北海道大学は8月30日、洗口液や歯磨剤に含まれる塩化セチルピリジニウム(CPC)が、新型コロナウイルスに対して抗ウイルス効果を示すことを明らかにしました*1。
この研究は、北海道大学大学院歯学研究院の樋田京子教授と同大学大学院歯学院博士課程の武田遼先生らの研究グループによるもの。
今回の研究結果によって、市販の洗口液の濃度であっても、CPC製剤には新型コロナウイルスの感染予防や発症・重症化予防などの効果を期待できることが判明しました。
新型コロナウイルスに対するCPCの効果とは?
CPCは市販の洗口液や歯磨剤などに殺菌成分として含まれ、世界中で広く普及している成分です。
CPCは無味無臭に近いため、ポビドンヨードやクロルヘキシジンと比較して、「適用範囲が広く、製剤に利用しやすい」というメリットがあります。
これまでにも、海外の研究において、CPCは新型コロナウイルスの脂質膜を破壊することから、抗ウイルス効果を発揮すると報告されてきました*2、*3。
しかし、こうした研究に用いられているCPCの濃度は、なんと250µg/mL以上!
日本で市販の洗口液として使用される濃度は50µg/mL以下のため、非常に高濃度の製剤が用いられているということになります。したがって、日本で販売されているような低濃度のCPCによる抗ウイルス効果は不明だったのです。
そこでこの研究グループは、日本で市販されている、一般的な洗口液に含まれる濃度のCPCであっても、新型コロナウイルスの感染性に対して抑制効果を示すかどうかを検証しました。
市販の洗口液に含まれるCPC濃度でも抗ウイルス効果がある!
今回の研究では、以下の3つの事項についての解析または評価が行われました。
- 新型コロナウイルスの従来株と変異株3種類において、CPCによる感染性の変化を解析
- 健常者の唾液とウイルス液を混合したものに、CPCを添加した時の感染性を解析
- CPCと混合したウイルス液を用い、ウイルス粒子の形態学的変化を評価
その結果CPCは、一般的に市販の洗口液に使用される50µg/mLの濃度においても、新型コロナウイルスに対して感染性抑制効果を示し、唾液中でも同様の効果を示しました。
また、濃度50µg/mLのCPCはウイルスを完全に破壊せず、ウイルスの形態を変化させることで、感染性を抑制しうることが示唆されました。
***
近年、CPCについてはあらゆる研究が行われています。
(参照:歯磨剤や洗口液に使用される「塩化セチルピリジニウム(CPC)」の有用性を解説)
今回の研究で、日本で販売されている一般的な濃度のCPCでも新型コロナウイルスに対する有効性が証明されたため、今後もますます注目される成分となるでしょう。
CPC含有の洗口液や歯磨剤が、コロナ予防に欠かせないアイテムの一つとなる日も、そう遠くないかもしれません。
参考文献:
*1 CPCのSARS-CoV-2に対する抑制効果を解明~CPC含有口腔製剤による新型コロナウイルス感染制御に期待~(北海道大学)
*2 Cetylpyridinium chloride promotes disaggregation of SARS-CoV-2 virus-like particles. Journal of Oral Microbiology.
*3 A Throat Lozenge with Fixed Combination of Cetylpyridinium Chloride and Benzydamine Hydrochloride Has Direct Virucidal Effect on SARS-CoV-2. COVID.