「健康」を「財産」へ変えられる歯科衛生士を目指して 第8回 歯科衛生士中心で展開するマネージメント

連載最終回となる今回のテーマは、「歯科衛生士中心で展開する予防マネージメント」です。

「健康」を「財産」へ変えられる歯科衛生士を目指して 第8回 歯科衛生士中心で展開するマネージメント

“守り”の予防から、“攻め”の予防へ!

定期健診やメインテナンスの際、患者さんの症状について悩むことも多々あるかと思います。ですがそのときに、

「なぜだかわからないけど状態はよくなったから、結果オーライだよね」
「前より状態が悪くなっちゃった…でも、原因がわからないしなぁ」

と、そのままにするのは医療人としてNGです!

患者さんの口腔内環境や症状の変化について何か気付いたことがあれば、その都度、

  • なぜ、症状が改善されたのか?
  • なぜ、症状が悪化してしまったのか?

について、患者さんや歯科医師とともに、考えなければなりません。

自主性や問題解決力があるかどうかも、もちろん大切なことです。ですが、根本的な原因に対して見て見ぬふりをせず、原因に向き合う力を養うことは、それ以上に大切なのです!

これからの予防は、“守り”から“攻め”(=疾患が起こる前に、止める)へとスタイルを変えていかなければ、十分な結果は得られません。

私たち歯科衛生士は、日々のアシスタント業務や患者さんとのコミュニケーションを通じて、患者さんが「この歯科医院に、一生通い続けたい!」と感じられるような価値ある時間や、“後味”として残る具体的な感動体験を、提供し続けていかなければなりません。

予防において歯科衛生士に求められるのは、ゴール達成能力よりも、ゴール設定能力です!

歯科医師の監督のもと、患者さんのための予防プログラムを、主体的に提案・管理・実行できる歯科衛生士こそ、ケアゾーン運営の中心となるプライマリケア・ハイジニストといえます。

まずは日々の業務内容をしっかり把握し、優先順位を考えたうえで実行に移していくことから、はじめてみましょう。

歯科医師の監督のもと、患者さんのための予防プログラムを、主体的に提案・管理・実行できる歯科衛生士を目指しましょう

身につけておきたい、3つのマネージメントポイント

1.業務マネージメント:自分に与えられた業務を正しく理解して、遂行できる能力

失敗ケースとしてありがちなのが、

  • 歯科医師A:その業務に関しては、歯科衛生士のBさんに任せている
  • 歯科衛生士B:A先生からはその業務は任されていないので、わかりません

というような例です。

歯科医師Aは任せている“つもり”、歯科衛生士Bは任されていない“はず”と、お互いに業務コミュニケーションが不足していたため、このような主張の食い違いを招いてしまっています。

誰が、いつ・どこで、どんな業務に就くのか、をスタッフ全員で日頃から共有しておくことが、業務の効率化を図るにあたって、とても大切なポイントです。

また、業務を機械的にこなそうと手順だけを覚えようとするのではなく、“なぜ”この業務を行うのか? “なぜ”この対応が必要なのか? を理解したうえで遂行することは、基本中の基本です。

身につけておきたい、3つのマネージメントポイント

2.タイムマネージメント:自分に与えられた時間を有効的に使い、また新たに時間をつくり出せる能力

「患者さんの貴重なお時間をいただいている」
「忙しい院内で、ユニットを1台預からせてもらっている」

という感覚を、忘れてはいけません。

日々の業務の中では、予定通りに進行しないことや予想外のアクシデント(患者さんが遅刻してしまった、患者さんが急病になってしまった、など)が起こるものです。

予想もしない事態の展開に、慌ててしまうこともあるでしょう。ですが、そんなときこそ冷静に「限られた時間の中で、今、一番に優先すべきことは何か?」を判断して、行動する必要があります。

また、来院された患者さんをきちんと予約時間通りにユニットにお通しできるよう、時間をやりくりして行動しなければなりません。

5分、10分…と、患者さんをお待たせするのが常になってしまうと、患者さんも不満に思われ「予約時間通りに来ても毎回待たされるから、遅めに着くようにしよう」と、あえて遅刻するようになってしまうかもしれません。

このような事態を招かないためにも、最低限5分以上お待たせすることのないよう、気をつけましょう。

3.情報管理マネージメント:患者さんの情報を収集・分析し、必要な情報のみを確実に伝達できる能力

歯式、口腔内写真、X線写真、歯周組織検査表、プラークスコア、位相差顕微鏡画像など、患者さんに関するデータは膨大です。そして、これらのデータは定期健診やメインテナンスの度に新たに収集され、更新されていきます。

私たちは、この膨大なデータをまとめ、その都度、必要な情報のみを分析・選択して、歯科医師や患者さんに確実にお伝えしなければなりません。そのため、高い情報管理能力と情報伝達能力を養っておく必要があります。

全8回、最後までお読みいただきありがとうございます。

「健康」を「財産」へ変えられる歯科衛生士が、一人でも多く活躍されることを願ってやみません。

またどこかでお会いしましょう。

「健康」を「財産」へ変えられる歯科衛生士を目指して

第1回 歯科衛生士の世界へようこそ!
第2回 患者さんのニーズについて
第3回 スウェーデンが予防大国と呼ばれるまでに
第4回 予防大国・スウェーデンの診療スタイル
第5回 プライマリケア・デンタルハイジニストとは
第6回 健康観の共有について
第7回 疾患を“治す”から疾患を“生ませない”
第8回 歯科衛生士中心で展開するマネージメント