日本歯科医師会は4月26日、「新型コロナウイルスなど感染症対策における歯科の重要性」に関する情報として、岡山理科大学獣医学部微生物学講座教授の森川茂氏が執筆・監修した「ウイルス感染対策としての口腔ケア〜歯磨剤の新型コロナウイルスに対する不活化効果〜」をホームページに掲載しました。
内容としては、一般的な歯磨剤に含まれる「ラウリル硫酸ナトリウム」などの界面活性剤が新型コロナウイルスを不活化させ、他者への感染リスクを低減できる可能性について説明しています。
今回は、その研究内容について詳しくお伝えします。
新型コロナウイルスを不活化するには?
新型コロナウイルスは、細胞由来の脂質二重膜をもつ「エンベロープウイルス」に分類されます。
ウイルス表面にある脂質二重膜構造は、洗浄剤に含まれる界面活性剤によって破壊され、不活化できることが知られています。
そして、一般的な歯磨剤にも「口腔内に歯磨剤を拡散させ、汚れを洗浄すること」を目的に、発泡剤としてラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤が含まれています。
歯磨剤が新型コロナウイルスの不活化に有効な理由とは?
今回の研究は、歯磨剤に含まれる界面活性剤によって、新型コロナウイルスが不活化し、その結果他者への感染リスクを低減できるのではないか、という仮説のもとで行われました。
研究には、新型コロナウイルスとして最初に同定された武漢型を使用しました。
ブラッシング時に唾液で希釈されることを想定し、3倍に希釈した歯磨剤とウイルス液を混合し、一定時間反応させました。
その後、新型コロナウイルスに感受性のある「Vero/TMPRSS2細胞」という細胞を用いて、ウイルスの感染価にどの程度影響があるかを調べました。
なお、歯磨剤としては、一般的な歯磨剤からフッ化物などの有効成分を除いた0.3%ラウリル硫酸ナトリウム含有のモデル歯磨剤を使用しました。
結果として、この研究では感染性ウイルスの検出の限界未満である99.99%以上のウイルスの不活化が認められました。
また、ラウリル硫酸ナトリウム含有モデル歯磨剤は、同じ濃度のラウリル硫酸ナトリウム単独の水溶液よりもウイルスの不活化効果が高いことが判明しました。
この理由については引き続き検証が必要ですが、歯磨剤に配合されているソルビトールやプロピレングリコールなどの多価アルコールによって、ラウリル硫酸ナトリウムによる不活化効果が増強されている可能性が示されました。
今回の研究で用いた試験法は、一般的に製品の抗ウイルス評価に用いられているものですが、試験管内の研究ではあるため、実際の口腔内でウイルス不活化効果を保証するものではありません。
しかし、新型コロナウイルスの感染対策として、口腔ケアの有用性を示すものであると考えられています。
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いかがでしたか?
今回、新型コロナウイルスを不活化するということが判明したラウリル硫酸ナトリウムは、一般的な歯磨剤にも含まれるメジャーな成分です。
そのため、該当する製品も少なくないのではないでしょうか。
ぜひ一度、歯科医院で販売している歯磨剤の成分をチェックしてみてください!