患者さんを納得させるメインテナンスのコツ 第3回 ツールのお手入れ

みなさまこんにちは、柏井伸子です。

今回は前回に引き続き、患者さんとの信頼関係を深め、長くお付き合いいただくためのツールのお手入れ方法をご紹介します。

前回はこちら

第2回 ツールのお手入れの重要性

前回、シャープニング用器材としてシャープニングストーン(以下、ストーン)とテストスティック(以下、スティック)をご紹介しました。

ところでみなさまは、臨床業務の合間にどれくらいの頻度で実践されていますか?

1.あなたはスケーラー派?キュレット派?

実際の口腔内は顎模型と異なり、頬粘膜・舌・口唇が歯列を取り巻き、唾液も吸引しなければなりません。

しかも時間内で終わらせなければならず、気持ちばかりが焦ってしまいがちです。

患者さんに過度な垂直的&水平的圧痛による不快感を与えず、効率のよい処置を行うためにも、まずはご自分のお気に入りのインスツルメントを見つけましょう。

最近では、シックルスケーラーでも少しななめに傾斜していたり(オフセット)、湾曲が小さかったりして、臼歯部にもリーチできるものが販売されています。

「臼歯部の歯間部だからキュレット」という方程式は、選択肢の一つとして頭の中に留め、視野を拡げて考えてみましょう。

オフセットされたシックルスケーラーは前歯部&臼歯部にアプローチ可能
オフセットされたシックルスケーラーは前歯部&臼歯部にアプローチ可能

2.シックルスケーラーのエキスパートになる!

筆者が新人歯科衛生士の頃は、シックルスケーラーには湾曲の大小という2択の選択肢しかありませんでした。

しかし最近では、臼歯の隣接部にも挿入しやすいよう、ブレードが薄くて屈曲しているスケーラーが、数社から販売されています。

コロナ禍が収束し、各地でデンタルショーや学会展示が開催されるようになれば、ぜひ各社のブースを回って手に取って選びたいですね。

シックルスケーラーは、ブレードの角度が90°で作られています。

正しい角度でシャープニングするコツとして、時計の文字盤をイメージして針の組み合わせによる「時刻合わせ」を行います。

シャンク部分が針の「0分」、ストーンの角度が「3分」に合わせます。

シックルスケーラーのシャープニング角度
時計の文字盤を使用したシックルスケーラーのシャープニング

正しい角度を知るためにも、写真にあるような時計の文字盤をプリントし、沿わせるようにして練習してはいかがでしょうか?

シックルスケーラーと同じ両刃のユニバーサルキュレットも、ブレードの角度が90°になっています。そのため、シャープニングの際のシャンクとストーンの角度は、シックルスケーラーと同じになります。

3.さらにグレーシーキュレットへ挑戦!

グレーシーキュレットのシャープニングを続けていると、先端の形が元の四角からとがった三角に変わってきてしまうというお悩みをお持ちの歯科衛生士さんが多いのではないでしょうか?

鎌型スケーラーとは違い、あくまでもグレーシーキュレットは先端に「カドが2つある」四角いノミ型でなければなりません。

では、どうして先端が三角にとがってしまうのでしょうか?

ストーンを上下に操作する際に、手首を内側に向けてこねてしまうと、どうしても2つのカドを落としてしまいます。

そのカドを落とさないためには、「グレーシーには2つのカドがある」という当たり前のことを認識しなおし、ストーンを大きく上下させ、ストーン表面の全体を使うように意識しましょう。

大きなストロークでストーンの全面を使う
大きなストロークでストーンの全面を使う

では、シャープニングの方法です。

グレーシーキュレットは番手により屈曲角度が異なりますが、すべてに共通して「第一シャンク」が目じるしとなります。

ブレードの角度は70°なので、時計にあてて考えると、第一シャンクが「57分」、ストーンが「3分」になります。

グレーシーキュレットのシャープニング角度
グレーシーキュレットのシャープニング角度

4.さあ、最終確認!!

夢中になって強くストーンに圧接させてシャープニングしてしまうと、インスツルメントはどんどん摩耗してしまいます。

スケーラーやキュレットは消耗品ですので、削りすぎないよう頻繁にスティックで切れ味をチェックしましょう。

ここで注意したいのが、スティックの使い方です。

ベテランさんでも間違いがちですが、スティックはプラスチック製であり、シャープなブレードでこすれば削れてしまいます。

横から振り子のようにインスツルメントをあてて食い込みを確認するだけでOKなので、食い込ませた後に引き上げないように気をつけましょう。プラスチックを削り取っても意味はありません。

スティックは横からあてるだけで引き上げない
スティックは横からあてるだけで引き上げない

患者さんにとっても私たちにとっても、キレるスケーラーやキュレットがいかに気持ちいいものかを実感し、シャープニングを楽しみましょう!

患者さんを納得させるメインテナンスのコツ

第1回 ツールの選び方
第2回 ツールのお手入れの重要性
第3回 実践!ツールのお手入れ