されています。
- 普段から自宅や歯科医院で口腔環境を健康に保つこと
- 歯周炎になっても適切な歯周治療を受けて重症化を未然に防ぐこと
歯科医院に来院された患者さんに、歯周治療の大切さを理解してもらう上で、動機付けのひとつとして使えるのではないでしょうか?
ところで、そもそも慢性閉塞性肺疾患(COPD)ってどんな病気でしょう?
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは?
慢性閉塞性肺疾患とは、これまで、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称で、Chronic(慢性の)Obstructive(閉塞性の) Pulmonary(肺の) disease(病気)の頭文字をとって「COPD」と省略されます。
最大の原因は喫煙であり、喫煙者の15~20%がCOPDを発症することから、喫煙習慣のある中高年に発症しやすい生活習慣病といえます。
COPDの症状や治療方法は?
COPDの症状は、歩行や階段の昇り降りのときなど、身体を動かしたときに息切れを感じたり、慢性的にせきやたんが出たりするのが特徴です。
一部の患者さんでは、ぜん鳴や発作性の呼吸困難など、ぜんそくのような症状が出る場合もあります。
治療方法としては、禁煙が基本となります。
薬物療法を行う場合は、気管支拡張薬や、症状がひどい場合は、吸入ステロイド薬が処方されます。症例によっては、ふくらみすぎた肺を切除する外科手術が検討されることもあるようです。
まとめ
COPDは、日本人の死亡原因の9位、特に男性では7位を占めているにもかかわらず、大多数が未診断、未治療の状態とのこと。
平成29年に厚生労働省から発表された「最新たばこ情報」によると、現在の成人喫煙率は、17.7%。また、男性の成人喫煙率は29.4%であり、30~40歳代の男性においては、約4割が習慣的に喫煙しています。
これは、歯周炎の自覚症状が出てきやすい年代ともいえるのではないでしょうか。
喫煙と歯周炎の関連性についてはみなさんもご存じの通りで、歯周治療においても、禁煙・減煙指導はとても大事な指導です。
歯科だけでなく、こういった医科の知識も身につけておくことで、患者さんへの説明に説得力がでることもあります。
- 歯周炎は慢性閉塞性肺疾患の発症リスクに関連がある
- 慢性閉塞性肺疾患の多くの原因は喫煙である
- 喫煙は歯周炎のリスクファクターである
これらのことをリンクさせて、普段の臨床の引き出しのひとつにしてみてはいかがでしょうか。
参考文献:歯周病が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の引き金に 九州大学プレスリリース
一般社団法人日本呼吸器学会
厚生労働省 最新たばこ情報