患者さんのYesを引き出す!歯科医院で使えるロジカルシンキング講座 Lesson.3 課題に対する答えを正しく伝えよう

みなさんは「ロジカルシンキング」や「論理的思考」という言葉を聞いたことがありますか?

近年、これらに関連するさまざまな書籍が販売されており、本屋さんのビジネス書コーナーや電車の広告などで見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。

ただどちらかというと「一般企業に勤めるビジネスパーソンがもつべき考え方」といったイメージで、歯科医療従事者である私たちにはあまり縁がないと感じている方もいるかもしれません。

しかしこの考え方は、円滑なコミュニケーションをとる上で非常に重要なポイントをいくつもおさえています!

初回では、コミュニケーションとは「メッセージのキャッチボールをすること」であり、メッセージを構成する要素は3つあるということをお伝えしました。

前回までの記事はこちら

Lesson.1 課題やテーマを明確にしよう
Lesson.2 相手に期待する反応について考えよう

今回は、メッセージを構成する最後の要素「答え」について解説します。

歯科医院で使えるロジカルシンキング講座

「課題」に対する「答え」を伝える

Lesson.1では、相手にメッセージを伝える際、まずはじめに「課題やテーマを明確にしましょう」とお伝えしました。
(参照:患者さんのYesを引き出す!歯科医院で使えるロジカルシンキング講座 Lesson.1 課題やテーマを明確にしよう

メッセージを構成する要素の「答え」は、はじめに考えた「課題」に対する「答え」である必要があります。

さらにこの「答え」の要素には、以下の3つがあると考えられています。

  1. 結論
  2. 根拠
  3. 方法

上記の3要素を一つずつ紐解いていきましょう!

結論

課題に対する、伝える側の「答えの核」をなすもの。何かのアクションを提示する場合と、評価や診断を表す場合の2つがあります。

例:検査の結果、○○さんは、歯周治療を受ける必要があります。

根拠

その結論にいたった「理由」。結論の妥当性について、相手を納得させられるものである必要があり、事実と判断の2つがあります。

例:健康なお口と炎症のあるお口の状態を説明します。〜〜〜(説明略)。歯周病にかかると、歯を支える周りの骨が徐々になくなってしまうため、最終的には歯が抜けてしまいます。このようにならないためにも、歯周病の治療を受ける必要があります。

方法

結論がアクションを提示する場合、相手がそのアクションをとれるよう、具体的なやり方を提示するもの。

例:歯ぐきの腫れや出血を減らすには、毎日の歯磨きでできるだけプラークを除去する必要があります。普段のケアで歯ブラシしか使っていないようでしたら、歯間ブラシも使用する必要がありますね。また、4mm以上の歯周ポケットを正常値に戻すには、歯ぐきの中についている歯石も取らなければいけなせん。これは、歯科医院でしか取れないので、何度か通院して取っていきましょう。
お家でのケアと歯科医院でのケア、どちらも頑張ってもらえそうですか?

では上記の例で挙げた、歯周治療の必要性を説明する場合の「結論」「根拠」「方法」について、詳しく考えてみましょう!

歯周治療の必要性を説明する場合の「結論」「根拠」「方法」

相手が納得する答えの説明とは?

今回は、「歯周病が気になる」という主訴を抱える患者さんを例に挙げて考えます。この場合、患者さんの課題は「歯周病を治すにはどうするべきか」ということになりますよね。

この課題に対する答えはいたってシンプルで、「歯周治療を受ける」という「結論」にいたります。

そしてこの結論にいたった「根拠」と、今後患者さんがどういったアクションをとるべきかといった「方法」を提示することで、より患者さんの納得を得られ、適切な行動に結びつけることができるのです。

根拠については、以下の例文を挙げました。

例:健康なお口と炎症のあるお口の状態を説明します。〜〜〜(説明略)。歯周病にかかると、歯を支える周りの骨が徐々になくなってしまうため、最終的には歯が抜けてしまいます。このようにならないためにも、歯周病の治療を受ける必要があります。

ここでは「歯周病が進行すると、最終的には歯が脱落してしまう」という根拠で、歯周治療を受ける必要性を示しています。

歯周病の説明を行う上で特に重要なポイントは、「健康な口腔内はどういった状態であるか」ということをはじめに説明することです。

歯周病についてあまり知識がない患者さんに、ただ「歯ぐきが腫れて出血している」「4mm以上の歯周ポケットが○ヶ所ある」ということを伝えても、「何がいけないの?」と思われてしまう可能性があります

そのため、健康な口腔内は「歯ぐきが引き締まっている」「出血がない」「歯肉溝は3mm以内が正常値」であることを先に伝えましょう。

その上で、以下のようなことを加えて説明し、現在の患者さんの口腔内には異常が起きていて、「炎症が起こっている」ということを患者さん自身に認識してもらう必要があります。

○○さんのお口の中を検査したところ、歯ぐきが腫れて出血するところが多く、歯ぐきの中にも歯石がついてきています。4mm以上の歯周ポケットもほとんどの歯に見られる状態です。

では、最後の「方法」についても考えてみましょう。

例:歯ぐきの腫れや出血を減らすには、毎日の歯磨きでできるだけプラークを除去する必要があります。普段のケアで歯ブラシしか使っていないようでしたら、歯間ブラシも使用する必要がありますね。また、4mm以上の歯周ポケットを正常値に戻すには、歯ぐきの中についている歯石も取らなければいけなせん。これは、歯科医院でしか取れないので、何度か通院して取っていきましょう。
お家でのケアと歯科医院でのケア、どちらも頑張ってもらえそうですか?

ここでは、患者さんがとるべきアクションとして、以下の2つの方法が提示されています。

  1. 毎日歯ブラシと歯間ブラシを使って、できるだけプラークを除去する
  2. 歯科医院に何度か通院して歯石を除去する

① では、歯肉の腫脹や出血を軽減させる方法について、② では、4mm以上の歯周ポケットを正常値に戻す方法について提示しています。

このように、「何をすれば何がどう改善するのか」ということを正しく理解してもらうことで、歯周治療をスムーズに進めていくことができるのではないかと私は思います。

歯科医院に来院する患者さんの多くが必要とする治療だからこそ、どんな患者さんにもわかりやすく、かつ正確に伝えられるようになりたいですよね。

歯周治療の説明に限らず、患者さんやスタッフからの質問に回答する時などでも、自分が出した「結論」に説得力があるか、「根拠」や「方法」は抜けていないかなど、よく考えた上で「答え」を導き出してみましょう♪

患者さんやスタッフからの質問に回答する時

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普段仕事をする中で、何気なくとっているコミュニケーション。

しかし深掘りしてみると、改善できるポイントがたくさんあることに気づきます。

患者さんだけでなく、一緒に働くスタッフとのコミュニケーションにおいても、ぜひロジカルシンキングの知識を応用してみてください!

参考文献:照屋華子, 岡田恵子(2001)『ロジカルシンキング〜論理的な思考と構成のスキル〜』東洋経済新報社

歯科医院で使えるロジカルシンキング講座

Lesson.1 課題やテーマを明確にしよう
Lesson.2 相手に期待する反応について考えよう
Lesson3. 課題に対する答えを正しく伝えよう