歯科衛生士向けおすすめ論文 No.15「ゴムタイプの歯間ブラシは歯肉炎に効果がある?」

歯科衛生士のみなさんは、日頃どんな方法で勉強していますか?

歯科衛生士向けの月刊誌や本を読む、講演会やセミナー、学会に参加するなど、さまざまな方法があると思います。その中にはたくさんの「参考文献」が記載されているかと思います。

ところで、その「参考文献」について調べたことはありますか?

「文献」や「論文」と聞くと、むずかしそうなイメージがあると思います。
しかしよく調べてみると、私たち歯科衛生士にとって興味深い資料がたくさんあります。

このシリーズでは、歯科衛生士の方に役立つおすすめの論文を紹介していきます!

歯科衛生士向けおすすめ論文

ゴム製歯間ブラシの有効性を調べた論文

今回解説するのはこちらの論文です。

歯間ブラシと比較したゴム製歯間ブラシのプラークと歯肉出血、歯肉の擦過に対する有効性;無作為化臨床試験
『International Journal of Dental Hygiene』

「無作為化臨床試験」とは、被験者をランダムに複数のグループに分け、試験の影響や効果を測定する研究です。

ランダムに分けることで、グループ内のかたよりを減らすことができるといわれています。

この研究では、ゴム製歯間ブラシと通常の歯間ブラシを比較し、歯肉炎に対する効果や被験者の使用感などを調べています。

どんな方法で調べている?

この研究には、普段歯間清掃用具を使用していない42人の健康な被験者が参加しました。

被験者にはまず、21日間下顎のブラッシングを中止させました。その後4週間、歯ブラシとその補助用具として、割り当てられた歯間ブラシをそれぞれ使用させました。

その後、歯肉辺縁におけるプロービング時の出血とプラークスコア、歯肉の擦過レベルを評価しました。

通常の歯間ブラシとゴム製歯間ブラシ

ゴム製歯間ブラシでも歯肉炎は改善できる?!

今回の研究結果によると、歯肉辺縁からの出血とプラークスコアの減少において、ゴム製と通常の歯間ブラシの間に統計的有意差は認められなかったとのこと。

* 有意という言葉については、こちらの記事で説明しています。
(参照:歯科衛生士向けおすすめ論文 No.1「歯ブラシとフロス、どっちから先に使うべき?」

その上、ゴム製歯間ブラシを使うと歯肉の擦過も少なく、被験者はより快適に使用できたとのこと。

そのため、この論文では、ゴム製歯間ブラシは歯ブラシと組み合わせて使用すると、歯肉炎を軽減するのに効果的であることがわかったと締めくくられています。

この研究に対する考察

今回の「ゴム製歯間ブラシが歯肉炎を軽減することができる」という結果には、驚かれる方も多いのではないでしょうか。

私自身、今まで患者さんにOHIを行う上で、ゴム製の歯間ブラシをおすすめすることはありませんでした。ワイヤータイプの歯間ブラシに比べると、プラーク除去量が劣ると感じていたからです。

それどころか、ゴム製歯間ブラシを使用していてもプラークコントロールができていない患者さんが多かったため、使用していた場合は中止するように伝えていたほどです。

しかし、この研究に参加した被験者は、元々健康な歯肉の持ち主でした。すなわち、歯周炎患者ではないということです。

この研究は、あくまでも歯肉炎に対する効果を調べているため、歯周炎の患者さんにもゴム製歯間ブラシを推奨できるとは示していません

これは、この研究結果をふまえて臨床を行う上で、頭に入れておくべき大切なポイントではないでしょうか。

歯槽骨の吸収がなく、通常のワイヤータイプの歯間ブラシが挿入しづらいと感じる患者さんには、ゴム製歯間ブラシの使用をおすすめしても良いのかもしれません。

ただし、プラークコントロールや歯肉の炎症が改善しない場合には、やはり清掃用具を変更する必要があるでしょう。

ただ、私たち歯科衛生士は、ゴム製歯間ブラシの使用について頭ごなしに否定する必要はないということを、この論文から読み取れます。適切にプラークを除去できるのであれば、患者さん自身が使いやすいと思うものが、いちばんの清掃用具ですよね!

患者さん一人ひとりに合ったものを提案できるよう、口腔清掃用具については引き続き調べていく必要がありそうです。

患者さん一人ひとりに合った清掃用具

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毎日同じ環境で働いていると、「歯科医院での当たり前」が、自分の中の「歯科衛生士としての当たり前」になっていることがあります。

自分が行っている業務に自信を持つため、客観的な視点で、臨床現場に活かせる知識を身につけられるよう、日々学んでいきたいものです!

参考文献:N L Hennequin-Hoenderdos, E van der Sluijs, G A van der Weijden, D E Slot.(2018)「Efficacy of a rubber bristles interdental cleaner compared to an interdental brush on dental plaque, gingival bleeding and gingival abrasion: A randomized clinical trial」『International Journal of Dental Hygiene』2018 Aug;16(3):380-388.

歯科衛生士向けおすすめ論文

No.1「歯ブラシとフロス、どっちから先に使うべき?」
No.2「ストレートVSアングル どっちの歯間ブラシを使うべき?」
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No.10「電動歯ブラシと手用歯ブラシどっちが有効?」
No.11「全顎 OR ブロックごと、どっちのSRPが有効?」
No.12「効果的に清掃できる歯間ブラシの新しい形状とは?」
No.13「効果が高いクロルヘキシジン含有洗口剤の濃度とは?」
No.14「新型コロナウイルスと喫煙の関係は?」
No.15「ゴムタイプの歯間ブラシに歯肉炎やプラークを減少させる効果はある?」