歯質改善やお口周りのトレーニングにも!口腔機能の向上に役立つ「デンタルガム」の活用法

こんにちは、歯科衛生士の瀬戸口祐子です。私はLINKCARE.lncというグループを立ち上げ、歯科衛生士学校の教員として培ったノウハウや臨床現場での経験を活かし、「気軽に楽しく、わかりやすく学ぶ」というコンセプトのもと、歯科衛生士の教育を行っています。

また、他の分野で活躍されている専門家をゲストに迎え、受講生に満足を届けられるように活動をしています。

今回は、まだまだ知られていない、無限大の可能性を秘めたデンタルガムの魅力についてお話しさせていただきます。

デンタルガムの効果とは?

デンタルガムは主に、口腔環境や口腔機能の向上といった目的で使用され、噛むことによる唾液分泌量の増加や、口腔周囲の筋肉の強化が期待できます。

また、う蝕や歯周病の予防だけでなく、脳の活性化や姿勢の安定など、口腔内にとどまらず全身に良い効果をもたらすともいわれています。

デンタルガムは市販のガムに比べて有効成分の配合率が高く、追加で配合されている成分もあります。

そして、歯科医院で効果的な噛み方を指導することで、その利点を最大限引き出すことができるようになっています。

三大デンタルガムの特徴

口腔内の機能や環境、歯質が改善することで有名な「三大デンタルガム」には、「キシリトール」「リカルデント」「ポスカF」があります。それぞれの特徴を知ることにより、患者さんに合った予防指導が行えるようになります。

キシリトール(市販品はキシリトール配合が少ない)

キシリトールガムは甘味成分のすべてがキシリトールであるため、う蝕の原因を作ることなく噛むトレーニングや唾液分泌を促進させることが可能です。

作用機序を説明すると、キシリトールはう蝕原性菌に対して静菌作用を有するため、う蝕の原因菌の発育を阻害し、細菌数を減少させます。また、キシリトールは細菌の酸産生も抑制するため、歯の再石灰化を生じやすくします。

摂取する上で気をつけるポイントは、大量摂取をしないということです。キシリトールは糖アルコールのため、大量に摂取すると腸の水分吸収が阻害され、下痢や腸内発酵によりガスが蓄積して腹部の膨張感を感じるようになってしまいます。お腹がゆるくなってしまう方もいるため、注意が必要です。

リカルデント(市販品はカルシウム配合が少ない)

リカルデントはキシリトールに加え、カルシウムが多く含まれているため歯質の改善を期待することができます。

リカルデントには「CPP-ACP」という成分が含まれており、牛乳由来の天然成分であるカゼイン・ホスホペプチド(CPP)とアモルファス・カルシウムホスフェート(ACP)の複合体で、溶液内でリン酸カルシウムを沈殿させ過飽和状態にします。期待できる効果としては、歯の脱灰抑制や再石灰化の促進、耐酸性を向上することが挙げられます。

ただし、牛乳アレルギーの方には禁忌のため、注意が必要です。

ポスカF(市販品はフッ素が入っていない)

ポスカFには、唾液に溶けて歯に浸透しやすく工夫されたカルシウムである「リン酸オリゴ糖カルシウム(POs-Ca)」と、歯にミネラル分を運搬してくれる働きがある「フッ素」が配合されています。噛むことによる歯の再結晶化や、酸性に傾いた口腔内を中性に戻す効果があることが大規模な実験データで証明されています。

歯が再結晶化するイメージ画像(画像は江崎グリコ株式会社よりご提供)

再石灰化は失われた歯のミネラルが供給され、歯牙が一部修復されるイメージですが、再結晶化は健康な歯の構造を持った結晶が良い状態に復元されるイメージです。再石灰化よりも結晶の修復が促進され、より緻密で良い歯質の状態になる印象です。

POs-Caに使用されている原料は、じゃがいも由来のカルシウムや、緑茶から生成されたフッ素です。カルシウムがフッ素と結合しないように処理されているため、カルシウムとフッ素が同時に存在できる画期的なガムで、江崎グリコ株式会社の特許でもあります。

デンタルガムの摂取方法

デンタルガムは誤嚥しない人を対象として、子どもから高齢者まで幅広く口にしてもらうことができます。

一方で、デンタルガムの種類によっては、推奨される噛み方や噛むタイミング、噛む時間が異なります。今回は、ポスカFを例に摂取方法を紹介します。

ポスカFの摂取例

食べ方は子どもが1回1粒、大人は1回2粒で、20分以上、1日3回を目安に噛んでもらいます。

味は3種類あり、ミント成分が入っていない子ども向けのイチゴ味と、ペパーミント味、マスカット味があります。

噛むたびに歯にカルシウムとフッ素が供給されるため、歯質の向上唾液分泌の促進、それに伴うう蝕予防、また、マスクによる口腔乾燥口呼吸の防止など、たくさんの効果を得ることができます。

デンタルガムはどんな患者さんにおすすめできる?

デンタルガムは、「セルフケアでの活用」「口腔機能の向上」「歯質改善」におすすめです。それぞれの目的に応じたおすすめの摂取方法をご紹介します。

セルフケアでの活用

間食が多い方には、間食をガムに変えてもらいます。お腹がゆるくなる方は、1日6粒を目安に噛む量を調整します。

食後ブラッシングができない方は、ガムを噛んで唾液の分泌を促進させ、食後の酸性の環境を中性に戻します。噛むタイミングはいつでもOKです。

口腔機能の向上

噛む習慣をつけることを目的とした使い方がおすすめです。

お口ポカンの子どもや口呼吸の方は、まずガムを噛む習慣をつけながら、少しずつ長く噛めるようにします。顎が痛くならない範囲で目安20分は噛み続けられるように、味が長く続くものをおすすめしましょう。

歯質改善

健康意識が高い方には、お酢など健康食品に含まれる酸による歯へのダメージに注目して指導を行います。

酸蝕嗜好の方には、フルーツやワインなど酸性度が高いものの嗜好を問診します。スポーツをされる方には、疲労回復に用いられるクエン酸や、スポーツドリンクなどの摂取状況を確認します。

このような方は、酸蝕症のリスクが高くなっていることが多いので、ガムを噛むことによって唾液分泌、再石灰化を促進させる必要があります。

ガムでの唾液分泌の促進による再石灰化や、ミネラルの補給による歯の修復について説明し、長期間噛んでもらうように指導します。

ポスカを用いた指導中のお写真
LINKCARE主催のセミナーでもデンタルガムについて学びました

今回はデンタルガムの臨床への取り入れ方について解説しました。

特定保健用食品(市販品)と歯科専売品の相違点を理解した上で、「間食はやめてください」「歯磨きを頑張ってください」と一方的に言うだけの指導はやめて、「食べるほど良い」歯の習慣を、患者さんと一緒に実感してみませんか?