実録!訪問歯科の現場ってこんなところ vol.1 業務内容とルール

みなさん、こんにちは。歯科衛生士歴16年のYota Morisakiです。

現在は訪問歯科で働きはじめて、7年ほどになります。

訪問歯科では、訪問が必要な患者さんに対応するために、業務も一般歯科とは少し違う内容となっています。

本記事では、一般歯科にお勤めの方に向けて、一般歯科と訪問歯科の業務の違いについてお伝えできればと思います。

患者さん宅へ訪問するメンバー

患者さんの自宅に訪問するのは、歯科医師歯科衛生士歯科助手コーディネーターです。

実際に訪問する際の組み合わせは、歯科医院の考え方によって変わります。

たとえば「歯科医師+歯科衛生士」「歯科医師+コーディネーター+歯科助手」など、状況に応じてさまざまな組み合わせが考えられます。中には歯科医師が一人で訪問して、車の運転から訪問先での治療までをすべてこなすというケースもあるようです。

また、訪問専用の事務所がある歯科医院などでは、事務や経理の方などが事務所に常駐している場合もあります。

職種ごとの業務内容と役割

続いて、職種ごとの業務内容や役割についてご紹介します。

歯科医師の業務内容

歯科医師の業務内容は、主に「治療」と「カルテの記入」です。歯科衛生士の仕事内容によっては、歯科医師がクリーニングなどの一部の口腔清掃を担う場合もあります。

ベッドの高さや照明の位置など、治療を行う環境は訪問先によってそれぞれ異なります。そのような状況下で、一定のレベルの治療をすべての患者さんに提供するのは、とても大変です。

歯科衛生士の業務内容

歯科衛生士の業務内容は主に「口腔ケア」です。
一人で訪問するところもあれば、歯科医師とともに訪問し、歯科助手のような立ち位置で医師のサポートを行う歯科医院もあります。

歯科衛生士として口腔ケアを行う場合は、訪問時に何を行ったか「歯科衛生実地指導録」に記入をします。

歯科助手の業務内容

歯科助手の業務内容は、主に「歯科医師の診療介助」です。また、出発前の機材の準備やカルテの準備なども歯科助手が担当する場合が多いです。現場に入ってからは、資料の記載や患者さんのフォローなどを行います。

現場での診療介助は大変ですが、訪問歯科では機材不足などがあっては診療できなくなってしまう可能性があるため、準備の段階からとても神経を使う内容です。

コーディネーターの業務内容

コーディネーターの業務内容は、主に「アポイントの管理」や「一日の全体の進行の取り決め」などです。

コーディネーターには男性が多く、車の運転を任されることもあります。その他にもケアマネージャーとの連絡や、時には現場で歯科助手のような診療介助を行うこともあります。

また、訪問歯科用の事務所がある歯科医院の場合、コーディネーターの一人が事務所でアポイント全体の管理をしているところもあります。

歯科衛生士が訪問する時のルール

訪問歯科では、歯科衛生士が患者さんのもとへ単独で訪問することができます。しかしその際には、守らなければいけないいくつかのルールがあります。

歯科衛生士が単独で訪問する条件は、以下の通りです。

  • 1回の訪問につき20分以上の時間を設けること
  • 1ヶ月の訪問回数は4回までであること
  • 歯科医師が定期的に訪れること

1回の訪問につき20分以上の時間を設けること

歯科衛生士の訪問は、診療報酬の算定要件により「1回あたり20分以上」と定められています。20分未満の場合は「訪問歯科衛生指導料」が算定不可となるため、注意が必要です。

一方で時間の上限はなく、20分以上時間がかかるのは問題ありません。患者さんとお話しをしていると時間が経つのはあっという間ですが、基本的には20~30分程度を目安にアポイントを組むことが多いです

1ヶ月の訪問回数は4回まで

歯科衛生士による訪問は、先述した「訪問歯科衛生指導料」を基本的に算定し、保険診療として行われます。そして、保険の適用範囲内で訪問可能な回数は1ヶ月に4回までと定められています。

そのため、たとえば5週目のある月などは、週一で訪問している場合でも、代わりに歯科医師に訪問してもらったり、お休みしたりすることがあります。

4回よりも少ない分には問題がないため、もともと月2回の訪問で取り決めている患者さんもいます。

歯科医師が定期的に訪れること

歯科衛生士の口腔ケアは、歯科医師が必要と認めた上で行われなければなりません。

そのため、普段は歯科衛生士が中心となって訪問している患者さんであっても、3ヶ月に一度は歯科医師が検診に訪れる必要があります

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今回は訪問歯科の現場の実際として、訪問歯科の業務内容とルールについてお伝えしました。

ご興味をおもちの方は、ぜひ訪問歯科の世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。

参考文献:
*1 「今日からできる歯科訪問診療の手引き」2021年追補版-全国保険医団体連合会
*2 訪問診療に関する時間と報酬-日本訪問歯科協会