わたしのDA LIFE #07 八木菜々子さん『助手だから…と過小評価しないでほしい』

歯科医院で働く職種の一つである「歯科助手」。

法律で決められた業務がない反面、さまざまな役割を任される職業です。

dStyleでは、さまざまなシーンで活躍する歯科助手にスポットライトを当て、等身大の歯科助手ライフを語っていただきました。

このインタビューが、歯科業界で輝くきっかけになれば嬉しいです。

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今回は、歯科助手歴10年目の八木菜々子さんにお話を伺いました。

二つの歯科医院に勤めながら、dStyleにて執筆活動もスタート。さらには芸能事務所にも所属するなど、幅広く活躍されています。

八木さんの記事はこちら

歯科助手 八木菜々子さん
歯科助手 八木菜々子さん

なんとなく選んだ歯科助手の道

実は積極的に歯科助手になりたいと思っていたわけではなく、自宅から通える職場が歯科医院しかなかったんです。でもとてもやりがいがあり、今では天職だと思っていますね。

意外だったメリットは、全国どこでも働けること。本格的に演劇を学ぶために上京したのですが、引っ越した次の日には仕事が決まりました。

今は芸能事務所に所属しながら、二つの歯科医院で働いています。

医院の特色に合わせた立ち振る舞い

常勤の歯科医院には週4回、かけもちの歯科医院には週1回勤務しています。

常勤の医院では臨床でのアシスト業務がメイン。新しい医院で院長も若く、Web集患に力を入れているため、患者層は現役で働いている若い方がほとんどです。インターネットで事前に情報収集している方も多く、サクサク話を進めてハッキリ結論を伝えるスタッフが好まれます

一方、かけもちの医院は昔ながらの歯科医院で、院長はベテランで患者さんも何年も通い続けている高齢の方が中心です。

世間話をしたり、イレギュラーにもできる限り対応したりと、人情味のあるスタッフが好まれる医院ですね。私はレセプト担当で、患者さんと話す機会もあります。

どちらが「良い」「悪い」ではなく、単純に「違う」。医院の方針や患者さんに合わせて、対応を変えています。このときに役立っているのが演劇での経験です。自分らしさを残しつつも、状況に合わせて役を演じるように話し方や立ち振る舞いを変えています。

歯科医院の方針や患者さんに合った対応を心がけています
歯科医院の方針や患者さんに合った対応を心がけている

主体的な黒子でありたい

歯科助手の役目は、大きく分けて二つあると考えています。

一つは、歯科医師と歯科衛生士が快適に働ける環境をつくること。黙って指示を待つのではなく、治療に参加している気持ちで主体的に行動するようにしています。

その一環として「早く正確に」を目標に掲げ、一人でタイムアタックをすることもあります。器具の準備やアシストを手早く、かつ正確に行い、時間内に治療を終えることができると「よし、時間内にできた!」みたいな(笑)

治療が長引くと患者さんをお待たせするだけでなく、スタッフの残業時間も増えるので、治療中も時計を見ながら立ち回っています。

もう一つの役目は、患者さんにとって心地よい雰囲気をつくることです。たとえばアシストがもたついて先生の気分を害してしまったら、良くない空気感が患者さんにも伝わってしまうと思うんです。

だから使う器具や声がけをしてほしいか、してほしくないかなど、それぞれの先生の特徴を頭に入れ、治療がスムーズに進められる工夫をしています

もちろん患者さんとの会話も大切にしていて、リラックスしてもらえるように努めています。

口の中は、生活習慣が出てしまうセンシティブなところです。「なんか雰囲気の良い医院だな」「スタッフの対応が良いな」と思ってもらえたほうが、抵抗なく口の中を見せられるのではないでしょうか。

職場のスタッフとは良い関係を築けています(右から3人目が八木さん)
職場のスタッフのみなさんと(右から3人目が八木さん)

自分にブレーキをかけるのはもったいない

歯科医師と歯科衛生士に専門分野があるように、歯科助手にも専門分野があっていいと思っています。何か資格を取らなくても、自分の強みや自信をもてる分野があるだけで、仕事への姿勢も楽しさも変わってくるはずです。

私の強みは「人当たりの良さ」と「オールマイティに対応できること」ですが、「セメントを練るのが得意」などでも十分だと思います。

これまで6つの歯科医院に勤務してさまざまな歯科助手を見てきましたが、できることに自らブレーキをかけている方が多い印象です。

「私はアシスタントだし」と、どこか部外者のような気持ちが透けて見える気がして。でも、そんなのもったいない!

たしかに歯科医師や歯科衛生士のような技術や知識はないため、引け目を感じてしまうかもしれません。でもこれらは、もともと歯科助手には求められていないこと。

患者さん、歯科医師、歯科衛生士が快適に過ごせる環境をつくる」というサポートの役割に誇りをもち、主体的に仕事に取り組む歯科助手が増えたら良いなと思っています。

私は患者さんとも積極的に話すようにしているのですが、以前勤めていた歯科医院では、印象的な出来事がありました。

10歳くらいの女の子の患者さんに退職することを伝えたら、感謝の気持ちをつづった手紙をくれたんです

あの子にとって、歯科医院は歯の治療や掃除をするだけのところではなく、お姉さんとおしゃべりもできる楽しい場所だったのかもしれません。7年ほど前のことですが、手紙は今でも大切に保管しています。

通院していた女の子からもらった手紙
通院していた女の子からもらった手紙

あの子も今は20歳前後。あのまま歯科に良いイメージをもち続けて歯を大切にする大人になっていたら、こんな嬉しいことはないですね。

これからも歯科医師、歯科衛生士、患者さんに気を配りながら、心地よい医院づくりのサポートをしていきたいです。

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dStyleでは、“歯科で働く希望と可能性をあなたに“をコンセプトに、さまざまなフィールドで活躍する歯科助手の方々へインタビューを行っています。

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