10倍がゆ?BLW?離乳食にまつわる疑問を解決!歯科医師×保育士の仁野由貴先生によるセミナーが開催

11月11日、歯科医療従事者や子育て中のママを対象としたオンラインセミナー『子どもの成長発育から考える離乳食 〜離乳食はもっと健康的で、楽ちんで良い!〜』が開催されました。

セミナー講師の仁野由貴(にのゆき)先生は、歯科医師と保育士のダブルライセンスをもちながら、広島市の歯科医院では副院長をも務める先生。

二人のお子さんの子育てを通じて「一般的な離乳食」に対して疑問をもち、それをきっかけに離乳食だけでなく、子どもの発育や発達についても勉強してきたといいます。

歯科医師 × 保育士 仁野由貴先生
歯科医師 × 保育士 仁野由貴先生

歯科医師の目線だけでなく、保育士というまた新たな目線をもったアプローチに、受講生のみなさんは終始メモが止まらない様子でした…!

今回はその貴重なセミナーの内容をダイジェストでお伝えします♪

子どもの成長発育から考える離乳食 〜離乳食はもっと健康的で、楽ちんで良い!〜

「一般的な離乳食」が日本に定着した背景

はじめに仁野先生は、現在日本で広まっている一般的な離乳食が定着した背景について説明しました。

現在の離乳食は、厚生労働省が2007年に作成、2019年に改訂した『授乳・離乳の支援ガイド』の内容に沿った形で進められているといいます。仁野先生は現在のガイドラインだけでなく、それまでに用いられていた『離乳基本案』の特徴、これらのガイドラインが策定された背景などを詳しく紹介。

その上で、現在の形態と栄養のみを考慮した「親主導」の食事ではなく、赤ちゃんが食べれるかな?おいしいかな?と考えながら、「赤ちゃん主導」で進める食事が必要なのではないかと問いかけました。

また、仁野先生は、目と手をしっかり使って食べる練習をさせてあげることが重要と説明。セミナーではホムンクルスの図を見せながら、目と手を使って食べることの重要性について語りました。

ペンフィールドのホムンクルスの図
ペンフィールドのホムンクルスの図*1(画像は静岡産業大学「手」より引用)

離乳食をはじめる正しい時期とは?

次に仁野先生は、離乳食をはじめる時期について解説。離乳食は月齢ではなく、一人ひとりの発達の段階に応じてスタートするのが良いと伝えました。

そして離乳食スタートの時期を見極める、以下の3つのポイントについて説明しました。

  1. 自分でお座りできる
  2. 口を閉じてごっくんする
  3. 食べたそうにする

お座りや嚥下を正しくできるようになっているか確認する方法や、赤ちゃんの空腹を作る条件、月齢に応じた必要な睡眠時間など、子育てに必要な知識が満載でした!

仁野先生は、発達というものは「促す」のではなく「見守る」ものといいます。そうすることで、赤ちゃんは「食」を前向きに捉えることができると語りました。

親が座らせる場合と、赤ちゃんが自分で座る場合とでは、使う骨が違ってくる
親が座らせる場合と、赤ちゃんが自分で座る場合とでは、使う骨が違ってくる

離乳食をすすめる5つのステップを知る

続いて仁野先生は、離乳食をすすめる上で重要となる、以下の5つのステップについて解説しました。

  1. 味覚の窓へのアプローチ
  2. 咀嚼の練習期(あぐあぐ期)
  3. 指先でつまんで自分で食べる時期
  4. 一口量を覚える時期
  5. 乳歯列が完成する時期

各ステップに応じた食べ物や誤嚥しやすい食べ物、離乳食が順調にすすめられているかを確認する方法だけでなく、親子が一緒に食事の時間を楽しめるような工夫についても説明。

たとえば ④ の時期であれば、食材を大きめにカットすることで一口量を覚えさせることができるといいます。子どもが食材を飲み込めなくて吐き出してしまうこともありますが、仁野先生いわく「吐き出してOK」とのこと。

子どもはそういった経験を繰り返すことで、一口量を覚えていくのだと伝えました。

今までの離乳食に関する一般的な知識とは違い、ママが納得、安心できるお話ばかりで、歯科医療従事者としても初めて得られる知識がたくさんありました。

咀嚼の練習期(あぐあぐ期)
咀嚼の練習期(あぐあぐ期)におすすめの食材

離乳食はどのように食べるのが正解?

次に仁野先生は、子どもが食事を摂る時の姿勢や食べ方、「どんな環境で」「どんな雰囲気で」食べることが重要かを説明しました。

とくに詳しく説明した内容は、以下の2点について。

  1. 子どもが食事で使う道具
  2. 食べる時の親や周りの環境

① については、イスの選び方や座り方だけでなく、親が座る位置、水分をとる時に使用するマグやコップ、ストロー飲みの注意点にも言及。正しい口唇圧と頬圧、舌圧が正しい歯並びを作ると語りました。

また、② については、「一緒に食べること」と「楽しく食べること」に焦点をあて、その重要性を解説した仁野先生。

とくに印象深かったのは、子どもの「こ」食についての説明。仁野先生は、今回のセミナー内容を日々の離乳食に活かすことで、9種類の意味をもつ「こ」食のうち、「個食」「固食」「粉食」「濃食」の4つが防げるといいます。

中でも、親と子がバラバラなものを食べる「個食」は、離乳食を作っている多くの家庭が陥ってしまいやすい状況だと感じました。親が気づかないうちに、子どもが食事を楽しめない状況を作っていることもあるとわかり、大きな衝撃を受けました。

親子が一緒のものを一緒に食べることで防げる4つの「こ」食
親子が一緒のものを一緒に食べることで防げる4つの「こ」食

離乳食のゴールはどこ?「健康」の先にあるもの

仁野先生はセミナーの最後に、「親が頑張らなくても良い!」「今日から使える!」離乳食の作り方について、たくさんの具体例を紹介しました。

日本人が主食としてきた「米+汁」の食事の素晴らしさや、砂糖の過剰摂取による影響について解説し、3歳までの砂糖の摂取は極力控えるようにとあらためて警鐘を鳴らしました。

また、離乳食を通して、子どもが「健康」になることを求めるだけでなく、健康の先にある「余裕」、余裕から生まれる「楽しさ」を追求し、子どもと楽しく過ごすことや、家族全員が幸せでいられることを考えてもらいたいと語り、セミナーを締めくくりました。

楽しく食べる
親も子も「食べる」ことに対してポジティブなイメージをもってもらいたいと話す仁野先生

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歯科衛生士学校では決して学ぶことのできない、離乳食にまつわるセミナー。

仁野先生のセミナーには初めて参加しましたが、あっという間に時間が過ぎ、質疑応答の時間でも多くの質問が寄せられていました。

質疑応答の時間では、受講生の気持ちや置かれている状況に優しく寄り添いながら回答している仁野先生の姿が印象的でした。

歯科医療従事者だけでなく、全国のママもかならず知っておきたい知識が学べるセミナーです。

第二弾!離乳食セミナーの詳細はこちら

日時:12月21日(水)10:00〜11:30
場所:Zoomによるオンラインセミナー
費用:3,500円

他にも個別相談の受付ブログでの発信など、幅広く活躍する仁野先生の活動を知りたい方はこちら

参考文献:
*1 Penfield W, Boldrey E. Somatic motor and sensory representation in the cerebral cortex of man as studied by electrical stimulation.  Brain. 1937;60: 389-443