2021年最新版・歯周治療の基本 第2回 スケーリング

こんにちは、加藤久子です。

歯科界では、研究者の方たちが毎年新しい論文を出し、それにともない日々知識や技術がアップデートされています。

もちろん、みなさんが日々行っている歯科衛生士業務も例外ではありません。

この連載では、2021年現在における「歯周治療の基本」をお伝えします。

第2回は、スケーリングについて。

グレイシーキュレットを使用しての縁上歯石除去の操作方法について説明します。

2021年最新版・歯周治療の基本 第2回 スケーリング

1.グレイシーキュレットを使用した縁上歯石除去

歯石除去の際には、歯石の硬さに応じた側方圧をかけなくてはなりません。

そのためには、前回説明しました器具の把持をしっかり行う必要があります。
(参照:2021年最新版・歯周治療の基本 第1回 プロービング

たとえば、器具を握るようにしか把持できない、執筆法や小指が力強く立つような把持方法になってしまうなど、もし執筆状変法ができていないのであれば、その原因を考えなければならないです。

もしかしたら、把持をしようとしている器具のハンドルの部分の太さに、手のサイズが合っていないのかもしれません。

執筆状変法ができない多くの場合は、ハンドルサイズが大きいことが考えられます。

器具メーカーさんによっては、ハンドルサイズをいくつか揃えているところもありますので、ぜひご自分に合ったサイズの器具ハンドルを選択してみてください。

今まで器具操作でお困りだったことが、少しでも軽減されると思います。

2.スケーリングにおけるハンドテクニック

歯肉縁下でのスケーリングの器具操作が難しいと考える方は、まずは縁上から歯石除去を行い、除去できたかを目で見て、器具で触れて確認しましょう。

歯石除去を行う上で側方圧をかける際は、歯科衛生士学校で習得した次の3つの運動の中から選択または組み合わせて行います。

  1. 前腕回転運動
  2. 手指屈伸運動
  3. 手根関節運動

次のイラストは、前腕回転運動です。

ひじから先をまっすぐ伸ばし、前腕を回転させるように動かします。

前腕回転運動
引用:加藤久子(2021)『絵でわかるスケーリングのきほんの本』デンタルダイヤモンド社.

次のイラストは手指屈伸運動です。

手と指の関節を屈伸させ、器具を操作します。

手指屈伸運動
手指屈伸運動(引用:加藤久子『絵でわかるスケーリングのきほんの本』)

縁上歯石除去に使用するハンドスケーラーの器具はいくつかありますが、代表的なものとして、シックルスケーラーやキュレットが挙げられます。

今回は、グレイシーキュレットについて説明します。

3.グレイシーキュレットについて

ユニバーサルキュレットと異なり、グレイシーキュレットの刃(カッティングエッジ)は片方にのみついています。

そのため両刃のユニバーサルキュレットに比べ、歯肉損傷を最小限におさえて操作することができると著者は考えます。

スケーリングの歯石除去に慣れていない歯科衛生士でも操作しやすい器具です。

また、時代とともにグレイシーキュレットも多くの種類が誕生しています。

刃が大きいスタンダードタイプのグレイシーキュレットの他に、刃の長さや幅が小さい種類のキュレットや、シャンクの寸法が長いキュレットなど、さまざまな種類があります。

このイラストでもわかるように、大きい器具の場合、刃部が歯牙からはみ出てしまい、これでは歯肉縁下の歯石除去を行う際に、歯肉を傷つけてしまう可能性があります。

そのため、グレイシーキュレットを使用する際は、ミニグレイシーキュレットやマイクロミニのグレイシーキュレットの方が、歯頚部付近に使用しやすいと考えています。

歯牙からはみ出さないキュレットを選択する(引用:加藤久子『絵でわかるスケーリングのきほんの本』)
歯牙から刃がはみ出さないキュレットを選択する(引用:加藤久子『絵でわかるスケーリングのきほんの本』)

臼歯部に使用するグレイシーキュレットの番号

臼歯部に使用するグレイシーキュレットは、以下のように分類されています。

  • #11/12、#13/14:術者が立位のポジション用に作られた器具
  • #15/16、#17/18:術者が水平位(座位)のポジション用に作られた器具

この写真は、日本歯科工業社のRDHグレイシーキュレットです。

前歯部用
前歯部用
水平位用臼歯部近心用
水平位用臼歯部近心用
水平用臼歯部遠心用
水平用臼歯部遠心用

術者が水平位で器具操作を行うならば、水平位用の器具を使用することが望ましいです。

水平位用の器具を立位で使用すると、到達性に問題が生じるため、歯石除去が適切に行えないだけでなく、術者の手にも負担がかかる可能性があります。

4.スケーリングの操作方法のポイント

スケーリングを行う際は、4歯固定点を取り、側方圧をかけて器具を動かします。

その際、歯牙の形態歯面にあわせて、垂直ストローク・斜めストローク・水平ストロークを使用します。

器具の操作は、前腕回転運動が行いやすいと思います。

硬い歯石が沈着している際は、側方圧を強くかけるようにします。

この写真は、垂直・斜めストロークを使用して、スケーリングを行っている様子です。

固定点を隣在歯に取ることで、硬い歯石が取れます。

使用器具はRDHグレイシーキュレットの#15/16です。

頬側臼歯部6番中央から近心に向けてのスケーリング
頬側臼歯部6番中央から近心に向けてのスケーリング

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グレイシーキュレットの使い分けについては、かなり以前に変更になり、教科書の内容もアップデートされています。

後輩指導を行う立場の方々も、最新の知識を知ることは大変重要なことです。

しっかりと基本を踏まえ、アップデートしてください。

くわしくは、私の著書をご覧ください。

加藤久子(2021)『絵でわかるスケーリングのきほんの本』デンタルダイヤモンド社.

「絵でわかるスケーリングのきほん」はこちら
『絵でわかるスケーリングのきほん』はこちら

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第1回 プロービング
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