新生児期の睡眠時間はブラキシズムの発生率に影響すると判明

東北大学は9月1日、乳幼児期、特に新生児期の睡眠時間が短いとブラキシズムの発生率が高くなる傾向があることを発表しました。

この研究は、東北大学病院の土谷忍助教らと、東北福祉大学保健看護学科の土谷昌広教授らのグループによるもの。

今回の研究結果により、新生児期の良質な睡眠習慣は、将来的なブラキシズムのリスク回避に効果的である可能性が示唆されました。

新生児期の睡眠時間はブラキシズムの発生率に影響すると判明

これまでの睡眠時間とブラキシズムの関係についての認識

ブラキシズムは物を食べていない状況での反復的な咀嚼運動で、睡眠時によく起こることが知られています。

ブラキシズムは睡眠障害との強い相関があるといわれていますが、乳幼児期の睡眠習慣が将来的なブラキシズムにどのように影響するかについての報告はありませんでした。

そこで今回、土谷忍助教らの研究グループは子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)のデータを用い、乳幼児期の睡眠時間とブラキシズムとの関連について研究しました。

月齢が低いほど睡眠時間とブラキシズムの関連が強まる

研究では、90,148人の子どものデータを使用し、乳幼児期(1ヶ月・6ヶ月・1歳・1歳半・3歳の時点)の睡眠時間とブラキシズム(2歳・4歳時点)との関連を調査しました。

子どもの睡眠時間の評価については、保護者に記載してもらった自記式質問票に含まれた睡眠チェック表から計算。

また、質問票に含まれている、分娩年齢や睡眠時間、喫煙・飲酒歴などの母親の状況や、子どもの睡眠と関連する性別や睡眠姿勢などの要因を調整項目として解析に用いました。

その結果、2歳と4歳時でブラキシズムを認める子どもの割合は、それぞれ16.2%と22.5%でした。

2歳と4歳時でブラキシズムを認める子どもの割合

解析結果としては、生後1ヶ月である新生児期の睡眠時間が長いほど、ブラキシズムを認める子どもの割合は減少。しかしながら、成長に伴い睡眠時間とブラキシズムの関連は弱まり、3歳時の睡眠時間ではそのような傾向は皆無であったといいます。

特に2歳と4歳時に習慣的なブラキシズムを認める子どもについては、新生児期における睡眠時間の短さとの関連がより顕著でした。

また、新生児期の日中と夜間の睡眠時間とを比較すると、夜間の睡眠時間がブラキシズムの発生と相関していることが判明しました。

生後1ヶ月時の睡眠時間と4歳時のブラキシズムの関連
生後1ヶ月時の睡眠時間と4歳時のブラキシズムの関連(グラフはプレスリリースより引用)

研究データとして用いられた「エコチル調査」とは?

エコチル調査とは、環境省が実施している子どもの健康と環境に関する全国調査のこと。「エコロジー」と「チルドレン」を組み合わせて「エコチル調査」と名づけられたようです。

胎児期から小児期にかけての化学物質への曝露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22年度から全国で約10万組の親子を対象として開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査です。

調査では、臍帯血や血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしています。

エコチル調査の詳細はこちら
エコチル調査の詳細はこちら

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今回の研究結果によって、歯科の観点からも、新生児期のうちから生活や睡眠のリズムを整えることは重要だということが示されました。

調査結果を受け、著者らは以下のように述べています。

新生児期の良質な睡眠習慣は、「寝る子は育つ」という言葉のように、健やかな口腔発育にも繋がるかもしれません。

しかしながら、新生児期の夜間の睡眠時間をコントロールすることは非常にむずかしいのも事実。

夜間の睡眠時間が短いことによるブラキシズムの発生を過度に心配するのではなく、口腔の筋肉や顎を正しく成長させることが重要なのかもしれません。

天然歯を健全に守っていくことで、ブラキシズムによる弊害を可能な限り減らせるのではないでしょうか。