訪問歯科現場でのヒヤリハット体験談 vol.2 コミュニケーションの大切さを痛感したエピソード

みなさん、こんにちは。歯科衛生士歴16年のYota Morisakiです。現在は訪問歯科で働きはじめて7年ほどになり、業務としては、主に有病者や高齢者の方に対する口腔ケアを行っています。

そんな訪問歯科の現場では、一般歯科とは異なるアクシデントやインシデントに見舞われることがあります。

この連載では、訪問歯科現場で働く中で実際に起きた「ヒヤリハット」体験をご紹介します。

前回の記事はこちら

vol.1 無理な口腔ケアは危険だと感じたエピソード

コミュニケーションにおけるヒヤリハット

訪問歯科の歯科衛生士は多職種と連携して口腔ケアを行うため、患者さんの状態を細かく共有する必要があります

また、コミュニケーションを通常通りに行うことができない患者さんもいるため、小さなすれ違いが大きな事故に繋がる可能性があります。

ヘルパーの方とのすれ違い

いつも口腔ケアを行っているAさんは、病気の後遺症で少ししか身体を動かすことができません。

そのため、ご家族が留守の際は、最低限のものをベッド周りに置いて生活しています。

日中は一人でいることも多い方ですが、その日のタイミングによってはヘルパーの方が来ていることもありました。

ヘルパーの方とバトンタッチで訪問するときは、ベッド周りのものをよけたまま、「じゃ、このまま引き継ぎます」という形で口腔ケアをしていました。

いつもはそれでスムーズにケアを行えていたのですが、ある日、予約変更などが重なって私がAさん宅に伺えなくなってしまったことがありました。

しかし、ヘルパーの方は私が来ると思っているので、Aさんの身の回りのものをよけたまま帰ってしまったのです

Aさんはご家族が戻ってくるまで、自分の身の回りの最低限のことができず、本当に困ったと言っていました。

特別な体調変化や事故には繋がりませんでしたが、本当にヒヤリとした経験でした。

電話連絡できない

私が口腔ケアを行っている患者さんの中には、電話をとることができない状態の方や、ご自宅に電話がない方がいます。

身体は動かないけれど、留守番電話は聞けるという方ならまだ良いのですが、それすら不可能な方だと、渋滞や事故などで訪問が遅れてしまっても連絡のしようがないというケースがあります。

口腔ケアを行っているOさんの自宅は非常に入りくんだところにあって、車を停める場所に悩んでいたこともあり、数回行っても道が覚えられませんでした。

ある日、「ここならいいだろう」と思った駐車場を、ようやくナビに保存しました。

その次の訪問では、ナビに情報が入っているから大丈夫だと思っていたのですが、その日に限って代車で伺うことになってしまいました。

私は案の定道に迷ってしまい、電話を入れようとしたのですが、Oさん宅には電話がないことに気づき、何の連絡もできないままOさんを15分程度待たせてしまうことに…

何か事故があったわけではありませんが、「いつも時間通りにいらっしゃるので本当に心配しました」と言われた際には、大変申し訳なく思いました。

車での訪問は道路事情にも左右されやすく、時間を完全に守ることがかなりむずかしいので、電話連絡できない方には、訪問時間に幅をもたせて伝えなければならないと気づきました。

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今回ご紹介した「ヒヤリハット」エピソードから学んだポイントは、以下の2つです。

  1. 日々の訪問診療で他職種連携を行っている場合は、予定の変更などの連携も密に行う
  2. 電話連絡ができない患者さんには、訪問時間に幅をもたせて伝える

一般歯科においてもコミュニケーションはもちろん大切ですが、患者さんとの距離が離れていたり、タイムラグがあったりする訪問歯科の現場では、より細かく患者さんやヘルパーの方と情報共有をする必要があります。

今回紹介したようなことが起こると本当にヒヤリとしますが、訪問歯科での口腔ケアは、とてもやりがいのある仕事です。

ご興味をおもちの方は、ぜひ訪問歯科の世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。

訪問歯科現場でのヒヤリハット体験談

vol.1 無理な口腔ケアは危険だと感じたエピソード